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第二章 ~『八咫烏』参入編~
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しおりを挟む「シ、シオンさん。ご飯なに食べますか!? 奢りますよッ!?」
「清明さん、その態度やめてくれ。アナタこそ俺の恩人なのだから……」
真緒の事情を知った後のこと。
俺と真緒と清明さんは、屋敷内の食堂に来ていた。
「ていうかここ、マジで広いな」
白くて清潔でとにかくデカいぞ。
何百人も一気に食べれると聞いていたが、それくらい広いし机も椅子もあるし、真緒の話の通りだな。
「――シオンっ、焼き魚定食貰ってきたよ! これがすっごく美味しいんだ!」
と、そこで。注文台のほうから真緒がやってきた。
両手には俺と自分の分の定食がお盆に。清明さんの分はなかった。
「あれーっ、僕のはー!?」
「手は二つしかないし、清明さんは自分で取って来てよ。……ずっと盗み見してたんだしさ」
「うぐ……っ!?」
そりゃしょーがないと、フラフラと注文台に向かう清明さん。
ちなみに俺の側を通り過ぎる時、「よくやった」と小声で言われた。何のことだ?
「はいシオン、お魚の骨取っておいたよ!」
「おっ、ありがとう真緒。焼き魚は初めて食べるから助かる」
「いいってことよ! 友達だろー!」
ちなみに真緒氏、さっきからすごく元気である。
元気な人が側にいるとこっちも元気になるから良いことだ。
「どれどれ、初めての焼き魚を一口……んっ、旨味が旨い……!」
「あはは、なにその感想。シオンは面白いなー」
おお、面白いのか俺。そんなこと初めて言われたから嬉しいぞ真緒。
あ、そうだ。真緒がほぐしてくれた焼き魚を、九尾にもほい。
『む、どれどれ仕方ない食ってやろうか。あーん……って、ンガッ!?』
変な声を出して固まる九尾。赤い瞳が前を向く。
その視線を追いかけると、真緒がニコニコニコニコニコニコニコニコ――ッとすごく上機嫌に微笑んでいた。
ん、なんだなんだ? 綺麗な笑顔じゃないか。なんで九尾は固まったんだ? ん?
「あははっ、なんだろうなこの気持ちは~……! あぁそうそう九尾さんだったよね。九尾さん用に小鉢に魚の身を分けてあげるから、それを食べなよ。ね?」
『うっ、うむ……そうさせてもらおう』
自分の魚を切り分けていく真緒。
おお……なんて良いヤツなんだ。俺以外にも、九尾にご飯を食べさせてあげたいと思う者がいるとは。
ぶっちゃけ俺だけが養いたいという気持ちもあるが、真緒の偉大な献身の心は評価に値するものだ。
好感度、めちゃくちゃ上昇だぞ!
「……にしても九尾さん、妖魔なのに人間のご飯を食べるんだね」
「ん?」
なぜか真緒が意外そうな顔をしている。え、なんぞなんぞ?
「妖魔は普通の飯を食べないのか?」
「うん。妖魔は元々、負の感情から生まれた存在。人間を傷付けることが前提の生物だからね。それゆえか、普通の食べ物みたいな、人に命を与える糧が生理的に大嫌いみたい」
ほほう、そりゃ知らなかった。というか妖魔の存在を知ったの、まだ三日くらい前だしな。
「だから妖魔って、人間の肉しか食べれないんだってさ。それなのに……」
九尾のほうを二人で見つめる。
焼き魚をハフハフッと熱がりながら『これはっ、旨味が……旨味がっ……!』と唸っている白い少女。
うん……なんか俺よりも美味しそうに食べてるな。頬をぱんぱんに膨らませて、めちゃくちゃ笑顔で食しておられる。
『んぐんぐっ……って、なんだ貴様ら!? じろじろ見るな!』
「あぁすまん九尾。妖魔は人間の肉しか食えないと聞いてな」
そう言うと、九尾は手の油を舐めながら『あー』と答えた。
『まぁ確かにそうだな。我も実際そうだったし。ただなぁ、シオンと一つになってからのことだ。浅草で鰻を食っているのを見た時、ふいに美味しそうと思ってしまってな。それから平賀に仮の身体を与えられたら、この通りよ』
はぐはぐと食事を続ける九尾さん。とっても美味しそうなご様子だ。
「んーなるほどねー。噂にはなってたけど、シオンが九尾を取り込んだ一件が原因か。魂に人間らしさが混ざっちゃった、ってこと?」
「マジか。それはなんだか嬉しいな」
九尾が俺色に染められたってことだ。
おいおいおいおい……なんだか背徳感にも近い愉悦を感じるぞ。
「ふふふ……九尾、いっぱい食べろよ? たくさん稼いでお前を養うからな? ふふふふ……!」
「わー……九尾さん、シオンにすごく慕われてるね。うわなんだろう、そう考えるとさっきから変なもやもやが……!」
『ってなんだ貴様らーーーっ!?』
俺と真緒に見つめられて九尾が叫ぶ。
――こうして俺たちは、明るく楽しく食事の時間を過ごしていくのだった。
そして。
「――はい注目! キミたち二人の仲間に入れて欲しい子がいまーす!」
ふいに、清明さんが手をパンパンと叩きながら食堂の出入り口より現れた。
はて、食事を取りにいったんじゃないだろうか? そう思っていると……。
「キミたちと友達になりたがってる、蘆屋 鋼牙くんでーす!」
「誰が友達になるかボケェエエエーーーッ!?」
清明さんに続いて現れたのは、全身ボロカスで包帯まみれの青年。
――数時間前に俺と戦ったチンピラの、蘆屋だった……!
あっ、ということは!
「よく来たな蘆屋っ! というわけで巫装展開ッ、【喰密刃】――!」
“ッッッ~~~~!!!”
また会ったな、宿敵よ! って感じで蘆屋の全身に現れるミッちゃん。元気そうで何よりだ!
「って勝手に人の巫装を展開するなっ!? 【喰密刃】も出てくんなやッ!」
蘆屋がなんか叫んでるがどうでもいい。
俺は刃を抜き、ミッちゃんも拳を構えると、俺たちは激突を開始したのだった――!
「やめろぉおおおおおおおおおーーーーーーーーーーッ!?」
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