上 下
23 / 38
第2章:飛び立て!てつお

第12話「伏線回収かよ!?」

しおりを挟む

名前:ハヤ・ソフレン
職業:親衛隊隊長
レベル:61
HP:6000
MP:4550
攻撃力:5840
守備力:6250
素早さ:5800
魔力:3600
魔法耐性:3740
器用さ:5420
スキル:
【マナイバ:レベル24】
【炎熱魔法:レベル20】
【氷結魔法:レベル40】
【電撃魔法:レベル29】
【防御魔法:レベル30】
【回復魔法:レベル18】
【剣術:レベル30】
【拳闘術:レベル20】
【弓術:レベル45】
【棒術:レベル20】
【分解:レベル3】
【潜伏:レベル21】
【逃走:レベル8】

「あ、あんたが……!?」

「分かってもらえたようだ。ここは私に免じて収めてくれないか」

分かってもらえてない。
立派な職業やステータスなのは間違いないけど、もっと用があるのはその名前だ。
ハヤ!この人がハヤなんだ!間違いない。

「メロンジ、あまり問題を起こすようなら……軍からだけでなくこの国からも出て行ってもらわなくてはならんぞ」

「チッ……」

長い睫毛の間から、鋭い眼光がメロンジを突き刺した。
あの荒くれが、すっかり大人しくなっている。
てかメロンジって元々軍にいたんだ?ややこしや。


とにかく俺たちは酒場から出た。
元々の目的は魔王軍の話を聞くことだったけど、まさかのショートカットでもう一つの目的、ハヤという人物と会うことができるなんて。

「少年、腕は大丈夫か?」

「うん。さっきは死ぬほど痛かったけどもう何ともないや」

「……感心せんな。あそこは君たちのような年頃の者たちが行くような場所ではないぞ。家はどこだ?送っていこう」

めちゃくちゃ優しいお巡りさんみたいなことを言われたので、俺たちはかくかくしかじかを絵に描いたような説明をした。
エマエが下手な割り込み方をするせいで、本来必要な時間の倍はかかった。

「そうか、君がオルズ様の孫、タキオ殿であったのかか。今日は妹のルミナが世話になった。心から礼を言わせてくれ」

「あ、え……?ハヤさんが、ルミナのお兄さんだったの?」

マジか。伏線回収かよ。
何か思いもよらない場所で思いもよらないとこが繋がったなぁ。
元を辿ればジュークさんの時点から繋がってた訳だし、変な縁があるもんだ。

「それで……結局君たちは魔王軍のことを調べているのか?いずれにせよ好ましくない。宿までは送るが、もうあんな所へは立ち寄らないことだ」

ウーン……さっきから何か違和感がある。
そのせいでハヤさんの話に集中できない。
彼の喋り方だ。
何というか、あまりに練習された声というか……
ハキハキと一音一音が聞き取りやす過ぎて、不自然なんだ。
やたら澄んだ声だし。

「あ、忘れるところでした。ジュークさんって知ってます?手紙、預かってるんです……ね?てつおさん」

タキオくんが促すまで、完全に忘れてた。いけね。
ジュークという名前を聞くと、彼は目を見開いて口角を上げ、

「ジュークから!?本当か!」

と、これまでの演劇調の声が嘘だったかのような高い声をだした。

「あー……ンンッコホンッ!それは済まない。ありがとう……着いたな、ここか」

咳払いの後、また低くハキハキとした喋り方に戻ったハヤさんは丁寧に宿屋の扉を開けて、俺たちが入るまで扉を持っていた。
物腰が低くて立派な大人だなぁ。
俺もこういう大人になりたい。

「あの、どうもありがとうございました。ほんとに色々……」

「うむ。手紙の内容はまた明日にでも確認しよう。この宿屋で待っていてくれ」

俺も丁寧にお辞儀をせざるを得ない。
礼儀には礼儀で返さないとダメだ。
つまり先にこっちが礼儀正しくすれば向こうからも礼儀正しくしてもらえるわけだ。
なんてことを思った。



部屋に戻ると、びしょ濡れだったシーツや毛布が綺麗なものに替えられていた。
階段を上がる時に、宿屋のおっちゃんから睨まれたのはそういうことか。
も、申し訳ねぇ……
先にこっちが失礼なことをすれば向こうも睨んでくるわけだ。

「ふぃーっ!ンアーッ疲れたもお!今日は長かったわーッ!」

エマエが出来たてのベッドに突撃しながら喚いた。
うーん、確かに今日はめちゃくちゃ長かった。
昼も夜も寿命が縮みそうなことがいっぱいあった。

「……今日はタキオくんの日だったな。見直したぜ、ホント色々と」

昼のいじめっ子に対して、夜の山賊に対して。
タキオくんは漫画のような大活躍だった。

「これもてつおさんのおかげだよ。僕は勇者様のお供なんだから、これぐらい当然さ」

「ヒューッ!頼もしーッ!それでこそ“女神様の”お供よ!」

「エマエも昼間は大活躍だったな。それでこそ勇者様の守護精霊だ」

「……このパーティのリーダーってあたしじゃないの?」

三人での談笑も慣れた感じになってきた。
それにしても、エマエの職業を思い出しながら軽々しく言ったけど、職業って何だろ?
何故か俺のは表示されてないんだよな……
で、タキオくんはあの儀式以来“冒険者”なんだよな。
まあ別にいいや。
俺は異世界から召喚された男、佐藤てつお。
職業は勇者または高校生なはず。
それでいいや。寝よ寝よ。


またまた宿屋の二階に朝が来た。
相変わらず朝が美しい街ではあったけど、特筆すべきことはそんなにない。
この後みんなで喋ったが、特筆すべきことは何もない。

「ふわァ~……おはよ……」
「おはよう、エマエ」
「のどちんこしまえよ」
「あらま」

毎日タキオくんが一番に起きる。
次が俺で、最後は決まってエマエだった。

「今日は何するんだっけぇ?」
「うーん、それが、実はもうないんだなぁこれが」
「確かに。もうお手紙も渡したし魔王のことはハヤさんから聞けばいいもんね」
「マジ?じゃあ今日は遊びに行きましょ!」
「……って訳にも行かないんだよ、ハヤさん言ってたろ?この宿をあんまり離れられないんだよ」
「え?もしかして今日ずっとここ?」
「場合によっては……」
「えーッ!マジで!?ヤダヤダ退屈で死んじゃう!」
「……この周辺ならいいんじゃない?」
「ウーン、確かに……てか全員残ってる必要もないのかな?」
「ネ!決まり!遊びに行こう!」
「あ、じゃあ僕お留守番するよ」
「いいの?悪いわネ!決まり!遊びに行こう!」
「早いんだよ……もう少し申し訳なさそうにするもんだろ」
「そ、そうネ、悪かったわ。ごめん!よし!遊びに……」
「もういいよ、俺が残るからタキオくん、コイツのお守り頼んだぞ」
「え?いいの?」
「え?お守りって何?」
「ハヤさんが来た時に俺が残ってた方が話が早いだろ?よく考えたら俺だけはここを離れちゃダメだわ」
「そっか……そうかも。僕多分上手く話せないし……でも……」
「ねえ、お守りってどういうこと?」
「気にすんなって!また面倒ごとになったら帰ってくればいいよ、遊んでおいで」
「……うん!ありがとう。大丈夫!メロンジに比べたらあいつらなんて怖くないよ!」
「あたしってそんなにそそっかしいの?ねえってば」

以上のような経緯で俺だけが宿に残ることになった。
特筆すべきことのないおしゃべり。
ある意味、順調に旅が進んでる証拠かな。



さて、久し振りに独りっきりになった。
ここ最近ずっと寝ても覚めても誰かといたから、何となく気分がいい。
昔から独りの時間が好きだったんだ。
……そう、久~し振りに、独り。年頃の健全な男子が。
ここ最近、かなり溜まってたんだ。
ナイスバディ美人のカノーさんと同棲してた時期もあったし。
あ~、あの時は柔らかかったな。
溜まるものは溜まってたんだよこれでも。
あとあんなちんちくりんでもエマエの存在も毒だった気がする。
男児の諸君、よく考えてみてほしい。
自分の胸元から、女の子の声がするのだ。
そこそこの露出度の女の子が、胸元からヒョコヒョコ顔を出すのだ。
その女の子の寝息で目が覚める毎日を送っているのだ。

よし、今日はちょっと……処理しとこうかな。
となるとスキル【潜伏】が使えそうだ。
宿のおっちゃんとか他のお客に見られたら死ぬもんな。
副産物の方は【分解】を使えばいける気がする。
何だかんだ便利な世界だぜまったく。

よし、そうと決まればまずは偵察だ。
何気な~い感じで一階に降りよう。
伸びでもしながら彼の者たちの兵数、動向を把握しておこう。


気を抜くな、てつお二等兵。
貴様の生死は……そうセイシはこの偵察にかかっておる!
抜くためには気を抜いてはならん!
階段を下る時もごく自然に振る舞うのだ!

……!こちらてつお二等兵!本部!誰か来客のようです!話し声が聞こえます!どうぞ!

む……しばし止まれ!
気づかれぬよう、内容を聞いておけ!



「失礼する。タキオとかいう小僧と、てつおとかいう若僧はこの宿に泊まっておらぬかね?」

「え?あぁこりゃゲラーカ家の旦那!これはまたようこそお越し下さいました……ええ、泊まっておりますです。迷惑なガキどもでしてハイ!何かやらかしましたか?」

本部!非常に危険な状況です!任務の遂行は不可能かと!
……あのおっちゃんボロクソ言ってんなぁ。
まぁ多大なる迷惑はかけたけどさぁ。

「フン、貧乏な宿屋とはいえもう少し客を選ぶがよい。かのガキども、こともあろうにご当主ポッポ様のひとり娘、マモヤ様とその友達に危害を加えようとしたのだ!ポッポ様直々のご命令である!彼らを渡してもらおうか」

「へぇ。そりゃまた大それたことを……ご命令となくても、こちらとしても断る理由がございませんや。しかし旦那、タキオとかいう方はさっき出歩いちまいましたよ」

「ならばてつおという若僧だけでもよい!部屋はどこだ?案内しろ!」

「へぇ。こちらでございます」

本部!応答願います本部!
敵が本陣に攻め込んできます!本部ーッ!

哀れなてつお二等兵よ。君の尊い犠牲は忘れはしない。我々は君の儚い性欲よりも全体の安寧を優先せねばならぬ。

つまり抜いてる場合じゃねぇ!普通に大ピンチだぞこれ!
てかマモヤって誰だ……?
あ、昨日のお父様に言いつけるとか言ってた青巻き毛のクソガキのことか!
ヤベェ!心当たりある!
変なとこ繋がったなぁもう!伏線回収かよ!?


とにかく隠れなければ!
そうなると、やっぱり【潜伏】が使えそうだ!使ったことないけど!
あとは……あぁ!階段を上ってくる音が聞こえる!
何で抜いてもないのにこんなに慌てふためかなきゃいけないんだよ!
そうだ!窓の外から【飛行】で屋上にでも……!

げっ!外は手下の兵でいっぱいかよ!そこまでするか普通!?
……あっ!よし!一か八か!
この方法で行こう!
唸れ!俺の器用さと素早さよ!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN
ファンタジー
それは、ある少年の物語。 ある日、前世の記憶を取り戻した少年が大切な人と再会したり周りのチートぷりに感嘆したりするけど、実は少年の方が凄かった話し。 『僕の兄上はチート過ぎて人なのに魔王です。』 『そういうお前は、愛され過ぎてチートだよな。』 そんな感じ。 『悪役令嬢はもらい受けます』の彼らが織り成すファンタジー作品です。良かったら見ていってね。 隔週日曜日に更新予定。

一人になってしまった回復術師は世界を救う

新兎丸
ファンタジー
勇者メルと一緒に旅をしていた回復術師テラはある町で強引に離れ離れとなってしまった。 お人好しの勇者メルと回復術師は強引に引き離され、勇者メルと回復術師テラは別々の道を歩む事になる。 勇者メルはパーティーを組んだ者達と魔王を退治に行き、一人になってしまった回復術師テラは1人で更なる強敵と戦う事になる。 テラの行く道には常に困難が待ち受けておりそれを乗り越えて1人で世界を救うために旅をしていく。 1話目だけ長いです。 誤字脱字等がありましたら修正しますので教えて下さい。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

異世界酒造生活

悲劇を嫌う魔王
ファンタジー
【アルファポリス ファンタジーランキング 一位獲得(三月二十七日時点)大感謝!!】  幼い頃から、味覚と嗅覚が鋭かった主人公。彼は、料理人を目指して日々精進していたが、成人を機にお酒と出会う。しかし、そのせいで主人公は下戸であることが判明し、自分の欠点にのめり込んでいく。気づけば、酒好きの母に最高のお酒を飲ませたいと、酒蔵に就職していた。  そこでは、持ち前の才能を武器に、ブレンダー室に配属された。しかし、周りから嫉妬された若き主人公は、下戸を理由に不当解雇をされてしまう。全てがご破産になってしまった主人公は、お酒が飲めなくても楽しめるBARを歌舞伎町に出店した。しかし、酒造りに対する思いを断ち切れず、ある日ヤケ酒を起こし、泥酔状態でトラックに撥ねられ死亡する。  未練を残した主人公は、輪廻転生叶わず、浮世の狭間に取り残されるはずだった。そんな彼を哀れに思った酒好きの神様は、主人公に貢物として酒を要求する代わりに、異世界で酒造生活をするチャンスを与えてくれる。  主人公は、その条件を二つ返事で承諾し、異世界転移をする。そこで彼は、持ち前の酒造りの情念を燃やし、その炎に異世界の人々が巻き込まれていく。そんな彼の酒は、大陸、種族を超えて広まって行き、彼の酒を飲む事、自宅の酒棚に保有している事は、大きなステータスになるほどだった。 *本作品の著者はお酒の専門家ではありません、またこの作品はフィクションであり実在の人物や団体などとは関係ありません。 *お酒は二十歳になってから飲みましょう。

魔法公証人~ルロイ・フェヘールの事件簿~

紫仙
ファンタジー
真実を司りし神ウェルスの名のもとに、 魔法公証人が秘められし真実を問う。 舞台は多くのダンジョンを近郊に擁する古都レッジョ。 多くの冒険者を惹きつけるレッジョでは今日も、 冒険者やダンジョンにまつわるトラブルで騒がしい。 魔法公証人ルロイ・フェヘールは、 そんなレッジョで真実を司る神ウェルスの御名の元、 証書と魔法により真実を見極める力「プロバティオ」をもって、 トラブルを抱えた依頼人たちを助けてゆく。 異世界公証人ファンタジー。 基本章ごとの短編集なので、 各章のごとに独立したお話として読めます。 カクヨムにて一度公開した作品ですが、 要所を手直し推敲して再アップしたものを連載しています。 最終話までは既に書いてあるので、 小説の完結は確約できます。

処理中です...