一年B組探偵団と盗まれたルビー

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 一階に降りると、米塚は電話機へと向かった。電話機はちょうど花瓶の影に置かれており、見つけるのに少し手間取った。
 だが受話器を持ち上げると、変な顔をした。

「おかしいな。つながってないぞ」
「昨夜は雷もあったからな。ひょっとしたら電話線をやられたのかもしれない。」 
「じゃあ、車で呼びに行くしかないですな」
「ねぇ。米塚さんの車ってどれなんですか?」

 乃愛が無邪気な声で米塚と牧本の会話に割って入る。

「ガラスに黒いシェードのかかってたやつ? スポーツカーの」
「いや、それは霧江さんのだろう。私は4WDだ。牧本さんはセダンだったはず」
「ふーん」

 いつの間にかドアの前に松永が立っていた。じっと黙ったまま。

「ああ、松永さん。ちょうどよかった。これから車で……」
「誰も行かせませんよ」

 松永はきっぱりといった。まるで和也たちのクラスの新村先生みたいに。

「どういう意味かしら?」

 霧江が尋ねる。

「皆さんにはもうしばらくここに居てもらいますよ。真犯人がわかるまでね」
「真犯人?」
「ルビーを盗んだ人間はこの中にいます。おそらくルビーと一緒にね。その真相を確かめるまでは誰もだしませんよ」
「ふん。バカバカしい」

 牧本は鼻で笑うと、松永をどけようとした。
 だが松永は動かなかった。

「バカバカしい? 果たしてそうでしょうか? ここの監視カメラは外部の人間が近づけばすぐに知らせます。それがなかったということは犯人は皆さんのなかにいるということでは? 皆さんの車はタイヤをナイフで切って動かないようにしました。もちろん電話線をたった今切ったのも私です。それから一つ忠告させていただくと、この雨の中ここの山道を歩いて降りるのは自殺行為ですよ。地面がそうとうぬかるんで容易に崩れやすくなっていますからね」
「しかし、松永さん。天気が回復すればどのみち警察を呼べるんですよ」
「警察は関係ありません!」

 松永はそういいきると部屋を出ていった。

「うーむ。どうやら噂は本当だったかもしれんな」

 米塚があごに手をやりながらうなった。

「噂って?」

 乃愛がまたも無邪気な声でたずねる。

「宝石のほとんどは違法な手段で手に入れたといわれているんだよ。実は……」

 そこまでいってから米塚はニヤリと笑った。それはまさに昨夜米塚がみせた笑顔だった。

「私も今日の商談をすすめようと思っていたんだが……松永さんが警察に電話したがらないのは、それを知られたくないからかもしれんな」

 和也たち四人は顔を見合わせた。なんだか実際の相田正一というのは犯罪まがいどころか、実際に犯罪そのものもしていたようだ。

「でもいずれはわかることですよね? ここであったことも」
「ひょっとしたら、あの婆さん、警察が来る前に犯人をみつけて交渉する気なのかもな。宝石を置いていったら見逃してやるとかなんとか」

 和也の問いかけに、牧本が窓の外の雨をみながらそっとつぶやいた。
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