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召喚
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星宮海斗は今、修学旅行で常夏の島にいる。
昼は海や景色を満喫し、夜になると星明りのもとでキャンプファイヤーが始まった。
夜とはいえ、常夏の島でキャンプファイヤーのような暑苦しいことを行うことは海斗にとって酷く不愉快なことだった。
キャンプファイヤーには参加せず、夜の道をビーチサンダルでペタペタと歩く。
巨大な篝火を囲い、輪になって手を繋ぎ歌う声が聞こえる。
キャンプファイヤーに参加していないのは海斗だけではなかった。
学校の不良たちもキャンプファイヤーに参加せず、海岸で酒を飲み騒ぐ。
「海斗くんっ」
クラスメイトの春川茜が声をかける。
「なんだよ」
「キャンプファイヤー、はじまってるよ?」
「いいよ、俺は」
「なんで?」
「暑いし。春川が参加したいなら行けば?」
「そっか、ならアタシもやめとく」
「あっそう」
海斗と茜は歩きながら話す。
二人は高くそびえる火山の近くを通った。
切り立った道を歩く。
「そういえば、パンフレットに書いてあったね」
「なんて?」
「この火山には、島を守護する精霊が棲むんだって」
「なにそれ、宗教?」
「うーん、宗教というか、神話というか、伝承というか」
「呼び込みだろ、観光の」
「身も蓋もないなあ」
二人は歩き続ける。
その間にもキャンプファイヤーでの歌声が響く。
≪異世界≫
「異世界の円陣を発見しました。接続します!」
神官たちが宣言した。
魔法陣と異世界の円陣を触媒に、世界を極めて限定的に交差させる。
女王は固唾を飲み、家臣は恐れおののく。
≪現世≫
『聞こえますか――人間よ――』
声がした。
「なんか言った?」
「え?なんだろ、この前ボールペン失くした話?」
「いや、そうじゃなくて」
『私と契約してほしい―――』
「ほら、今なにか声がした」
「どこから?」
『時間がありません――契約してください――』
空が光る。
満天の星空に暗雲が立ち込め、発光する巨大な円形の模様が浮かび上がる。
「なんか変じゃない?……怖い」
と茜。
暗雲は唸り、雷鳴を轟かせる。
波は荒々しく岸を打ちつけ、風が激しさを増す。
『――契約を結ぶと念じてください―――』
雷が島のどこかに落ちる。
海斗と茜以外の人々も、島の異変に不安を抱く。
キャンプファイヤーの広場――――。
「雨が降るんじゃない?」
「嵐になりそう」
「ホテルに戻ろう」
海岸―――――。
「なんかヤバくね?」
「バッカびびってんのかよ」
「フゥー!!」
曇天に浮かぶ魔法陣が禍々しい光を増幅させていく。
火山の付近――――。
『あなたに主導権を譲る――契約を――』
「契約って、なんの契約だ?」
海斗は声を返す。
「なに?海斗くん」
歩き続けていた茜は立ち止まり、立ち尽くす海斗に振り向く。
「声が聞こえるんだ」
「やめてよ、変なこと言うの」
『あなたに私の依り代を務めてほしい―――』
雷鳴が唸り、火山に落雷する。
崩れた岩石が茜の頭上に転がり落ちる。
「きゃあっ!」
茜は悲鳴を上げ、逃げようとする。
落石を一つ避けたが、つまづいて転ぶ。
そこへ第二、第三の落石が降る。
「茜!!」
海斗は駆け出し手を伸ばす。
「海斗くん……」
『私が力を貸します―――契約を――』
(なんでもいいから力を貸せ!!!)
海斗は心の中で叫んだ。
『ありがとう―――海斗さん―――』
落石が今、茜を押し潰そうとした時に島は光に包まれた。
その日、島から無数の人々が姿を消した―――――。
≪異世界≫
海斗と茜は手を繋ぎ、地面に倒れていた。
「……」
二人は目を覚まし、見つめ合う。
「よかった、無事だったんだな……!」
海斗は茜を抱きしめる。
「うん……」
茜も海斗を抱きしめた。
一体どれくらいの時間、そうしていただろうか。
目を閉じて抱きしめ合っていたが、あまりの静けさに目を開ける。
「なんだ、これ」
海斗がつぶやくと、茜も目を開けて異変を知る。
そこは先ほどまで二人がいた火山の近辺とは違い、平地だった。
日が沈み夜だったはずが、太陽は地上を照らしている。
空は青く、風に草木が揺れる。
「俺たち、死んだのか……?」
海斗は死後の世界を信じていないが、そう解釈したい気持だった。
「さっきまで、夜だったよね」
と茜。
「時間も場所も違う」
海斗は気持ちを切り替えて立ち上がる。
「人を探そう」
海斗と茜は歩き出す。
昼は海や景色を満喫し、夜になると星明りのもとでキャンプファイヤーが始まった。
夜とはいえ、常夏の島でキャンプファイヤーのような暑苦しいことを行うことは海斗にとって酷く不愉快なことだった。
キャンプファイヤーには参加せず、夜の道をビーチサンダルでペタペタと歩く。
巨大な篝火を囲い、輪になって手を繋ぎ歌う声が聞こえる。
キャンプファイヤーに参加していないのは海斗だけではなかった。
学校の不良たちもキャンプファイヤーに参加せず、海岸で酒を飲み騒ぐ。
「海斗くんっ」
クラスメイトの春川茜が声をかける。
「なんだよ」
「キャンプファイヤー、はじまってるよ?」
「いいよ、俺は」
「なんで?」
「暑いし。春川が参加したいなら行けば?」
「そっか、ならアタシもやめとく」
「あっそう」
海斗と茜は歩きながら話す。
二人は高くそびえる火山の近くを通った。
切り立った道を歩く。
「そういえば、パンフレットに書いてあったね」
「なんて?」
「この火山には、島を守護する精霊が棲むんだって」
「なにそれ、宗教?」
「うーん、宗教というか、神話というか、伝承というか」
「呼び込みだろ、観光の」
「身も蓋もないなあ」
二人は歩き続ける。
その間にもキャンプファイヤーでの歌声が響く。
≪異世界≫
「異世界の円陣を発見しました。接続します!」
神官たちが宣言した。
魔法陣と異世界の円陣を触媒に、世界を極めて限定的に交差させる。
女王は固唾を飲み、家臣は恐れおののく。
≪現世≫
『聞こえますか――人間よ――』
声がした。
「なんか言った?」
「え?なんだろ、この前ボールペン失くした話?」
「いや、そうじゃなくて」
『私と契約してほしい―――』
「ほら、今なにか声がした」
「どこから?」
『時間がありません――契約してください――』
空が光る。
満天の星空に暗雲が立ち込め、発光する巨大な円形の模様が浮かび上がる。
「なんか変じゃない?……怖い」
と茜。
暗雲は唸り、雷鳴を轟かせる。
波は荒々しく岸を打ちつけ、風が激しさを増す。
『――契約を結ぶと念じてください―――』
雷が島のどこかに落ちる。
海斗と茜以外の人々も、島の異変に不安を抱く。
キャンプファイヤーの広場――――。
「雨が降るんじゃない?」
「嵐になりそう」
「ホテルに戻ろう」
海岸―――――。
「なんかヤバくね?」
「バッカびびってんのかよ」
「フゥー!!」
曇天に浮かぶ魔法陣が禍々しい光を増幅させていく。
火山の付近――――。
『あなたに主導権を譲る――契約を――』
「契約って、なんの契約だ?」
海斗は声を返す。
「なに?海斗くん」
歩き続けていた茜は立ち止まり、立ち尽くす海斗に振り向く。
「声が聞こえるんだ」
「やめてよ、変なこと言うの」
『あなたに私の依り代を務めてほしい―――』
雷鳴が唸り、火山に落雷する。
崩れた岩石が茜の頭上に転がり落ちる。
「きゃあっ!」
茜は悲鳴を上げ、逃げようとする。
落石を一つ避けたが、つまづいて転ぶ。
そこへ第二、第三の落石が降る。
「茜!!」
海斗は駆け出し手を伸ばす。
「海斗くん……」
『私が力を貸します―――契約を――』
(なんでもいいから力を貸せ!!!)
海斗は心の中で叫んだ。
『ありがとう―――海斗さん―――』
落石が今、茜を押し潰そうとした時に島は光に包まれた。
その日、島から無数の人々が姿を消した―――――。
≪異世界≫
海斗と茜は手を繋ぎ、地面に倒れていた。
「……」
二人は目を覚まし、見つめ合う。
「よかった、無事だったんだな……!」
海斗は茜を抱きしめる。
「うん……」
茜も海斗を抱きしめた。
一体どれくらいの時間、そうしていただろうか。
目を閉じて抱きしめ合っていたが、あまりの静けさに目を開ける。
「なんだ、これ」
海斗がつぶやくと、茜も目を開けて異変を知る。
そこは先ほどまで二人がいた火山の近辺とは違い、平地だった。
日が沈み夜だったはずが、太陽は地上を照らしている。
空は青く、風に草木が揺れる。
「俺たち、死んだのか……?」
海斗は死後の世界を信じていないが、そう解釈したい気持だった。
「さっきまで、夜だったよね」
と茜。
「時間も場所も違う」
海斗は気持ちを切り替えて立ち上がる。
「人を探そう」
海斗と茜は歩き出す。
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