聖女の如く、永遠に囚われて

white love it

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プロローグ

1.

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 カーテンが閉められ、ほとんど陽の差さない部屋の中、一人の女がソファでまどろんでいた。
 その抜けるような肌の白さ、きめ細かさは、暗闇の中でも明らかに際立っていた。
 さらに、長くきれいに生えたまつ毛、すっと通った鼻梁、艶やかで軽いウェーブを描いて肩から流れ落ちる髪、まさに天女もかくやという、どこから見ても、一点の曇りも一片のくすみもない美しさだった。
 しかも、驚くべきことに彼女は化粧をしていなかった。化粧品の広告をつくった製作者達や、ばっちり化粧をしてカメラの前に立つハリウッドの女優達の自信を完膚なきまでに打ち砕くほどに、彼女は素顔のままでも圧倒的に美しかった。

幸子さちこさん」

 突然、少年の声がしたが、女は目を少し開けただけで、またすぐに閉じてしまった。

「幸子さん」

 少年の声が少しイライラした口調に変わると、さらにふてくされたように横をむいてしまう。髪がさらりと流れたが、その艶やかさは暗闇の中でも光っていた。
 少年は窓に向かうと、さっとカーテンを開けた。
 すでに昼の二時を過ぎており、一気に陽光が差し込まれ、部屋の中が明るくなる。

「君には年長者に対するいたわりというものはないのか?」

 女が恨めしそうな声をあげながら、少年を睨みつける。

「いやいや。むしろこんな時間までだらだらしてるほうが、身体にはよくないでしょ? だから、うちのお母さん達に、暇人だの怠け者だのって言われるんですよ」

「君のお母さんがどう思っているかなんて、どうでもいい。私は君のお母さんの一万倍は金を持っているからな」

「でも、仕事をしていないのは事実でしょ?」

「仕事をする必要のない身分なんだよ。労働者階級の人間ではない」

 そう言って、女は不適に笑った。
 その笑みは妖艶だったが、その肌の透明感からか、決して不潔な印象を与えるものではなかった。むしろどこかかわいらしささえ、感じさせるものだった。
 だが、少年は少しも臆することはなかった。

「なんかお客さんが来るみたいですよ。幸子さんに会って相談したいことがあるそうです」

「相談したいこと?」

「なんでも事件の調査だとか?」

 女は大きくため息をつくと、ソファから立ち上がった。

「しょうがないな」

 髪を簡単に撫でて、ブラウスの乱れを直しただけだったが、その出で立ちは上品な淑女そのものだった。
 だが突然、女はきゅっと眉間にしわを寄せると耳に手を当てた。

「何か変な音がしないか?」

「音?」

「いや、音というより、これは空気が……」

 女が最後まで言わないうちに、窓の外で凄まじい閃光が走った。
 それは女の言葉をもかき消すほどの閃光だった。
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