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君に惑溺
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しおりを挟む隣で寝息が聞こえる
「………ぁ、」
ご主人様が寝てる
「………………」
辺りを見渡してみるとあんなに散らかってた玩具は綺麗に整頓されて、シーツも俺の着てる服も綺麗になっている
(いい匂い……芳香剤か?)
さっきまでご主人様とヤっていたように思えないほど綺麗な部屋
(俺、いつのまにか寝てたのか…)
「…………」
ふとご主人様を見つめてみる
(やっぱり綺麗な顔だな……)
長いまつ毛に透き通るような綺麗な肌
整った鼻に唇
(俺と同じ人間なのかな、)
いつも一緒にいた時もご主人様はイケメンだと思ってたけど意識し始めたからか、もっとかっこよく見える
「………………っ、」
ご主人様の顔に触れようとしたが、少し肩が痛む
(………?)
そういえば火傷、肩に蝋燭付けられていた
俺は肩に手を当てて確認する
(あ……、)
包帯でそこは治療されている
薬も塗ってくれているのか激しい痛みもあまりない
(喧嘩の時に煙草の吸い殻つけられたことはあるけど、すぐ治さなかったから中々傷が消えなかったな……)
そうだ、
吸い殻をつけられた時もすぐき気づいたのはご主人様だ、
手当するよと言って病院に連れて行かれて、薬とか包帯とか痛み止めとか色々貰って
(昔と変わらないんだ……)
治すくらいなら俺に蝋燭を付けないで欲しいと思うけどこうやって治療してくれるご主人様に、なんだか嬉しく感じて心がキュッと痛くなる
(乙女みたいだな…俺)
これもきっと主従関係のせいだと思う
彼のことをご主人様だと思ってる時点でそうだ。
(………無理だ)
今更、”雄斗” なんて言えないよ
ご主人様に向かって言えない。
母さんの命がかかっているし、麻耶のこともあるし、
俺の全部を背負ってるご主人様に逆らうことなんてできない
逆らって、嫌われたくない
「泣きそうな顔してどうしたの?」
「っ…!」
いつの間にかご主人様は起きていて、眠たそうな顔をこちらに向け俺の髪に触れる
「なんでもないですっ…あの、えっと、…こわい夢みてて……」
咄嗟に思いついた言葉を並べてご主人様に言う
ご主人様はニコリと笑い、俺の頭を撫で続ける。
「かわいいなぁ。怖い夢見て泣きそうになるなんて……その夢に俺は居た?」
「へっ…?あ、…は、はい…。」
俺がそう言うとご主人様は満足そうに微笑んで俺にキスをする。
「良かった、ふーくんの夢の中にも俺は居たんだ。」
“好きだよ” とご主人様は俺に言い、ベッドから上がる
(…”好き ”………)
こんな俺に”好き ”だなんて感情をご主人様から戴いても良いのだろうか
好き………?
俺はどうなんだろう
百合先輩に想いを寄せていたような感情が、ご主人様には感じない
主従関係って、好きに関係するのか?
「俺ちょっと部屋を出るから良い子にするんだよ。」
「あ、……はい…」
…………………、
ご主人様は俺のこと、どうしたいんだろう
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