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第3章 姫(?)からメイドになりました
おやすみ…(3日目)
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すっきりとした目覚め…少しだけぼんやりしているのは寝すぎたからだろうか。
目が覚めると朝だった。
白く柔らかな日差しが奥の窓から入ってきているのが見えた。
ふと、右手から何かが動く感じがした。
不思議に思い視線を向けると…
(サイスさん!?)
ベッドに上半身を突っ伏したまま寝ているサイスがいた。
本当なら悲鳴を上げてしまうところなのだろうけど、声がでない。
何故いるのかとパニックになって飛び起きると、サイスはその振動で目が覚めたのか顔を上げた。
「リシア…起きたのか。おはよう」
いつもと変わらない態度で挨拶をされて、思わず驚いた表情のまま頷いて返事をする。
「どうしてここにいるのか…という顔だが、とりあえず自分の右手で握っているものを見てみろ」
そう言われて右手の先をたどると、私はサイスのシャツの裾をしっかり握っていた。
「軽く握っている程度なら外せたかもしれないが、そこまでしっかり握られてはどうしようもない。休まなくてはいけないやつを起こすわけにはいかないからな」
つまるところ…原因は自分にあった。
サイスは気を使ってくれただけだった。
自分の行動に反省していると、サイスはおもむろに手を伸ばしてきた。
びっくりしてのけぞるが、サイズは手を引くことなく首筋に触れてくる。
「顔色はいいし、熱も下がっているな。他に不調はないか?」
頭は痛くないし、食欲もある。体が重く感じる事もない。
首を横に振ると、サイスは一つ頷いた。
「一応今日いっぱいはこの部屋で休んでいろ」
その言葉にポカンとしてしまう。
結局昨日は一日中ベッドにいた。
だから、仕事はしていないし、礼儀作法も学べていない。
というか、私は1日しかまだやっていない。
どうにかして学ぶことはできないかと考えていると、その思考を見透かしたのかサイスは…
「俺も今日はここにいるつもりだ。何かあれば手を叩くなりして知らせろ。体に障らないことならば叶えてやるから」
サイスがいるということは、こっそり仕事をすることもできないようだ。
教えてもらうのがとっても楽しみだったから、残念に思えてしまう。
でも、サイスが心配をしてくれているのがわかるから何も言えなかった。
俯いているとサイスはくしゃりと頭を撫でる。
温かくて優しい手は私を傷つけない。
「焦ることはない。母上もレナードもリシアの体調が悪いと聞いた時、心配していたんだ。病み上がりでまたぶり返してはもっと心配するだろう。もちろん、俺だってそんなことを望んでいない」
優しい声が頭上から聞こえる。
私は…海の中ではいっつも焦っていた気がする。
早くいろんなことを知って、身を守らなきゃとそればかり…。
でも…
【焦ることはない】
それは安心する魔法の言葉だった。
サイスは私を見ていろんな言葉をくれる。
それが私は涙が出るほど嬉しかった。
その日、サイスは(体を拭かれるときやお手洗いなどはもちろん別だったけど)本当に一日中一緒にいてくれた。
お茶を持ってきてくれたり、退屈しないように本を渡してくれたり。
雇われているはずなのに、なんだか忘れてしまいそうだった。
目が覚めると朝だった。
白く柔らかな日差しが奥の窓から入ってきているのが見えた。
ふと、右手から何かが動く感じがした。
不思議に思い視線を向けると…
(サイスさん!?)
ベッドに上半身を突っ伏したまま寝ているサイスがいた。
本当なら悲鳴を上げてしまうところなのだろうけど、声がでない。
何故いるのかとパニックになって飛び起きると、サイスはその振動で目が覚めたのか顔を上げた。
「リシア…起きたのか。おはよう」
いつもと変わらない態度で挨拶をされて、思わず驚いた表情のまま頷いて返事をする。
「どうしてここにいるのか…という顔だが、とりあえず自分の右手で握っているものを見てみろ」
そう言われて右手の先をたどると、私はサイスのシャツの裾をしっかり握っていた。
「軽く握っている程度なら外せたかもしれないが、そこまでしっかり握られてはどうしようもない。休まなくてはいけないやつを起こすわけにはいかないからな」
つまるところ…原因は自分にあった。
サイスは気を使ってくれただけだった。
自分の行動に反省していると、サイスはおもむろに手を伸ばしてきた。
びっくりしてのけぞるが、サイズは手を引くことなく首筋に触れてくる。
「顔色はいいし、熱も下がっているな。他に不調はないか?」
頭は痛くないし、食欲もある。体が重く感じる事もない。
首を横に振ると、サイスは一つ頷いた。
「一応今日いっぱいはこの部屋で休んでいろ」
その言葉にポカンとしてしまう。
結局昨日は一日中ベッドにいた。
だから、仕事はしていないし、礼儀作法も学べていない。
というか、私は1日しかまだやっていない。
どうにかして学ぶことはできないかと考えていると、その思考を見透かしたのかサイスは…
「俺も今日はここにいるつもりだ。何かあれば手を叩くなりして知らせろ。体に障らないことならば叶えてやるから」
サイスがいるということは、こっそり仕事をすることもできないようだ。
教えてもらうのがとっても楽しみだったから、残念に思えてしまう。
でも、サイスが心配をしてくれているのがわかるから何も言えなかった。
俯いているとサイスはくしゃりと頭を撫でる。
温かくて優しい手は私を傷つけない。
「焦ることはない。母上もレナードもリシアの体調が悪いと聞いた時、心配していたんだ。病み上がりでまたぶり返してはもっと心配するだろう。もちろん、俺だってそんなことを望んでいない」
優しい声が頭上から聞こえる。
私は…海の中ではいっつも焦っていた気がする。
早くいろんなことを知って、身を守らなきゃとそればかり…。
でも…
【焦ることはない】
それは安心する魔法の言葉だった。
サイスは私を見ていろんな言葉をくれる。
それが私は涙が出るほど嬉しかった。
その日、サイスは(体を拭かれるときやお手洗いなどはもちろん別だったけど)本当に一日中一緒にいてくれた。
お茶を持ってきてくれたり、退屈しないように本を渡してくれたり。
雇われているはずなのに、なんだか忘れてしまいそうだった。
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