子ネズミデイジーのお引越し

ドブネズミのスタッチ

　街にはたくさんの人間がいました。たくさんの車があって、山の杉の木より高い建物がたくさんありました。
　デイジーはびっくりして道路の真ん中に立ち止まってしまいました。お父さんネズミがデイジーをひっぱらなかったら、車にひかれてぺしゃんこになっていたことでしょう。

「デイジー、ここにはイタチもキツネもいないけど、たくさんの人間とたくさんの車がある。注意しなきゃだめだよ」

　お父さんはデイジーにそういいました。
　3匹はそのあと、人間の足をかきわけ、車のタイヤをかわし、下水道管をつたってようやく目当ての場所につきました。
　そこはとある家の屋根裏でした。

「やあ。山からはるばるよくきたね」

　デイジーたちに挨拶したのは、1匹の年をとったドブネズミでした。

「おじいさんはだーれ？」

　口からおもちゃをだして、デイジーはそう聞きました。

「わしはスタッチだ。君たち家族に新しい家を紹介しようと思ってね。さあ、ついておいで」

　スタッチはそういうと走り出しました。
　3匹はあわててあとを追いました。