地球を守れ-Save The Earth-

夏目碧央

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告白

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 碧央:「俺、1つだけやり残したことがある。このままじゃ、後悔する。死にきれ
  ない。」
瑠偉:「碧央くん?」
碧央:「俺、お前の事が・・・好きなんだ。」
瑠偉:「え?それ、どういう・・・?」
碧央:「友情とか、そういうんじゃない。マジで、惚れてるんだ、お前に。」
瑠偉:「え・・・。うそっ。うそー!」
  瑠偉は後ろにひっくり返った。
碧央:「驚きすぎだろ。俺、けっこう分かり安く態度に出してただろ?他のメンバー
  よりもボディタッチ多めだったし、ふざけてほっぺにチューした事だってある
  し。」
瑠偉:「そ、それは、フェローサービスだと思ってたよ。だって、ステージの上と
  か、カメラが回っている時だけだったじゃん。それ以外の時は、全然そういう事
  しないから。」
   ここで説明しておこう。男性アイドルグループのファン心理の1つに、「どっ
  かの女に取られるくらいなら、メンバー同士でくっついて欲しい」というのがあ
  る。特に、顔の美しいメンバー同士が仲良くしているのを見るのは、とても嬉し
  いものなのである。よって、碧央と瑠偉が密着すると、大きな歓声が上がる。彼
  らがファンサービスとして、イチャイチャするのはごく自然な事なのである。
碧央:「それはまあ、フェローサービスにかこつけてたっていうか。」
瑠偉:「分かりにくいよ!」
  そこで、碧央が黙って瑠偉を見た。
瑠偉:「昔・・・高校生の時、碧央くんがうちに来るかって言ってくれたでしょ。あ
  の時に思ったんだ。俺、この人の為なら死ねるって。今でもそう。だから、好き
  なんてレベルじゃない。これはもう、愛だよ。俺は、碧央くんを愛してるよ。」
碧央:「大げさだなぁ。だいたい、うちに来るかって言ったのは、下心があったから
  だし。」
  碧央はそう言いながら、瑠偉に顔を近づけていった。瑠偉は全く動かない。
碧央:「瑠偉、キスしていい?」
瑠偉:「碧央くんが望むなら、どうぞ。」
  瑠偉が穏やかにそう言った。だが、碧央は動きを止めた。そして、離れた。
碧央:「なーんだ、俺、振られたのか。俺が望むならって・・・。そりゃあ、俺の為
  に死ねるくらいなんだから、キスくらい出来るだろうけどさ・・・。」
  最後はごにょごにょと濁しながらそう言った。すると、瑠偉は碧央の首をがしっ
  と掴んだ。碧央が振り向くと、瑠偉は顔を近づけ、唇を重ねた。
   今まで、寸止めなら何十回、いや、もしかしたら何百回とやってきた。ファン
  サービスにかこつけて。だが、本当に唇を重ねたのは、これが初めてだった。
碧央:「瑠偉・・・。」
瑠偉:「碧央くんを振る人なんて、この世界にいるの?」
碧央:「俺を振ることができるのは、お前だけだ。」
瑠偉:「愛してるって言ったでしょ。」
  そうして、もう一度キスをした。
瑠偉:「よし!俄然やる気出た。こうなったら、絶対に死ねないな。」
碧央:「あれ、俺の為に死ねるとか言ってなかったか?」
  碧央が笑って言うと、
瑠偉:「碧央くんの為なら死ねるよ。」
碧央:「お前に死なれたら俺が困るんだよ。たとえ俺が死んでも、お前は生きろ。」
瑠偉:「俺、永遠に片想いだと思っていたから、どっかに自滅願望があったんだと思
  う。でも、両想いだと分かったからには、死ぬわけには行かないぜ。メンバー全
  員、生きてこの島から出る!そうと決まったら、サクサクッと火文字作ろう!」
  瑠偉は、いつも少し達観したところがあって、年下のくせにやけに大人びて見え
  る時があったが、今はすっかりはしゃいで、まるで子供のようだ。碧央は微笑ん
  だ。
碧央:「よし!作ろう!」
  2人はSTEの文字を作っていた場所に戻り、作業を続けた。
瑠偉:「これさ、たぶん火を起こして、次々に移していくのが大変だよね。何か燃え
  やすい物を加えたら早いと思うんだけど。」
  そう言って、ズボンのポケットに手を入れた瑠偉は、指先に触れた物にハッとし
  た。
瑠偉:「これだ!マイク!」
  イヤホンとヘッドマイクがポケットに入っていた。上着は既に脱ぎ捨てていたの
  で、ズボンのポケットに入っていて良かった。
碧央:「マイク?」
瑠偉:「そう。この中身をそれぞれに入れれば、きっと良く燃えるでしょ。」
  瑠偉はそう言うと、石を探し、ヘッドマイクを叩いて壊した。暗いので、何がど
  れだかよく分からないが、適当に部品をそれぞれの組まれた木の上に落とした。
軍人:「いたぞ!」
碧央:「やばい!瑠偉、逃げるぞ!」
軍人:「止まれ!止まらないと撃つぞ!」
  碧央と瑠偉は、手を繋いで走り出した。
   ―パンパン!
瑠偉:「あ!碧央くん!」
  手が離れ、碧央が倒れた。勢いで数歩先まで走って行った瑠偉は、戻って来た。
碧央:「うわっ・・・ぐっ・・・足を撃たれたみたいだ。瑠偉、お前は行け!」
瑠偉:「嫌だよ!」
  そう言って、瑠偉は碧央を起こそうとした。
碧央:「2人とも捕まっちまうよ。そうしたら、あそこに戻されて終わりだ。お前は逃げて、助けを呼べ!火を起こせ!早く!」
  碧央に手を払われて、瑠偉は一瞬迷ったが、
瑠偉:「分かった。絶対に火文字、成功させるから!」
  瑠偉は走り出した。
瑠偉:「大丈夫、みんなもいるし、あいつらだって俺たちのパフォーマンスを見て喜
  んでたし、碧央くんを死なせたりはしない。大丈夫だ、大丈夫。」
  瑠偉は自分に何度もそう言い聞かせ、走り続けた。
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