上 下
16 / 23

16

しおりを挟む
「しかし、あれだよな。ああいう美人ってやっぱり嫉妬されるのかな?」

 夜になっても物置の窓からは、相変わらずザアザア振りの雨がみえる。ただ風が弱くなってきたせいか、音は静かだった。
 外の景色をじっとみながら和也が答えた。

「子供の頃、会話する相手がいなかったって話? でも乃愛はもちろん、南も可愛いけどクラスの子と普通に話してるよ」

 和也の言葉に真は少し考え込む素振りをみせた。だが結局答えはでなかったのか、すぐに話を変えた。

「それより和也。さっき大広間を出るとき、霧江さんになにかいわれただろ? まさか告白とかじゃないよな?」
「まさか」
「じゃあ何の話だよ?」
「……僕たちのなかに犯人がいる可能性についてきかれた」

 真はキョトンとした顔になった。真が口を開くより先に、南が顔をのぞかせた。後ろには乃愛もいる。

「二人とも起きてる?」
「南、乃愛? どうしたの?」
「うん。さっき松永さんが部屋に帰ろうとしてたんだけどさ。もうぐったりしてて、あんまり可愛そうだから髪を拭いたり、着替えるの手伝ってあげたの」
「そうしたら、これ」

 乃愛がそういって手に持ってるものをみせてきた。ジュース、ポテトチップス、ガム、チョコ……大広間にある甲板や飲料水とは違う、美味しそうなものばかりだった。

「おいおい。こんな時間から打ち上げかよ?」
 
 真はそういったが、乃愛と南が気にせず部屋に入ってきた。その結果、狭い物置に四人がすしづめになった。
 真、乃愛、和也、南の順で円になると、お菓子の袋が開けられた。

「でもとんだ取材になっちゃったね、宝石は盗まれるし、人は死ぬし、二泊もするはめになるし」

 乃愛の言葉に全員がうなづく。

「それで、どんな新聞にする?」

 和也がきいた。和也自身、果たしてどんな記事にしていいのかさっぱり分からなかった。残りの三人も黙ったままだった。
 そもそも相田正一が人生のアドバイスをできる立場の人間なのか、和也には疑問だった。

「あらやだ、ジュースこぼしちゃった」

 乃愛が素っ頓狂な声を上げ、コップを持ち上げた。

「ここ、ぞうきんか何かないのかしら?」
「それなら大広間にふきんがおいてあったよ、僕取ってくるね」

 そういって和也は大広間に向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

蠍の舌─アル・ギーラ─

希彗まゆ
ミステリー
……三十九。三十八、三十七 結珂の通う高校で、人が殺された。 もしかしたら、自分の大事な友だちが関わっているかもしれない。 調べていくうちに、やがて結珂は哀しい真実を知ることになる──。 双子の因縁の物語。

嘘つきカウンセラーの饒舌推理

真木ハヌイ
ミステリー
身近な心の問題をテーマにした連作短編。六章構成。狡猾で奇妙なカウンセラーの男が、カウンセリングを通じて相談者たちの心の悩みの正体を解き明かしていく。ただ、それで必ずしも相談者が満足する結果になるとは限らないようで……?(カクヨムにも掲載しています)

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

リアル

ミステリー
俺たちが戦うものは何なのか

マスクドアセッサー

碧 春海
ミステリー
主人公朝比奈優作が裁判員に選ばれて1つの事件に出会う事から始まるミステリー小説 朝比奈優作シリーズ第5弾。

きっと、勇者のいた会社

西野 うみれ
ミステリー
伝説のエクスカリバーを抜いたサラリーマン、津田沼。彼の正体とは?? 冴えないサラリーマン津田沼とイマドキの部下吉岡。喫茶店で昼メシを食べていた時、お客様から納品クレームが発生。謝罪に行くその前に、引っこ抜いた1本の爪楊枝。それは伝説の聖剣エクスカリバーだった。運命が変わる津田沼。津田沼のことをバカにしていた吉岡も次第に態度が変わり…。現代ファンタジーを起点に、あくまでもリアルなオチでまとめた読後感スッキリのエンタメ短編です。転生モノではありません!

美しき怪人は少年少女探偵団を眠らせてくれない

white love it
ミステリー
S市立東山小学校5年の智也、誠、乃愛、亜紀の四人は学校の帰り道、森の中に建てられた絶世の美女ネイレの山小屋に招かれる。彼女は子供達に問題を出し、解けなければ生きたまま人形になってもらうと告げる…… 佐間智也…ごく普通の小学5年生 藤間誠 …イケメンにしてスポーツ万能な小学5年生 葛城乃愛…美少女アイドルの小学5年生 今関亜紀…成績優秀な小学5年生 ネイレ …本名不詳。黒いワンピースに身を包んだ超絶美女。

どんでん返し

あいうら
ミステリー
「1話完結」~最後の1行で衝撃が走る短編集~ ようやく子どもに恵まれた主人公は、家族でキャンプに来ていた。そこで偶然遭遇したのは、彼が閑職に追いやったかつての部下だった。なぜかファミリー用のテントに1人で宿泊する部下に違和感を覚えるが… (「薪」より)

処理中です...