ゲーム配信は楽しくないと! 〜毎日配信で有名配信者になります〜

九月生

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生配信7 サーバーの象徴

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「どうも、今日もゲーム配信。配信者はお馴染みTakiチャンネルの滝です」

『どうも!』
『ばんは!』
『こんばんは!』

 コメント欄には挨拶の文字がずらっと並んでいる。

「はい、リスナーの皆さんこんばんは」

 挨拶には挨拶で返す。これは配信でも日常でも変わらない。

 なんてまるで常識人みたいなことを思ってみたりして!

「はい、ええっとじゃあ、マイクラ配信をしていきたいと思います」

『待ってた!』
『早く早く』
『夜こそは!』

 急かしてくるリスナーさん達。わかってますよ。でもまずは、

「昼配信でお伝えしたと思うのですが、改めて配信内容を説明していきます。この夜配信はリスナー参加型配信です。昼はね、リスナーさん達に家を作ってもらいました。例えば、これね」

 俺はサーバーに入り、昼間作ってもらった城のような家を見せる。確かこれは『優』の評価も貰った建築物だ。

『城じゃん』
『優秀作品じゃん!』
『これはすごい』

 昼配信を見ていた人、見れなかった人に紹介していく。

「そうなんですよ。昼配信見ていた人には分かると思うんですけど、見れなかった人にお伝えすると、これは2時間で1人のリスナーさんによって作られた家です」

 あの少ない時間で城を作り上げてしまうリスナーさんは、本当に凄いと思う。作っている過程をちょっと見てみたかった。

「次の家作品は、このドーム型の家」

『可』の評価を受けた作品も見せる。どっちも俺では作れない作品なので、このまま一生残しておくつもりだ。

 ドーム型の家を紹介し、元いた場所に戻ろうと歩いていると、1人のリスナーさんが気づく。

『クレーターがなくなってて草』と。

 1人が気づくと、2人、4人とだんだん増えていく。

『直したの?』

 このコメントが目に入り、俺は説明をする。

「俺は直してないよ。直したのは聡太さん」

『詳しく』
『マジか』
『1人で?』

 詳しく説明して欲しいらしく、あった出来事を全て話す。

 電話をしてきたこと。聡太さんが暇人化していたこと。サーバーに入り、1人で黙々と穴を埋めていたこと。全てだ。

「無くてもいい穴だから、全部埋めてもらった。1番被害が大きかったサキサキさんのファンの家の跡地、あれが1番キツかったって」

 それはそうだ。だってあれが1番TNT置いてあったもん。爆破の後、めちゃくちゃカクカクしたし。

 で、話を戻そう。

「昼配信で、夜何やるかって話になって、サーバーの象徴を建てようって話になりました。なので、また30人配信に参加して頂きたいと思っています。サーバーパスワードは配信画面に載せるつもりです。参加していただける方は打ち込みの用意をお願いします」

 パスワードを用意しているうちに気づく。

「そう言えば、昼配信に参加した人は、夜配信に参加しないでくださいね」

 そう伝え、パスワードの用意を終わらせる。

「もう用意できましたかね?」

『できた』
『できた』
『できた』

『できた』のコメントが連続で流れていく。じゃあ、準備はオーケイね。

「それでは、3、2、1のカウントダウンで表示していきます。3、2、1、はい」

 表示した途端に、30人がサーバーに入ってくる。

「はい。終わりですね。今日はこの30人のリスナーさんと『マイクラ』配信して行こうと思います」

『入れた!』
『入れた』
『次の機会狙う』

「入れなかった人は残念ですが、よろしければ見て楽しんでいってください。じゃあ参加してくれるリスナーさん達は、その場で横1列に並んでください」

 俺の指示で横1列に並んでくれるリスナーさん達。昼に控えていた昼配信参加者の名前と、今いる30人の名前を比較する。

 んんっと、1人もいないね。ダブりは。

「はい、ありがとうございます。昼配信に参加した人はこの中にはいないようです」

『本当に?』
『俺は見る側に回ってる』
『俺も』

「はい、本当です。名前をね、確認したから。まあ、名前を変えられたり、違うアカウント使われたりしたら分かんないけど、そんな人は俺のリスナーにはいないから」

『そ、そうだよね(汗)』
『俺は考えてなかったよ(目を逸らす)』
『俺も(目が泳ぐ)』

「汗かいたやつ、目を逸らしたやつ、目が泳いでいるやつはブロック対象だよ。気をつけたほうがいいよ」

『あわわわわ』
『ブロック草』
『簡単にブロック草』

 まあ、そんなことはしないんだけどね。

 コメント欄と戯れていると、マイクラのチャット欄で『今日は何作るの』と質問される。

 昼配信見れなかった人かな? じゃあ説明して行こう。

「今日何作るのか質問されたので、お答えして行こうと思います」

 チャット欄では、昼配信見た人が見ていない人に説明をしている。

「今日はこの滝サーバーの象徴、大っきい俺の像を作っていきます。今、画面に出すね」

 サーバーパスワードを消して、昼配信後に撮った俺の全体写真を表示する。

「これが俺の全体写真。この全体写真を見ながら俺の像を作っていきます。ちなみに、主に使うブロックは決めています」

 緑色のブロックに黒色のブロック、石のブロックなどなど10種類のブロックを置いていく。

「これが主に使うブロック。主に、だから。もし、色が足りないとか、この色違うんじゃないとかあったら、臨機応変に対応していただけると嬉しいです」

『TNTがない』
『マグマなくない?』
『爆破要素が足りない』

「俺の全体写真見た? TNTとかマグマとか必要ある? それに爆破要素はなくて当たり前です。爆破する予定ないもん」

 リスナーさん達と絡みすぎると時間がなくなるので、そろそろ作業を開始する。

「じゃあね。この広い、凹凸もない真っ平らな場所で作って行こうと思います」

 チャット欄で『了解』『はーい』とちゃんと返事を送ってくれるリスナーさん達。送ってくれるということは、配信見ながら参加してくれているようだ。

「じゃあ、まずは土台である足を作っていきましょう!」

 こうして、俺の像作りが始まる。

 まずは、先ほども言った通り、足から。

「足はね、縦6横6に高さ4で良いんじゃないかな? もちろん黒ブロックで」

 俺の配信を見ながら参加してくれているので、30人のリスナーさん達はすぐさま動いてくれる。

「中には何も詰めなくて良いよ。空洞のままで」

 チャット欄には『はーい』の3文字。

『中に何も詰めないの?』
『時間がかかるから?』
『詰めようよ』

 コメント欄は空洞のままが嫌らしい。

「空洞のままじゃあ、ダメ?」

『手抜き』
『手抜き』
『手抜き』

 1人が『手抜き』と打つと、みんな打ち始める。

 別に中にブロック詰め込んでもいいけど、かなり時間かかると思うんだけどな。

「じゃあ何を『終わった』ん? 何が?」

『手抜き』コールの中、1つだけ『終わった』と打ち込んでくるリスナーさん。

 何が終わった? 何が終わったの?

 配信が止まったのかと思い、スマホで自分の配信を検索する。検索結果を見ると俺の配信は止まっておらず、見ることができる。

 じゃあ何が終わったのだろうか。と思っていると、チャット欄で同じ文字が打たれていることに気づく。

「え? もう終わったの?」

 作り始めて3分も経っていない。リスナーさん達が作っていた場所を見ると、確かに俺が指示した通りののが出来上がっていた。

「早」

『早』
『早』
『早くて草』

 俺的にはもっと時間がかかると思っていたので、ちょっと驚き。

 出来たものを、真上から見てみる。

「うん、俺が思っていた通りにできてるわ」

 中は空洞だが、外から見れば黒い箱状の物が出てきている。

『中詰めよう』
『中に何か詰めよう』
『マグマ詰めよう』

「じゃあ何詰める? マグマ以外。もう、そのまま黒のブロックでいいんじゃない?」

『ええ、マグマ詰めよう』
『マグマがいいと思う』
『マグマか水』

 なんでこんなにマグマが推されているのか、全く持って分からない。

 そんなにマグマがいいのか? でもマグマを詰めたところで意味ないよな。

 なんて考えながら空洞の方を見ていると、1人のリスナーさんが、中に入っていき、何かを敷き詰めに行っている。

「ん、何敷き詰めてんの? あの人」

 1人が何かを敷き詰めていると、2人3人とドンドン人数が増えていき、やがて何かを敷き詰め終える。

「おい、嘘だろ」

 最初の方は何を敷き詰めているのか分からなかったが、段々積み重ねていくごとに、それが何なのか分かってきた。

「なんでTNTなんか詰めてんだよ! 起爆したら1からやり直しな「ボォオオオオオン!」んだ、ぞ。………おい、おいおいおい!」

 TNTが爆発し、マイクラがカクツク。

『草』『草』『草』
『草』『草』『草』
『でっけー花火だ!』

 そこにあったはずの黒色の箱状の物がなくなり、大きなクレーターが出来上がる。

「ふ、ふざけんなよ。1からやり直しじゃん!」

 チャット欄に「誰が起爆させた」と打ち込もうとすると、その前に1人の参加者リスナーが『起爆させちゃった。ごめん』と送ってくる。

「ごめんで許されるか! おい、29人のリスナー達よ、そいつを殺せ!」

 クリエイティブモードからサバイバルモードに変更し、起爆させた奴の殺しを命ずる。

 命じられた29人の中には、一緒に敷き詰めた奴もいるが、起爆させた1人のリスナーが全て悪いので、他の奴らは許してあげる。

 誰かがどうやら殺したようだ。キルログに名前が載る。

「よし、よくやった。じゃあ、まずはこのクレーターを埋めるところから始めよう」

 埋める作業をすること10分。クレーターは綺麗さっぱりなくなる。死んだ奴も戻って手伝ってくれた。

「はい、じゃあさっきの指示通り、動いてください。中には何も詰めるなよ」

 1から作り直し。中には何も詰めないことにする。

 俺も作業の手伝いをするため、黒色のブロックを持ち、作業場へと向かう。

 俺1人では5分かかるところを、30人いれば3分以下で終わる。

 爆破から13分で元通り。次の工程に入っていく。

「よし、次は下半身を作っていきます」

 ここが、俺の像を作る際に1番難しい所。迷彩柄って、緑一色というわけではない。深緑や薄緑など使わなくてはいけない。また配置も工夫しなくてはいけない。

 迷彩柄に使うブロックは、スライムブロックにエメラルドブロック。緑色のブロックに茶色のブロック、黒色ブロックなんかも使う。

 さて、どう動くか。

 難しい所だけあって、慎重に動かなくてはいけない。

 30人のリスナーも慎重に………動いてないんだが。

 リスナーさん達の動きをよく見ると、まずは緑ブロックをある程度の高さまで積み立てている。縦横は足と変わらずで、高さは10と言ったところか。

 積み立て終えると、緑ブロックを破壊し、破壊した所を色んな色のブロックで補強している。また別の場所を破壊しては補強、破壊しては補強。徐々に迷彩柄っぽくなっていってはいる。

 なるほどね。こういう風にやれば良かったのか。

 俺が考えていた作り方は、ブロック1個1個慎重に積み立てていくやり方。あのように緑一色に染めた後、色々な色のブロックを入れてみる方法は思いつかなかった。

 俺1人だけボーッと見ているわけにはいかないな。

 リスナーさん達に混ざって、迷彩柄を作っていく。

「ついでに、上半身もこのまま作って行こうか」

 全身迷彩柄なので、この作り方で上半身も作っていく。

 ………
 ……
 …

 配信が始まって2時間と50分。見ている側のリスナーさん達からアドバイスや工夫の仕方を教わり、参加しているリスナーさん達の邪魔にならないように作業を続け、やっと俺の像が完成する。

 写真と像を見比べると、若干違う所はあるが良い出来栄えだった。

「これがサーバーの象徴か!」

『でっかい滝』
『近くで見てみたい』
『マイクラ配信定期的にやってほしい』

 リスナーさん達の要望には答えてあげたいが、次のマイクラ配信はやるかどうか、決めていない。だからなんとも言えない。

「はあ、めちゃくちゃ良いわ。めちゃくちゃ嬉しい。あの像の近くで写真撮ろ」

 昼間も参加者リスナーさん達と記念写真を撮ったので、今回も記念写真を撮る。

『どこで撮るの?』
『足元じゃあ映えないよ』
『頭の上で撮れば』

 足元近くで撮ろうと思っていたのだが、それを言う前に『足元じゃあ映えないよ』のコメントが目に入る。

 確かに、映えないな。

「頭の上にみんな集合!」

 30人のリスナーさん達と一緒に頭上まで飛んで行き、2列ぐらいに並び、記念写真を撮る。

 昼間同様、撮り終えたら配信は終わり。のつもりだったが、1人の参加者リスナーさんがチャット欄でこんなことを呟く。

『背中見てみてw』と。

 しかも、呟いた奴は起爆させたリスナーさん。

 嫌な予感がして、すぐさま背中を見に行く。

 もしも、背中に大量のTNTとかあったら、アイツ絶対ブロックしてやる。

 そんな事を思いながら背中を見ると、

「おいおいおい。これも記念に残るの?」

『サキサキさん 大スキ』と2行に分かれて書かれていた。

『滝もサキサキさんのことが好きなのか』
『告白か?』
『同志だな』
『爆破しないの?』

「いや、確かに配信者仲間だから友達として好きだけど。告白するほど知っているわけじゃないし、まだ知り合って1週間も経ってないよ!」

 初絡みだって、昨日のマリカーだし。

「爆破………いや、後で直すわ。この配信終わったら私かに直すわ」

 もう、余計な事しやがって。TNTじゃない分、良かったけども。

 サキサキさんにバレでもしたら、絶対次のコラボでネタにされるもん。

「はあ」

 ため息をついていると、

『Souちゃんチャンネル : サキサキさんに知らせといた。スクショも送ったよ(^ ^)/』

 聡太さんがまたしても俺の配信を見ていて、余計な事をしてくれる。

『バレて草』
『ナイスです』
『草』『草』『草』

「ちょっと、余計なことしないでくださいよ。聡太さん!」

『Souちゃんチャンネル : もう少し待ったらサキサキさんくるよ!』

「今日はご視聴ありがとうございました。では」

 俺は速攻で配信を終わらす。

 マイクラサーバーに残っている30人のリスナーさん達にチャットでお礼を伝え、出てってもらい、マイクラを閉じた。

 これでサキサキさんと会うまでは、ネタにされることはないだろう。

 そう安心し、タバコに火をつける。

 いつも通り吸っていると、Twitterから通知が。スマホのロックを解き、Twitterを覗くと、

『Takiチャンネルの滝さんは私のファンらしい! ほら、見て見て! 背中に私の名前と『大スキ』の3文字が! 後で、配信動画を見なくては!』

 サキサキさんが呟いていた。

 俺はスマホの電源ボタンを押し、見なかったことにした。そう、俺は何も見ていないのだ。


 
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