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救済
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しおりを挟む「雄斗……?」
「……………」
「……なんで、俺のこと……風って呼ぶの?」
(っ………)
「”ふーくん”って呼ばないの……俺が嫌いだから……?」
嗚呼
泣かないで
違う
違うよ。
「……風を、特別に想いたくないから……」
「ぅあ、……ゆうと……っ」
風なら判ってくれるかな。
“特別”がどんな意味か。
「おねがいっ、おねがいっ、開けてよ……」
「………だめだ、」
「すぐそこにいるんだろ?!俺も……、もう限界なんだってば……」
「っ……だったら…さぁ、」
頑張らなくていいよ。
(これ以上、風には無理をしてほしくない……)
「……ゆうとは、なんで死ぬの?」
「……風を助けたいから。」
「……違うよね……?」
ガリガリ、と爪で音を立てながら震える声で風は言う。
「……逃げるために……死のうとしてるだろ……」
(………………)
「俺は……さ、愛のために死のうとか……意味分かんない理由で死のうとしてた……雄斗は全然違うよね……?」
「……なんで、そんなこと言えるの。」
「……まだ……生きたいって顔してるから……」
(………?)
あれ
おかしい
「っ……顔なんて見えないだろ、変なこと言わないで早く出て行けよ。」
俺は強くそう言う。
だけど、俺はなぜか今
泣いている。
「やだ……雄斗が、扉を開けるまでっ……」
「辛いんだろ?俺なんていいから、早く行けよ……」
これで最後。
最後に心を殺す。
家の中、外でも心を殺してきた。
風の前では,生きている感じがした。
「…………」
風が何か言ってる。
俺は聞こえないふりをする。
ふと、自分の腕を見てみる。
「………風、腕を見てよ。」
俺が付けた傷。
「多分、一生残ってくれるよね。」
「っ……一生なんて無い……俺が死ねば、すぐ終わる……」
知ってる。
だから、
「生きて欲しいんだよ。」
こんなに汚い俺よりも、綺麗な風には生きてほしい。
俺なんかを助けないで。
……他の人と、幸せになって。
“ドンっ!!!!!”
「っ、?」
“ドンっ!!!”、 “ドンっ!!!!”
扉を、蹴る音が聞こえる。
強い振動が扉から伝わる。
「……風?」
いや
弱っている風から、こんな力が出るとは思えない。
「っ……開けろ!!!雄斗様!!!!」
なんで
「……遥奈………?」
「梶原くん!!ほら、雄斗様は此処を出ない!私たちだけでも屋敷から逃げるよ!!」
「っ……いやだ、ゆうとがいないとっ」
「面倒くさせぇなっ……ほら、身体起こして!!」
「っ……痛っ」
風が痛がってる
止めないと
助けないと
「ゆうとっ……助けて……、ゆうと!!!」
「……ふう、く……」
「雄斗様!!!早く判断して!!!梶原くんっ……死んじゃう……」
風が 死ぬ ……
ふーくんが
「ずっと……雄斗様のために体力を消耗して……雄斗様のために……っ、精神まで……梶原くんは自分を殺したの……!!」
「私だって……もう、友達を失いたくないの……っ」
「このままじゃ本当に死んでしまう!!お願いです!!!私の頼みなんです!!!」
その言葉に
身体が動く。
「……ふーくん。」
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