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キャトルズ(14) 「翡翠との出会い」

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 私は、魔術師エリファスの遣いとして、魔法の力を取り戻したわ。この数字の魔法ならば、他の遣い達を圧倒出来るし、決して負ける事など無かったの。

 だけどその全ての戦いは、自分の過ちで魔法の国にいられなくなってしまった、隼の記憶を取り戻す為の行いであったわ。

 そんな時、私はある遣いに出会う事となったの。父が魔術師であり、その娘のアリス クイーンが遣いと言う、親子の魔法使いであったわ。

 その後、私とアリスは戦う事になったのだけれど当然、私の圧勝となり、アリスにトドメを刺そうとしたわ。でもそこへ偶然、アリスの父であるグラディーが現れ、戦いはそこで中断する事となってしまったの。

 そして数ヶ月が経ち、グラディーは星座占いをし、そこで出された結果をアリスに遂行させ様としていたらしいわ。

 それは新たな遣いとして誕生した、若竹 翡翠と共に行動させ様と言う内容であり、アリスは翡翠のいる日本へと降り立つ事になったらしいの。



「若竹 翡翠ですかぁ。どんな遣いなのでしょう」

「アリス クィーンさん、お待たせ。それじゃあ、教室に行きましょう」

 アリスは偶然、翡翠と同い年であり、入学の手続きは魔法の力を使う事で、翡翠と同じクラスにしたらいわ。

 そして、アリスは予め変身呪文を唱えて、乙女座を示す『ヴァーゴ』 の『洞察力』 を使い、翡翠を観察する事にしたそうなの。


「……(特にこれと言った能力は無さそうね)」

「こっ、こんにちは。私はえとぉ、若竹 翡翠ですっ」

「ハロー、アリスだよ」

 翡翠との接触を開始したアリス。その後、翡翠の動向を観察したアリスは、協定を結ぶ様提案したそうだわ。

 そこで、翡翠はまだ遣いになりたてと言う事もあり、最終的にアリスと共に行動する事となったらしいの。

 そして時間を少し戻して、翡翠が遣いになって直ぐの頃、私は魔法の国にいたのだけれど。


「エリファス、どうしたの。急に呼び出したりして」

「ソフィー、お前が以前遣いとして行動していたアグリッタの元へ、新たな遣いが選定されたみたいだ」

 私は、ほんの少し驚く事になったわ。アグリッタがこうも早く行動するとは、思っていなかったからよ。

 だけど、遅かれ早かれアグリッタの新たな遣いと、合わなければいけないと考えた私は、エリファスに質問したわ。


「その遣いの素質はどの程度なの?」

「それは分からないが、若竹 翡翠と言う名は少し気になるな」

 偶然か必然か、神黒翡翠と同じ『翡翠』 の名を持つ事に、エリファスは何かを感じてい様なの。そして私に、若竹 翡翠の動向を出来る限り観察しろと指示を出して来たわ。

 その後、私は一般世界に戻ろうとしたのだけれど、どうせならば翡翠に直接会ってみようと考えたの。魔法の国からは一般世界の様子がうかがえ、一瞬でどこにでも移動が可能なのよ。そこで私は、翡翠のいる日本へと向かう事にしたわ。

 と、その前に、私の話を聞いてくれている人達には、1つの疑問が生じてしるかも知れないわね。どこにでも移動が出来るのであるならば、私は隼の元へ直ぐにでも向かえば良いのだから。

 だけど神黒翡翠を手に入れるまでは、隼と合わないと決めていた私は、出向く事は無かった……の。


「……また日本へ来てしまったわ」


 私は葛藤していたわ。エリファスに指示され、翡翠の動向を探る為に日本へ来たのだけれど、決して隼に会う為に来たのでは無いのだと。だけど、今いる場所から隼の会社までは、約30分程で行ける距離だったーのっ!!

 どうする私……。いえ、そこは我慢したわ。そして翡翠が入った喫茶店に、私も入店する事になったのだけれど、翡翠は友達であろう女性に魔法の話をしようとしてしまっていたの。

 もし一般人に、魔法の事を知られてしまった場合、その遣いは記憶を消される事になってしまうわ。そこで私が、割って入ってあげる事にしたの。


「ん~……魔美華ちゃんには嘘を付けないね。実は私……」

「貴女、若竹 翡翠さんよね?」

 咄嗟のところで、翡翠の言葉を私は遮ったわ。折角、日本に来たと言うのにも関わらず、いきなり記憶を無くされては意味が無いと考えたからよ。

 そして私は翡翠を外に連れ出し、己の境遇を説明したわ。自分は翡翠と同じ魔術師の遣いであり、更には以前アグリッタの遣いであった事をね。

 それを聞かされた翡翠は、当然驚く事になっていたのだけれど、そこに翡翠の守護役である天使(以前は、私と共にいたわ) のアキナが現れ、簡単に状況を説明し出したの。


「でもソフィーさん、出会ってしまったと言う事は……ここで戦うのですか?」

「いいえ。領土進出は、魔法の国でしか出来ないの。それに……今の貴女じゃ、私には絶対に勝てないでしょうね」

 そう言い残し、私は翡翠の前から立ち去る事にしたわ。だけど後に、私と翡翠は対決する事になるの。

 そして、直ぐに魔法の国に帰らなかった私は、駅前で小1時間程佇む事になっていたわ。


「あの~、少し宜しいですか? 私、芸能事務所のスカウト担当の者なのですが」

「その存在を消されたくなければ、今直ぐ立ち去りなさい」

 話し掛けて来た男性を、私は速攻で一蹴してやったわ。

 と言うか私は、隼の会社へ行こうか、止めようか悩む事になってしまっていたのだけれど、結局後ろ髪を引かれながら魔法の国へ帰る事にしたのよ……。


「ソフィー、若竹 翡翠の様子はどうだった」

「現時点では、どうとでもなるわね。でも……確かに、不思議な感覚の持ち主だったわ」

 魔術師や遣いに選定される者は、程度は違うのだけれど、生まれ持っての魔力をその身に宿しているの。

 だけどその魔力は、当然ながら個々に別の気を放っていて、私が翡翠に感じた感覚は、透明に近く混じり気の無い魔力であったわ。これは即ち、どんな色にでも染まる事が出来ると言う意味を示していたの。

 でも逆に言えば、私の様な確固たる信念の感覚とは違い、脆く流されやすいと言う事でもあったわ。その為、私と真逆の感覚を持つ翡翠とは、嫌悪感が生まれてしまうかも知れなかったの。

 そしてアリスが転校して来た頃に話を戻すのだけれど、翡翠は魔法の国で修行をする事になっていたそうだわ。


「翡翠、貴女の実力をもう少し確認させて貰うわよ」

「うん……」

 2人は変身をし構えたらしいのだけれど、いきなりアリスは技を炸裂させ、翡翠の身体を真っ二つに斬り裂いてしまったそうだわ。

 だけど魔法の国では、どんなに攻撃を受けようが死ぬ事は無いの。そして魔術師が供給している魔力が尽きるまでは、何度でも身体の再生をする事が出来るわ。

 でもアリスは、この程度の攻撃を避けられない様では到底、私の足元にも及ばないと翡翠に告げたそうなの。アリスは私と戦い、この強さを嫌と言う程思い知らされていたでしょうからね。

 その後、翡翠はアリスと共に行動し、5体の天使を同化させる事が出来るまで成長を遂げたらしいわ。

 そしてその頃、私は自分の領土内で神黒翡翠を探索していたのだけれど。


「ううっ……お腹が空いたわ。これはアレね。もう、引き上げるのが得策だわ」

 任務を途中で投げ出し、一般世界へと帰宅してしまっていたわ。

 そして、日差しが照りつける季節へと時は流れていたの。翡翠は海で出会った、遣いの雲影(くもかげ) と戦う事になってしまっていた様なのだけれど、何とか勝利する事が出来たらしいわ。

 だけどその後、雲影の領土には、私が出向く事になっていたの。


「お主、そこから先は通さぬぞ」

「変わった口調だけど、それ日本語よね?」

 隼や翡翠の様な喋り方とは、異なる雲影の口調を、私は不思議に思う事になっていたわ。だけど、なまりだと結論付けた私は、早速雲影に勝負を挑む事にしたの。


「良いだろう。しかし我は女とて、容赦はせぬぞ」

 翡翠との戦いも、特に手を抜いていた訳では無い雲影だったのでしょうね。だけど私の放つ殺気は、翡翠のどこか優しげな気とは違い、嫌が応にも緊迫感を与えてしまっていた様なの。


「私は、ソフィー マリソーよ」 

「お主……中々の手練れと見た。いざ、参るぞっ。我に与えしその力 今この時この瞬間 この身を刃に変幻せん……雲影……進化の術っ!」

 雲影は『秘術忍法』 を会得として、日本の魔術師である、初多理 半助(はったり はんすけ) の遣いであるそうだわ。

 そして雲影は先ず、秘術忍法の1つであるらしい、『飛跳雷速』 で大量の手裏剣を投げ付けて来たの。だけど私は咄嗟に透明な壁を精製し、その技を防いだわ。


「へぇ、これが手裏剣って言う武器なのね。それにしてもその格好……コスプレなのかしら?」

 全身黒尽くめの忍者スタイルも、初めて見る事になった私。魔法の国では別に良いのだけれど、一般世界でその姿を披露してしまうと、一歩間違えれば職質されてしまうでしょうね。


「黙れっ。忍者をナメると痛い目を見るぞ。影縫いの術っ!」

 再度、手裏剣を投げ付て来た雲影。だけど、今回は一振りしか投げて来なかったの。更にその手裏剣は私に届かず、手前で地面に突き刺さってしまっていたわ。


「お腹が空いて、力が出ないのかしら? なら、直ぐに終わらせて……あら?」

「ふっ、動けまい。影縫いの術に、はまったのだからな」

 影縫いの術は、対象者の影に暗示をかけ、その影に手裏剣を投げ付ける事で動きを止める技であったらしいわ。

 そして私は、辛うじて言葉を発する事出来たのだけれど、身体は全く動かせない状態になってしまっていたの。


「成る程。確かにこれは、困った状況ね」

「そのままジッとしていろ。大蝦蟇、奴を踏み潰してしまえっ!」

 この技は、翡翠との戦いの時も使っていたらしいのだけれど、翡翠を踏み潰したくないと考えた大蝦蟇は、着地と同時にお腹をへこませ翡翠を守っていたそうだわ。

 だけど今回は大蝦蟇も野生の勘で、私は倒さなければいけないと察したらしく、その巨体を叩きつけて来たの。でも次の瞬間、私は大蝦蟇を吹き飛ばしていたわ。


「爬虫類の弱点は、研究済みよ」

 以前、私は爬虫類使いと戦った事があるの。その後一般世界に戻り、爬虫類について知識を得ていたわ。大抵の爬虫類は熱に弱く、35度以上で熱しられ続けると干からびてしまうの。

 そして私は、動けない状態であったのだけれど、言葉は発する事が出来たので、踏み潰される瞬間、熱の魔法を使い大蝦蟇を吹き飛ばしていたと言う事よ。


「ぐっ……生き物を躊躇無く傷付けるとはな。お主、祟られるぞ」

「こうでもしないと、私がヌメヌメにされていたわ」

 そして今の大蝦蟇攻撃により、雲影が掛けた術も解け、私は動ける様になり反撃へ転じたわ。だけど、雲影も負けじと秘術忍法を駆使していたのだけれど、私が使う数字の魔法には及ばず、跪く事になったの。

 その状況は、私の一方的な戦いであったわ。相手を倒す事に一切の躊躇をせず、もし雲影が助けを乞う事になったとしても、私は聞き入れ無かったでしょうね。


「ぐはっ! ……拙者の負けでござる。さあ、トドメを刺すが良い……」

「そうさせて貰うわ。あの大蝦蟇も、川に流しておいてあげるから、一緒に消えなさい」

 私は、雲影の魔力を完全に消費させる為、最後の一撃を与え様としたわ。

 だけどその時、エリファスからの呼び出しが入り、雲影にトドメを刺さず去る事になったの。でも私が雲影に背を向けた瞬間、大蝦蟇は力を振り絞り攻撃をして来たわ。


「ゲーッ!!」

「……オンズ。動物の本能で動いているのね」

 大蝦蟇は、そのまま川へと突き落とされ流されてしまったわ。

 例え動物が相手であろうと、挑んで来る者に、私は容赦をしないの。だけどそれは当然の事であり、先程私が言った、『そうしなければ自分がやられてしまう』 と言う考え方は、間違いでは無いでしょ? でもそのやり方もまた、翡翠とは正反対の行動であった様ね。

 そしてその後、翡翠は雲影が倒された事を知り、無謀にも私と対峙する事になったの。私は雲影を倒した事により、その領土を自由に行き来する事が出来ていたのだけれど、そこに翡翠が現れてしまったの。


「ソフィーさん?」

「あら、翡翠。ここは貴女の領土では無い筈だけど、何をしているの?」

 雲影の居場所を訪ねる翡翠であったのだけれど、私は雲影を倒し、1ヶ月は安静状態でしょうねと告げたわ。

 そこで、その言葉を聞いてしまった事により、穏やかな心を持つ翡翠でも、『怒る』 と言う感情が芽生えていた様なの。


「我に宿りしその力 今この時この瞬間 開放へと導かん……翡翠……エボリューションっ!」


「良いわよ。相手をしてあげるわ。我に誓いしその力 今この時この瞬間 無限の数で突き動かん……ソフィー……エボリューションっ!」

 この戦いは、当然私に武があり過ぎたわ。戦いに於ける経験やセンスの違いも勿論あるのだけれど、以前アグリッタの遣いとして活動していた私は、翡翠が使う天使達の魔法を知り尽くしているのだから。

 魔法其の物は日々進化している為、私が使っていた時とは多少能力の違いはある様なのだけれど、根本は変わらないの。

 だけどそれでも翡翠は、私の冷酷な戦い方を納得出来ず、無謀にも挑んでしまったわ。

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