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眠れない夜を抱いて
5.
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「幸子さん、本当にここでいいんですか?」
居間で毛布一枚で寝るという幸子に、和人は話しかけた。未歩から借りたTシャツとハーフパンツを身に着けているが、だらしなさは少しも感じさせない。かといってダサくもない。絶妙なくだけ具合だった。
すでに居間の電気は消えており、昇も未歩もゆきも、それぞれ寝入っている。
「大戦の頃、終盤はもうまともに電気もガスも点かなかった。しかも、もう二度と点くことはないのではないかというような状況だった。それを思えば気にもならない」
和人はふいに、以前幸子が話していた言葉を思い出した。
暗闇は嫌いといっていなかっただろうか?
それとも寝る時に電気を消すのは、特に気にはならないのか?
「ん、どうした? 和人?」
「あ、いや…… 事件の調査はどうしますか?」
「今夜、もう少し考えてみるつもりだ」
「それ、僕も一緒に考えさせてくれませんか?」
幸子は少し驚いたような顔になった。
「いや、そうだな。なぜか自分一人で考えようとしていた。ここまで事件の捜査に君を巻き込んで、それはあまりにも失礼だったわね」
幸子の中では自分は今、どんな存在なのだろうか?
和人はふと思った。
もしかしたら、幸子もまた、ゆきと同じように迷いはじめているのではないだろうか?
この状況に。この環境に。
遠山和人はただの子供なのか、大人になりつつあるのか、名探偵の助手なのか。
この事件が終わった頃、幸子はどんな答えを出すのだろう?
幸子は電球から垂れている紐を引いて、部屋の明かりをつけた。
「ここまでの展開と、現時点での私の推理を話すわ」
「はい」
幸子は一度頷くと、大胆にも胡座をかいてから、話し始めた。
居間で毛布一枚で寝るという幸子に、和人は話しかけた。未歩から借りたTシャツとハーフパンツを身に着けているが、だらしなさは少しも感じさせない。かといってダサくもない。絶妙なくだけ具合だった。
すでに居間の電気は消えており、昇も未歩もゆきも、それぞれ寝入っている。
「大戦の頃、終盤はもうまともに電気もガスも点かなかった。しかも、もう二度と点くことはないのではないかというような状況だった。それを思えば気にもならない」
和人はふいに、以前幸子が話していた言葉を思い出した。
暗闇は嫌いといっていなかっただろうか?
それとも寝る時に電気を消すのは、特に気にはならないのか?
「ん、どうした? 和人?」
「あ、いや…… 事件の調査はどうしますか?」
「今夜、もう少し考えてみるつもりだ」
「それ、僕も一緒に考えさせてくれませんか?」
幸子は少し驚いたような顔になった。
「いや、そうだな。なぜか自分一人で考えようとしていた。ここまで事件の捜査に君を巻き込んで、それはあまりにも失礼だったわね」
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