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第5章 お友達?になりました
かくかくしかじか…?
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サイスはミリュエンヌ様の部屋を知っていたようで、迷うことなくたどり着くことができた。
入り口を固めていた衛兵は泣いているミリュエンヌ様に驚き、さらに彼女を抱いているサイスに驚いた。
しかし、深くは追求せずに扉を開けたのだった。
部屋に入りサイスはミリュエンヌ様をソファーに座らせた。
その間お茶でも入れられたらよかったのだが、私は一人で出歩けない。菓子やお茶の用意ができないのだ。
せめてもと、据え置きの水差しから水を持っていく。
「リシア。ありがとう」
ふるふる
気にしないでほしいという意味で首を横に振る。
サイズは受け取った水をミリュエンヌ様に渡して落ち着くのを待った。
次第に落ち着いてきたミリュエンヌ様。
彼女は涙目で私を見あげてきた。
「あなたは…アルの恋人なのでしょう?」
「……?」
なんのことだかさっぱりわからない。
心のままに首をかしげてしまう。
それでも彼女は納得しないのか、波目で睨む。
困った私はサイスに視線を送った。
「ミリュエンヌ様。彼女は殿下の恋人ではありません」
「サイス!嘘をつかないでよ!!恋人でないものが彼の側にいるはずないじゃない!!」
そしてまた大泣きをしてしまう。
これでは説明を聞いてくれるのかわからない。
「リシア。抗議は後で聞くから今は許せ」
サイスは私にだけ聞こえる声で言ってから、ミリュエンヌ様に話しかける。
「ミリュエンヌ様。嘘ではありません。何故なら彼女は私の婚約者なのですから」
「!?!?!??」
その言葉でピタリと泣くのをやめたのは、ミリュエンヌ様。
私は別の意味で固まってしまった。
「ホント?」
「はい。間違いございません。リシア」
(ここで頷かなかったら、また泣き出しそう…)
そんな事実はもちろんないけど、私は頷いた。
すると、花が綻ぶように笑顔になった。
ものすごく眩しい。
「おわかりいただけたようで何よりです」
「ええ。私も安心したわ。だって、彼女とっても綺麗なんですもの。私より彼女の方が良かったのかと…」
「それはありません。殿下はミリュエンヌ様にベタ惚れですので」
(そうなんだ)
二人の話を聞いてわかったことは、ミリュエンヌ様はアルフィリード殿下の婚約者で、海を隔てた隣国のお姫様だってこと。
大切な客人とは彼女のことだったらしい。
「あなた、リシアというのね。私はミリュエンヌ・サルレイド=クルス。婚約者のいる者同士仲良くしましょうね」
笑って自己紹介をしてくれた高貴なる姫君。
つられて笑顔を浮かべながらぺこりとお辞儀をした。
「よろしくと…返してくれないの?」
「……」
「ミリュエンヌ様。彼女は声が出ません」
「そうなの?!ごめんなさい。私、知らなくて」
途端暗い顔に戻ってしまった。笑顔を取り戻すにはどうしたらいいのか…
『気にしないでください。アルフィリード殿下付きの侍女をしております。リシアです。よろしくおねがします』
無作法かもしれないと思いながら、メモ帳に言いたいことを書いて渡した。
これしか伝える方法はない。
すると、満面の笑みを浮かべて抱きしめられてしまう。
いきなりのことに踏ん張りがきかず、ミリュエンヌ様と一緒に後ろに倒れた。
それがなんだかおかしくて、顔を見合わせたとたん二人で笑ってしまった。
その様子をサイスは半ば呆れた表情で見ていたが、私たちは気づかないのだった。
入り口を固めていた衛兵は泣いているミリュエンヌ様に驚き、さらに彼女を抱いているサイスに驚いた。
しかし、深くは追求せずに扉を開けたのだった。
部屋に入りサイスはミリュエンヌ様をソファーに座らせた。
その間お茶でも入れられたらよかったのだが、私は一人で出歩けない。菓子やお茶の用意ができないのだ。
せめてもと、据え置きの水差しから水を持っていく。
「リシア。ありがとう」
ふるふる
気にしないでほしいという意味で首を横に振る。
サイズは受け取った水をミリュエンヌ様に渡して落ち着くのを待った。
次第に落ち着いてきたミリュエンヌ様。
彼女は涙目で私を見あげてきた。
「あなたは…アルの恋人なのでしょう?」
「……?」
なんのことだかさっぱりわからない。
心のままに首をかしげてしまう。
それでも彼女は納得しないのか、波目で睨む。
困った私はサイスに視線を送った。
「ミリュエンヌ様。彼女は殿下の恋人ではありません」
「サイス!嘘をつかないでよ!!恋人でないものが彼の側にいるはずないじゃない!!」
そしてまた大泣きをしてしまう。
これでは説明を聞いてくれるのかわからない。
「リシア。抗議は後で聞くから今は許せ」
サイスは私にだけ聞こえる声で言ってから、ミリュエンヌ様に話しかける。
「ミリュエンヌ様。嘘ではありません。何故なら彼女は私の婚約者なのですから」
「!?!?!??」
その言葉でピタリと泣くのをやめたのは、ミリュエンヌ様。
私は別の意味で固まってしまった。
「ホント?」
「はい。間違いございません。リシア」
(ここで頷かなかったら、また泣き出しそう…)
そんな事実はもちろんないけど、私は頷いた。
すると、花が綻ぶように笑顔になった。
ものすごく眩しい。
「おわかりいただけたようで何よりです」
「ええ。私も安心したわ。だって、彼女とっても綺麗なんですもの。私より彼女の方が良かったのかと…」
「それはありません。殿下はミリュエンヌ様にベタ惚れですので」
(そうなんだ)
二人の話を聞いてわかったことは、ミリュエンヌ様はアルフィリード殿下の婚約者で、海を隔てた隣国のお姫様だってこと。
大切な客人とは彼女のことだったらしい。
「あなた、リシアというのね。私はミリュエンヌ・サルレイド=クルス。婚約者のいる者同士仲良くしましょうね」
笑って自己紹介をしてくれた高貴なる姫君。
つられて笑顔を浮かべながらぺこりとお辞儀をした。
「よろしくと…返してくれないの?」
「……」
「ミリュエンヌ様。彼女は声が出ません」
「そうなの?!ごめんなさい。私、知らなくて」
途端暗い顔に戻ってしまった。笑顔を取り戻すにはどうしたらいいのか…
『気にしないでください。アルフィリード殿下付きの侍女をしております。リシアです。よろしくおねがします』
無作法かもしれないと思いながら、メモ帳に言いたいことを書いて渡した。
これしか伝える方法はない。
すると、満面の笑みを浮かべて抱きしめられてしまう。
いきなりのことに踏ん張りがきかず、ミリュエンヌ様と一緒に後ろに倒れた。
それがなんだかおかしくて、顔を見合わせたとたん二人で笑ってしまった。
その様子をサイスは半ば呆れた表情で見ていたが、私たちは気づかないのだった。
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