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一年生編

第8話 事件

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 文化祭も終わり、俺はバスケ部の練習に力を入れるようになり、しんどいながらも平穏な日々を過ごしていた
 だが、そんな日々は長くは続かない


 ある日、俺が所属しているバスケ部は近所の中学と練習試合をする事になっていた
 近所と言っても、この街は田舎なので、電車で15分ほど揺られた場所にある中学だった
 練習試合の際には、相手校のボールを借りて、もしもの事があってはいけないので、自分の中学から、ボールをいくつか持っていく。そのボールを持つのは基本一年であり、一年2人で持てない分は先輩たちに持ってもらう
 ボールを持つといっても、多くて一人6個なので、それほどの重労働ではない
 なんなら、俺が普段学校に担いでいるリュックの方が重たいとさえ感じる

「しゃあないから、俺が持ってあげるわ!よかったな!優しい先輩で!」
「ありがとうございます!脩斗先輩!」

 言葉は強いが、実際に先輩たちの中では面倒見がよく、俺もよくお世話になっているので、脩斗先輩には俺も頭が上がらない気持ちだ

「なんで、俺もボール持たなあかんねん。面倒くさっ」

 隣で正樹は文句を言いながらボールを担いでいる

(一年だし、別に試合に出るわけでもないからいいやん)

 俺は正樹のその態度に辟易しつつ、黙ってボールを運ぶ

 相手校に到着し、挨拶をすますと、各校でアップ練習が始まる
 基本、アップ練習は全員参加で、いつ試合に呼ばれてもいいように準備をしておく
 稀に、経験として一年生でも試合に出させてもらえるので、俺も入念にアップをしておく
 試合五分前になると、スタメンがシュート練習を始めるので、ベンチ組でボール出しを行う。ボールが少ないのでスタメンしかシュート練習は出来ない

「おい、大輝ボール取ってくれ!」

 そんな中、正樹はさも当然かのようにシュート練習をしながら、俺に指示してきた
 その態度にイラついた俺は、正樹を無視しながら他の先輩にボールを出す

「おい!俺にも渡せよ!」
「いや、なんでスタメンでもない一年にボールを渡してあげらなあかんねん」
「はあ?別にいいやろ」
「いや、大輝の言う通りやろ、お前もボール出ししろよ、お前のせいでボールこっちに回らんのやけど」

 俺達が言い合っていると脩斗先輩が仲裁に入ってくれた
 正樹は不満たらたらの顔で

「・・・わかりました」

 と言いながら、ボール出しへと戻っていった

 練習試合は俺たちのチームは一勝もすることなく終了した
 元々俺達のチームは強いわけでは無く、それに加えて今回の練習試合の相手はこの周辺地区で最も強い中学でもあったので、結果は当たり前でもあった


 練習試合を終えて地元に帰って来てから30分後、俺は人に投げ飛ばされ地面に横たわっていた

「ちっ、お前がいらんこと言うから悪いんやぞ!」

 俺を投げ飛ばした相手はそんなことを言いながらその場を立ち去っていく、一方俺はというと、投げ飛ばされた時に膝を強打しており、しばらくは動けない状態だった。当たり前だ、俺は格闘技を習っているわけでは無いので、受け身の取り方なんて知らない。対する相手は少林寺拳法を習っていたらしい、自分で声高々に宣言していた

「痛すぎ、正樹のやろう本当のこと言われて逆切れで投げ飛ばすとか終わってるやろ!」

 そう、俺を投げた相手は正樹だった。原因は俺が正樹に対してサボりを指摘したことによる逆上だ
 練習試合が終わり、地元の駅に着くと、正樹は用事があると言いボールを放置して帰っていった
 俺は正樹の分のボールも運び、ほぼ一人でボールの片づけを行った。様子に気づいた先輩が最後は手伝ってくれたが、意外と重労働で俺はそれなりに疲れていた
 家に帰っている途中、北区にある公園の中で正樹の姿を見つけた

「あれ、正樹用事があるんじゃなかったん?」
「げっ大輝、なんでこんなところにおるねん」
「いや、俺の家この辺やし、で、用事は?」
「はあ?何を言ってんの?」
「いや、お前駅で用事があるって帰ったやんけ」
「あ~、あれ面倒だっただけw用事なんてないよw」
「はあ?お前のせいで俺は一人で片づけせなあかんかったんやけど」
「知らんがな」
「まあいいわ、明日先輩たちにもサボりの事は報告するから」
「なんでそんなこと言われなあかんの?」
「いや、先輩に正樹がサボってたら教えろって言われてるし」
「いらんこと言わんでいいから黙っとけや!」

 俺が、指摘していっていると、正樹は段々と機嫌が悪くなり、最後の方はほとんどキレている状態だった

「そんなに言われるの嫌やったら最初からサボるなよ」
「うるせえ!お前俺にそんなこと言ってていいんか?俺少林寺拳法習ってたから本気出せばお前なんか一発やぞ!」
「武術学んでるなら、他人に暴力振るったあかんとか習わんかったんか?」
「うっさいねん!黙っとけ!」

 正樹はそういうと、俺に接近し、俺の腕を取ったと思ったらそのまま俺を投げた
 それからはさっきの通りであった

 ただ、俺にとっての不幸は投げ飛ばされたことではなく、その後の事だった



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