ゲーム配信は楽しくないと! 〜毎日配信で有名配信者になります〜

九月生

文字の大きさ
上 下
15 / 89

生配信7 サーバーの象徴

しおりを挟む
「どうも、今日もゲーム配信。配信者はお馴染みTakiチャンネルの滝です」

『どうも!』
『ばんは!』
『こんばんは!』

 コメント欄には挨拶の文字がずらっと並んでいる。

「はい、リスナーの皆さんこんばんは」

 挨拶には挨拶で返す。これは配信でも日常でも変わらない。

 なんてまるで常識人みたいなことを思ってみたりして!

「はい、ええっとじゃあ、マイクラ配信をしていきたいと思います」

『待ってた!』
『早く早く』
『夜こそは!』

 急かしてくるリスナーさん達。わかってますよ。でもまずは、

「昼配信でお伝えしたと思うのですが、改めて配信内容を説明していきます。この夜配信はリスナー参加型配信です。昼はね、リスナーさん達に家を作ってもらいました。例えば、これね」

 俺はサーバーに入り、昼間作ってもらった城のような家を見せる。確かこれは『優』の評価も貰った建築物だ。

『城じゃん』
『優秀作品じゃん!』
『これはすごい』

 昼配信を見ていた人、見れなかった人に紹介していく。

「そうなんですよ。昼配信見ていた人には分かると思うんですけど、見れなかった人にお伝えすると、これは2時間で1人のリスナーさんによって作られた家です」

 あの少ない時間で城を作り上げてしまうリスナーさんは、本当に凄いと思う。作っている過程をちょっと見てみたかった。

「次の家作品は、このドーム型の家」

『可』の評価を受けた作品も見せる。どっちも俺では作れない作品なので、このまま一生残しておくつもりだ。

 ドーム型の家を紹介し、元いた場所に戻ろうと歩いていると、1人のリスナーさんが気づく。

『クレーターがなくなってて草』と。

 1人が気づくと、2人、4人とだんだん増えていく。

『直したの?』

 このコメントが目に入り、俺は説明をする。

「俺は直してないよ。直したのは聡太さん」

『詳しく』
『マジか』
『1人で?』

 詳しく説明して欲しいらしく、あった出来事を全て話す。

 電話をしてきたこと。聡太さんが暇人化していたこと。サーバーに入り、1人で黙々と穴を埋めていたこと。全てだ。

「無くてもいい穴だから、全部埋めてもらった。1番被害が大きかったサキサキさんのファンの家の跡地、あれが1番キツかったって」

 それはそうだ。だってあれが1番TNT置いてあったもん。爆破の後、めちゃくちゃカクカクしたし。

 で、話を戻そう。

「昼配信で、夜何やるかって話になって、サーバーの象徴を建てようって話になりました。なので、また30人配信に参加して頂きたいと思っています。サーバーパスワードは配信画面に載せるつもりです。参加していただける方は打ち込みの用意をお願いします」

 パスワードを用意しているうちに気づく。

「そう言えば、昼配信に参加した人は、夜配信に参加しないでくださいね」

 そう伝え、パスワードの用意を終わらせる。

「もう用意できましたかね?」

『できた』
『できた』
『できた』

『できた』のコメントが連続で流れていく。じゃあ、準備はオーケイね。

「それでは、3、2、1のカウントダウンで表示していきます。3、2、1、はい」

 表示した途端に、30人がサーバーに入ってくる。

「はい。終わりですね。今日はこの30人のリスナーさんと『マイクラ』配信して行こうと思います」

『入れた!』
『入れた』
『次の機会狙う』

「入れなかった人は残念ですが、よろしければ見て楽しんでいってください。じゃあ参加してくれるリスナーさん達は、その場で横1列に並んでください」

 俺の指示で横1列に並んでくれるリスナーさん達。昼に控えていた昼配信参加者の名前と、今いる30人の名前を比較する。

 んんっと、1人もいないね。ダブりは。

「はい、ありがとうございます。昼配信に参加した人はこの中にはいないようです」

『本当に?』
『俺は見る側に回ってる』
『俺も』

「はい、本当です。名前をね、確認したから。まあ、名前を変えられたり、違うアカウント使われたりしたら分かんないけど、そんな人は俺のリスナーにはいないから」

『そ、そうだよね(汗)』
『俺は考えてなかったよ(目を逸らす)』
『俺も(目が泳ぐ)』

「汗かいたやつ、目を逸らしたやつ、目が泳いでいるやつはブロック対象だよ。気をつけたほうがいいよ」

『あわわわわ』
『ブロック草』
『簡単にブロック草』

 まあ、そんなことはしないんだけどね。

 コメント欄と戯れていると、マイクラのチャット欄で『今日は何作るの』と質問される。

 昼配信見れなかった人かな? じゃあ説明して行こう。

「今日何作るのか質問されたので、お答えして行こうと思います」

 チャット欄では、昼配信見た人が見ていない人に説明をしている。

「今日はこの滝サーバーの象徴、大っきい俺の像を作っていきます。今、画面に出すね」

 サーバーパスワードを消して、昼配信後に撮った俺の全体写真を表示する。

「これが俺の全体写真。この全体写真を見ながら俺の像を作っていきます。ちなみに、主に使うブロックは決めています」

 緑色のブロックに黒色のブロック、石のブロックなどなど10種類のブロックを置いていく。

「これが主に使うブロック。主に、だから。もし、色が足りないとか、この色違うんじゃないとかあったら、臨機応変に対応していただけると嬉しいです」

『TNTがない』
『マグマなくない?』
『爆破要素が足りない』

「俺の全体写真見た? TNTとかマグマとか必要ある? それに爆破要素はなくて当たり前です。爆破する予定ないもん」

 リスナーさん達と絡みすぎると時間がなくなるので、そろそろ作業を開始する。

「じゃあね。この広い、凹凸もない真っ平らな場所で作って行こうと思います」

 チャット欄で『了解』『はーい』とちゃんと返事を送ってくれるリスナーさん達。送ってくれるということは、配信見ながら参加してくれているようだ。

「じゃあ、まずは土台である足を作っていきましょう!」

 こうして、俺の像作りが始まる。

 まずは、先ほども言った通り、足から。

「足はね、縦6横6に高さ4で良いんじゃないかな? もちろん黒ブロックで」

 俺の配信を見ながら参加してくれているので、30人のリスナーさん達はすぐさま動いてくれる。

「中には何も詰めなくて良いよ。空洞のままで」

 チャット欄には『はーい』の3文字。

『中に何も詰めないの?』
『時間がかかるから?』
『詰めようよ』

 コメント欄は空洞のままが嫌らしい。

「空洞のままじゃあ、ダメ?」

『手抜き』
『手抜き』
『手抜き』

 1人が『手抜き』と打つと、みんな打ち始める。

 別に中にブロック詰め込んでもいいけど、かなり時間かかると思うんだけどな。

「じゃあ何を『終わった』ん? 何が?」

『手抜き』コールの中、1つだけ『終わった』と打ち込んでくるリスナーさん。

 何が終わった? 何が終わったの?

 配信が止まったのかと思い、スマホで自分の配信を検索する。検索結果を見ると俺の配信は止まっておらず、見ることができる。

 じゃあ何が終わったのだろうか。と思っていると、チャット欄で同じ文字が打たれていることに気づく。

「え? もう終わったの?」

 作り始めて3分も経っていない。リスナーさん達が作っていた場所を見ると、確かに俺が指示した通りののが出来上がっていた。

「早」

『早』
『早』
『早くて草』

 俺的にはもっと時間がかかると思っていたので、ちょっと驚き。

 出来たものを、真上から見てみる。

「うん、俺が思っていた通りにできてるわ」

 中は空洞だが、外から見れば黒い箱状の物が出てきている。

『中詰めよう』
『中に何か詰めよう』
『マグマ詰めよう』

「じゃあ何詰める? マグマ以外。もう、そのまま黒のブロックでいいんじゃない?」

『ええ、マグマ詰めよう』
『マグマがいいと思う』
『マグマか水』

 なんでこんなにマグマが推されているのか、全く持って分からない。

 そんなにマグマがいいのか? でもマグマを詰めたところで意味ないよな。

 なんて考えながら空洞の方を見ていると、1人のリスナーさんが、中に入っていき、何かを敷き詰めに行っている。

「ん、何敷き詰めてんの? あの人」

 1人が何かを敷き詰めていると、2人3人とドンドン人数が増えていき、やがて何かを敷き詰め終える。

「おい、嘘だろ」

 最初の方は何を敷き詰めているのか分からなかったが、段々積み重ねていくごとに、それが何なのか分かってきた。

「なんでTNTなんか詰めてんだよ! 起爆したら1からやり直しな「ボォオオオオオン!」んだ、ぞ。………おい、おいおいおい!」

 TNTが爆発し、マイクラがカクツク。

『草』『草』『草』
『草』『草』『草』
『でっけー花火だ!』

 そこにあったはずの黒色の箱状の物がなくなり、大きなクレーターが出来上がる。

「ふ、ふざけんなよ。1からやり直しじゃん!」

 チャット欄に「誰が起爆させた」と打ち込もうとすると、その前に1人の参加者リスナーが『起爆させちゃった。ごめん』と送ってくる。

「ごめんで許されるか! おい、29人のリスナー達よ、そいつを殺せ!」

 クリエイティブモードからサバイバルモードに変更し、起爆させた奴の殺しを命ずる。

 命じられた29人の中には、一緒に敷き詰めた奴もいるが、起爆させた1人のリスナーが全て悪いので、他の奴らは許してあげる。

 誰かがどうやら殺したようだ。キルログに名前が載る。

「よし、よくやった。じゃあ、まずはこのクレーターを埋めるところから始めよう」

 埋める作業をすること10分。クレーターは綺麗さっぱりなくなる。死んだ奴も戻って手伝ってくれた。

「はい、じゃあさっきの指示通り、動いてください。中には何も詰めるなよ」

 1から作り直し。中には何も詰めないことにする。

 俺も作業の手伝いをするため、黒色のブロックを持ち、作業場へと向かう。

 俺1人では5分かかるところを、30人いれば3分以下で終わる。

 爆破から13分で元通り。次の工程に入っていく。

「よし、次は下半身を作っていきます」

 ここが、俺の像を作る際に1番難しい所。迷彩柄って、緑一色というわけではない。深緑や薄緑など使わなくてはいけない。また配置も工夫しなくてはいけない。

 迷彩柄に使うブロックは、スライムブロックにエメラルドブロック。緑色のブロックに茶色のブロック、黒色ブロックなんかも使う。

 さて、どう動くか。

 難しい所だけあって、慎重に動かなくてはいけない。

 30人のリスナーも慎重に………動いてないんだが。

 リスナーさん達の動きをよく見ると、まずは緑ブロックをある程度の高さまで積み立てている。縦横は足と変わらずで、高さは10と言ったところか。

 積み立て終えると、緑ブロックを破壊し、破壊した所を色んな色のブロックで補強している。また別の場所を破壊しては補強、破壊しては補強。徐々に迷彩柄っぽくなっていってはいる。

 なるほどね。こういう風にやれば良かったのか。

 俺が考えていた作り方は、ブロック1個1個慎重に積み立てていくやり方。あのように緑一色に染めた後、色々な色のブロックを入れてみる方法は思いつかなかった。

 俺1人だけボーッと見ているわけにはいかないな。

 リスナーさん達に混ざって、迷彩柄を作っていく。

「ついでに、上半身もこのまま作って行こうか」

 全身迷彩柄なので、この作り方で上半身も作っていく。

 ………
 ……
 …

 配信が始まって2時間と50分。見ている側のリスナーさん達からアドバイスや工夫の仕方を教わり、参加しているリスナーさん達の邪魔にならないように作業を続け、やっと俺の像が完成する。

 写真と像を見比べると、若干違う所はあるが良い出来栄えだった。

「これがサーバーの象徴か!」

『でっかい滝』
『近くで見てみたい』
『マイクラ配信定期的にやってほしい』

 リスナーさん達の要望には答えてあげたいが、次のマイクラ配信はやるかどうか、決めていない。だからなんとも言えない。

「はあ、めちゃくちゃ良いわ。めちゃくちゃ嬉しい。あの像の近くで写真撮ろ」

 昼間も参加者リスナーさん達と記念写真を撮ったので、今回も記念写真を撮る。

『どこで撮るの?』
『足元じゃあ映えないよ』
『頭の上で撮れば』

 足元近くで撮ろうと思っていたのだが、それを言う前に『足元じゃあ映えないよ』のコメントが目に入る。

 確かに、映えないな。

「頭の上にみんな集合!」

 30人のリスナーさん達と一緒に頭上まで飛んで行き、2列ぐらいに並び、記念写真を撮る。

 昼間同様、撮り終えたら配信は終わり。のつもりだったが、1人の参加者リスナーさんがチャット欄でこんなことを呟く。

『背中見てみてw』と。

 しかも、呟いた奴は起爆させたリスナーさん。

 嫌な予感がして、すぐさま背中を見に行く。

 もしも、背中に大量のTNTとかあったら、アイツ絶対ブロックしてやる。

 そんな事を思いながら背中を見ると、

「おいおいおい。これも記念に残るの?」

『サキサキさん 大スキ』と2行に分かれて書かれていた。

『滝もサキサキさんのことが好きなのか』
『告白か?』
『同志だな』
『爆破しないの?』

「いや、確かに配信者仲間だから友達として好きだけど。告白するほど知っているわけじゃないし、まだ知り合って1週間も経ってないよ!」

 初絡みだって、昨日のマリカーだし。

「爆破………いや、後で直すわ。この配信終わったら私かに直すわ」

 もう、余計な事しやがって。TNTじゃない分、良かったけども。

 サキサキさんにバレでもしたら、絶対次のコラボでネタにされるもん。

「はあ」

 ため息をついていると、

『Souちゃんチャンネル : サキサキさんに知らせといた。スクショも送ったよ(^ ^)/』

 聡太さんがまたしても俺の配信を見ていて、余計な事をしてくれる。

『バレて草』
『ナイスです』
『草』『草』『草』

「ちょっと、余計なことしないでくださいよ。聡太さん!」

『Souちゃんチャンネル : もう少し待ったらサキサキさんくるよ!』

「今日はご視聴ありがとうございました。では」

 俺は速攻で配信を終わらす。

 マイクラサーバーに残っている30人のリスナーさん達にチャットでお礼を伝え、出てってもらい、マイクラを閉じた。

 これでサキサキさんと会うまでは、ネタにされることはないだろう。

 そう安心し、タバコに火をつける。

 いつも通り吸っていると、Twitterから通知が。スマホのロックを解き、Twitterを覗くと、

『Takiチャンネルの滝さんは私のファンらしい! ほら、見て見て! 背中に私の名前と『大スキ』の3文字が! 後で、配信動画を見なくては!』

 サキサキさんが呟いていた。

 俺はスマホの電源ボタンを押し、見なかったことにした。そう、俺は何も見ていないのだ。


 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~

kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

マキノのカフェ開業奮闘記 ~Café Le Repos~

Repos
ライト文芸
カフェ開業を夢見たマキノが、田舎の古民家を改装して開業する物語。 おいしいご飯がたくさん出てきます。 いろんな人に出会って、気づきがあったり、迷ったり、泣いたり。 助けられたり、恋をしたり。 愛とやさしさののあふれるお話です。 なろうにも投降中

四条雪乃は結ばれたい。〜深窓令嬢な学園で一番の美少女生徒会長様は、不良な彼に恋してる。〜

八木崎(やぎさき)
青春
「どうしようもないくらいに、私は貴方に惹かれているんですよ?」 「こんなにも私は貴方の事を愛しているのですから。貴方もきっと、私の事を愛してくれるのでしょう?」 「だからこそ、私は貴方と結ばれるべきなんです」 「貴方にとっても、そして私にとっても、お互いが傍にいてこそ、意味のある人生になりますもの」 「……なら、私がこうして行動するのは、当然の事なんですよね」 「だって、貴方を愛しているのですから」  四条雪乃は大企業のご令嬢であり、学園の生徒会長を務める才色兼備の美少女である。  華麗なる美貌と、卓越した才能を持ち、学園中の生徒達から尊敬され、また憧れの人物でもある。  一方、彼女と同じクラスの山田次郎は、彼女とは正反対の存在であり、不良生徒として周囲から浮いた存在である。  彼は学園の象徴とも言える四条雪乃の事を苦手としており、自分が不良だという自己認識と彼女の高嶺の花な存在感によって、彼女とは距離を置くようにしていた。  しかし、ある事件を切っ掛けに彼と彼女は関わりを深める様になっていく。  だが、彼女が見せる積極性、価値観の違いに次郎は呆れ、困り、怒り、そして苦悩する事になる。 「ねぇ、次郎さん。私は貴方の事、大好きですわ」 「そうか。四条、俺はお前の事が嫌いだよ」  一方的な感情を向けてくる雪乃に対して、次郎は拒絶をしたくても彼女は絶対に諦め様とはしない。  彼女の深過ぎる愛情に困惑しながら、彼は今日も身の振り方に苦悩するのであった。

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...