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きっと忘れない
3.
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伊藤一正に気配を悟られたくないという理由から、車は、山の麓近くに置いて置くことになった。
和人と幸子は一時間近くかけて、伊藤一正の家まで歩いて行くことになった。麓から伊藤一正の家までの直線距離は決して遠くはなかったが、道が曲がりくねっているために、思った以上に時間がかかってしまった。
伊藤一正の家には、前回と同じく、白いワゴン車が停まっていたが、その車体には煤がついていた。
「幸子さん、大丈夫?」
「いや、どうかな?」
幸子が大きく息を吐きなから、苦しそうに答えた。
「たとえ外見が若くても、年寄りであることに変わりはないからね」
「いや、これは年齢、関係ないでしょ? 僕だってキツイもの」
「そうか。じゃあおあいこだな」
そういって幸子は照れたように苦笑した。
「伊藤一正、いるといいね」
「ああ」
幸子が返事するのと、伊藤一正の家のカーテンがさっと動くのは、ほぼ同時だった。
和人と幸子は顔を見合わせると、息を整え、家へと向かった。
幸子がドアをノックすると、しばらくしてから伊藤一正が顔を出した。
「おはよう。あなたに話があってきたの」
幸子の挨拶を受け、伊藤一正は少し驚いたように肩をすくめた。
だが気のせいだろうか?
和人が横を通り抜ける時に、伊藤一正は笑ったように見えた。
その笑顔は、一言の声も息も漏れていなかったが、信じられないほど口元がねじ上がった不気味なものだった。
だが和人が見直した時には、伊藤一正はきょとんとした顔で見つめ返していた。
和人と幸子は一時間近くかけて、伊藤一正の家まで歩いて行くことになった。麓から伊藤一正の家までの直線距離は決して遠くはなかったが、道が曲がりくねっているために、思った以上に時間がかかってしまった。
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「幸子さん、大丈夫?」
「いや、どうかな?」
幸子が大きく息を吐きなから、苦しそうに答えた。
「たとえ外見が若くても、年寄りであることに変わりはないからね」
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