上 下
14 / 89

生配信6 暇人、聡太さん

しおりを挟む
 夜配信のことを考えながらタバコを吸っていると、スマホが鳴る。

 誰だろう?

 スマホの画面を見ると、聡太さんからの着信だった。もちろん、出ないわけにもいかず、

「もひもひ」

 くわえタバコをしながら出る。

『もしもし、タバコ中だった?』

「すぅー、はぁ。………はい、でも今吸い終わりました」

 タバコの火を灰皿に押し付け、鎮火。殆ど吸い終わった状態だったので、俺にダメージはない。

『悪いな。急かしたみたいで』

 謝ってくる聡太さん。別に謝ることでは無いと伝え、吸い終わりそうだった事も言う。

 ところで、聡太さんが配信直後の俺に電話をかけてきたのはこれが初めて。何か急なようでもあるのか?

 聞いてみよう。

「配信後すぐに電話してきましたけど、どうしました?」

『いいや、別に』

 ん、別に? じゃあ、なんでこの人電話してきたんだ?

『ああ、もしかして、電話してきたからには何かあるだろう、と思ってる?』

 思ってます。

『もしそうなら、それは違うから。ただ単に暇だから電話しただけ』

 なんだよ、心配して損した。

「じゃあ、切りますよ。用がないなら」

『ああ、まっ「プツン。ツー、ツー」』

 ふぅ、暇つぶしに付き合ってられるか! 

 スマホをポケットに入れ、キッチンに向かう。

 なんかお腹が空いてきた。お昼はおにぎり2個しか食べてないからな。

 冷蔵庫を開けて、何かあるか探す。

「おっ、この前コンビニで買ったチキンサラダあるじゃん! これたーべよ」

 袋を剥き、チキンサラダをそのまま頬張る。

「うん、うん。うんうん」

 ゴックン。

「うまい」

 どうして、コンビニのチキンサラダって美味いんだろう? あとで、もう1個………3個ぐらい買っとくか。

 配信後の非常食として買いだめすることを決意し、食べ終えたゴミを捨てる。

 お腹をさすり、空き具合を確認。

「まあまあ溜まったかな?」

 お腹7割ぐらい満たされたので、配信部屋兼寝室に戻る。夜の配信について考えなくてはいけないからだ。

「さてさて」

 椅子に座り、マイクラを再度起動させる。

 起動後すぐにサーバーに入り、三人称視点で自分の姿をスクショ。そしてクリエイティブモードに変更する。

「さてさて、自分のキャラクターと同じ色のブロックはどれかな」
 
 夜配信の内容は、昼にリスナーさん達と考えた。内容は、このサーバーの象徴として、俺のキャラクターをブロックで作りあげるというもの。
 
 自分を作り上げるには、自分のキャラクターの色を把握していなくてはならない。また、どの部分にどのブロックの色が合っているかも把握しなくてはいけない。

 ということで、夜配信までにならなくてはいけない事として、使用ブロックの選別。

 クリエイティブモードなら、全てのブロックを見る事ができるし、使用する事もできる。

 選別するにはもってこい、の機能なのだが、

 プルプルプル、とポケットに入れたままのスマホが鳴る。

 スマホの画面には、『水上聡太』の4文字。

 また電話してきたよ、あの人。暇すぎるんじゃない?

 そう心の中で悪態つくも、電話には出る。

「もしもし」

『いきなり切るなんて酷いじゃないか!』

「用はなんですか? 切りますよ」

『待て待て! 用は………無い。無いんだ「プツン。ツー、ツー」』

 よし、じゃあ全ブロックを並べて行こうかな。

 昼配信の爆破のせいで、至る所がクレーター化している。クレーター化していない場所を見つけ、1列にブロックを並べる。

 プルプルプル。

 キャラクターの服は迷彩柄。緑は必ず使わなくてはいけないので、色系統ブロックの緑色を使用する。石のブロックなんかも使えそうな気がするな。

 プルプルプルプルプル。

 髪は黒なので、黒色の色系統ブロック。

 プルプルプルプルプルプルプルプルプル。

「うるせぇぇえええ! 聡太さん、煩いですよ!」

 電話を出るなり、怒鳴りつける。

『あああ! 耳やばい、お前の声の方が煩い! 耳がキーンってなってる』

 知るか、んなもん!

「で、どうせ聞く意味はないと思うんですけど、一応聞いときます。な・ん・か・用・で・す・か⁉︎」

『何度同じ答えを言っているか分からないが、暇!』

 ムカつくな! 2回しか言ってないし!

 ってか、この人に構っていると、夜配信の準備ができない!

「暇なんですか、暇なんですよね?」

『おう、暇すぎてやばい』

「そうですか。一応聞いますけど、配信をしたらどうですか?」

 配信者たるもの暇なときは、配信をすればいいじゃない。もしくは、ゲームをやってプレイ技術を上げるとかさ。

『実は、今日9時から配信してて、12時ぐらいになったときにパソコンの調子が悪くなって、配信止まっちゃったんだよね。まあ、リスナーさん達も納得してくれてはいるんだけど、中断した事に。で、今は直して調子良いんだけど、配信する気にもなれなくてさ。あはははははは』

 まあ、パソコンの調子が悪くて配信中断とかは分かる。俺も1度だけやったから。

 それにしても、あの人暇すぎるでしょ! 夜配信の準備したいのに、邪魔ばかりしやがって!

 あの人の暇をどうにかしなくては。何かいい案でも………はっ! ある、あるわ! 俺に得して、聡太さんの暇を解消する方法。

「聡太さんもマイクラやってましたよね?」

『ああ、やってるけど?』

 よし!

「じゃあ、今からサーバーのパスワード送るので、入ってきて、クレーターの処理お願いできませんか?」

 TNT盛りすぎて、クレーターが想像異常に大きい。穴ぼこのサーバーはちょっと嫌なのだ。

 だからと言って、地面を元に戻すのは面倒くさい。俺はちょっとやりたくないのだ。俺がやらないなら、他人にやってもらおう。

 ちょうど暇人が1人いる。面倒くさいことは、暇な人に任せてしまおう。

『おお、任せろ!』

 どうやら本人もやる気があるようでよかった。

 これで夜配信の準備ができる。

 聡太さんはこのサーバーに入るなり、せっせと働き、俺は夜配信の準備を着々と終わらせる。

 はぁ、よかった。聡太さんが暇人で。

 暇人な聡太さんのおかげで、俺は夜配信の準備を入念に仕上げることができるのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

イルカノスミカ

よん
青春
2014年、神奈川県立小田原東高二年の瀬戸入果は競泳バタフライの選手。 弱小水泳部ながらインターハイ出場を決めるも関東大会で傷めた水泳肩により現在はリハビリ中。 敬老の日の晩に、両親からダブル不倫の末に離婚という衝撃の宣告を受けた入果は行き場を失ってしまう。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

転校してきた美少女に僕はヒトメボレ、でも彼女って実はサキュバスらしい!?

釈 余白(しやく)
青春
 吉田一(よしだ かず)はこの春二年生になった、自称硬派な高校球児だ。鋭い変化球と抜群の制球で入部後すぐにエースとなり、今年も多くの期待を背負って練習に精を出す野球一筋の少年である。  かたや蓮根咲(はすね さき)は新学期に転校してきたばかりの、謎めいてクールな美少女だ。大きな瞳、黒く艶やかな髪、凛とした立ち姿は、高潔さを感じるも少々近寄りがたい雰囲気を醸し出している。  そんな純情スポ根系野球部男子が、魅惑的小悪魔系女子へ一目惚れをしたことから、ちょっとエッチで少し不思議な青春恋愛ストーリーが始まったのである。

冬の夕暮れに君のもとへ

まみはらまさゆき
青春
紘孝は偶然出会った同年代の少女に心を奪われ、そして彼女と付き合い始める。 しかし彼女は複雑な家庭環境にあり、ふたりの交際はそれをさらに複雑化させてしまう・・・。 インターネット普及以後・ケータイ普及以前の熊本を舞台に繰り広げられる、ある青春模様。 20年以上前に「774d」名義で楽天ブログで公表した小説を、改稿の上で再掲載します。 性的な場面はわずかしかありませんが、念のためR15としました。 改稿にあたり、具体的な地名は伏せて全国的に通用する舞台にしようと思いましたが、故郷・熊本への愛着と、方言の持つ味わいは捨てがたく、そのままにしました。 また同様に現在(2020年代)に時代を設定しようと思いましたが、熊本地震以後、いろいろと変わってしまった熊本の風景を心のなかでアップデートできず、1990年代後半のままとしました。

処理中です...