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夢物語(雄斗)
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しおりを挟む「隼人、俺は…ふーくんを助けて如何すればいい……」
「……出頭しろ。」
「…………」
当たり前だ。
ふーくんを守るため……否、自分が安心するために俺は大勢の奴らを殺し、傷つけた。
「……commandでの強制支配は今後、相手の人生を狂わす。」
「…………」
「安心しろよ、俺も一緒に出頭するよ。」
「……そうか。」
本当にそれでいいのか?
俺には判かる。
出頭なんてしたら駄目だ。
いや、出頭だけで罪を償うのは卑怯だ。
(遥奈にも……ふーくんにも捨てられたくない……)
考えろ。
人間らしい思考で、俺にできることを。
「………マジ?」
「隼人……お前を信じる。……ふーくんと遥奈を助けろ。」
「廣瀬は?」
「俺は、母さんを止める。」
「っ……それじゃあさ……梶原悲しむよ?」
「………知っている。それを含めて、俺は母さんと死ぬことを選ぶ。」
「………死ぬ意味ないよ。」
「判りきっていることを聞くな。」
俺は、ふーくんの英雄になることにした。
俺に依存しているふーくんなら、俺が死んでも誰も選ばない。
なんで早く気づかなかったんだろう。
俺が死ねば全部思い通りなのに。
「………自分の都合で自殺するなら……やめろ。」
「母さんを止める、それだけだ。」
「止められない。」
「………遥奈と、ふーくんにかっこいい姿みせたらだめなの?」
「……………っ」
中野隼人、お前も判るだろ。
「ふーくんのために死のうとした、お前なら判らない筈がない。」
俺がそう言うと茜、隼人は黙った。
俺は、これが人間らしい考え方なんだと思った。
誰も反論しない。
(やっぱり、愛する人のために死ぬのって当たり前なんだな……)
麻耶を見習って……俺も早くそうするべきだった。
「一応言っておくけど梶原は今、遥奈ちゃんはといる。」
「………」
「遥奈ちゃんは梶原と百合ちゃんを連れて此処を出る予定だ。」
「…………」
「言ってること、分かるよね?」
判る。
俺が死ぬことに、茜と隼人は賛成だ。
俺が、母さんの足を止めることで火事になるまでの時間が減らせる。
「俺も……母さんと話がしたい。」
「決まりだね。」
隼人はそう言い、この部屋を出ようとする。
「パスワード変えていいー?」
「…………勝手にしろ。」
死ぬというのに実感が湧かない。
清々しい程に感じる。
(案外、俺は自分の生死について如何でもよかったのか……)
ふーくんだけを生きる糧にしていた。
ふーくんがいるから、俺は生きていた。
(あれ………?)
ふーくんが、死んだら、俺も、死ぬ、?
(……………)
いや、大丈夫だ。
俺が死んでもふーくんは死なない。
(それだけで……十分だ。)
「雄斗、何か俺に言うことありそうな顔してるね。」
「………うん。よく判ったね。」
俺は隼人、茜に伝える。
「ふーくんを、必ず生かせて。」
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