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幼なじみ
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午後から雨が降り出した。部活は室内での筋トレで、短めに終わった。特に片付けもないので、僕たちマネージャーも選手と同時に解散だった。
「瀬那、傘持ってる?」
遼悠がそう聞いてきた。
「持ってる。」
「今日はお前の家まで行くから、傘に入れてくれ。」
「は?」
と言うことで、今日は一駅先まで歩かず、遼悠が僕の家の前まで行く事になった。僕らは相合い傘をして、僕の家の最寄り駅から一緒に歩いた。なんでこうなってるんだか。
「瀬那。」
「ん?」
「お前、誤解してるよ。」
「何が?」
「あいつ、穂高の事。」
「・・・。」
言葉を失った。
「ちょっとお前をからかっただけだから。」
「え?」
「別に、あいつの事なんて何とも思ってないから。」
何となく、二人して足を止めた。そして、しばらくの間見つめ合った。
「お前・・・もしかして、俺の事好きになったの?」
遼悠がそう聞いてきた。わかんない、わかんないよ。僕が答えずにいると、遼悠は傘を持っていない方の手を僕の腰に回した。僕がその手に気を取られて視線を外すと、
「キス、していいか?」
などと、言ってきた。こんなところで、ダメに決まっている。いや、そうじゃなくて、どこでも、ダメなのに、ダメだって思っているのに、
「いいよ。」
なぜか、そう答えていた。
雨の音が回りの音をかき消す。遼悠は僕の腰をぐっと引き寄せ、キスをした。僕のまつげが、手が、胸が、震える。
なぜだろう。嬉しいという気持ちがわき上がる。遼悠は、まだ僕の事が好きなんだ。穂高ではなく、僕の事が好き。それが嬉しくて・・・。
「あれ、瀬那じゃね?」
いきなり声を掛けられて、飛び上がるほど驚いた。顔の前に傘があって、声を掛けてきた人物は足しか見えなかった。傘を持っていた遼悠が傘を上げたので、相手の顔が見えた。
「和宏?」
宮部和宏(みやべ かずひろ)だった。小、中と同じ学校で、野球仲間だった。っていうか、今の見られたのか?キスしてたとこ?えー!!いやいや、傘で顔は隠れていたはずだけど・・・だったらどうして僕だって分かったって言うんだよ!
僕は混乱して、二の句が継げずにいると、和宏は、
「やっぱり瀬那だよな。お前の坊主じゃない顔初めて見たよ、アハハハ。」
「わ、笑うなよ。」
僕はいろいろあって、顔が熱くなった。たぶん赤面しているだろう。
「アハハハ、ハ、あ?あれ、戸田遼悠?そうだよね?」
和宏は、一緒にいた遼悠の顔を見て、笑いを引っ込め、遼悠を指さしてそう言った。指さしなんて、ちょっと失礼な感じなので、遼悠はむすっとしている。だが、
「そうだけど。」
と、答えた。
「うわあ、初めまして!宮部って言います。よろしく。」
和宏はそう言って、傘を持ち替え、右手を差し出して来た。握手を求めているのだ。元々左手で傘を持っていた遼悠は、右手を出して握手をしてやった。
「和宏、なんで遼悠を知ってるの?」
「お前バカか。彼ほどの有名なピッチャーを知らずして、東京で野球やってるなんて言ったらモグリだぜ。」
「あ、そっか。つまり、和宏は今も野球続けてるんだね?」
「ああ、一応な。瀬那は、髪を伸ばしてるって事は、マネージャーになったっていう話は本当なんだな?」
「うん。って、それも知ってるの?」
「ああ。中学の野球部仲間の間では有名だぜ。お前テレビに映ったしな。」
そうでした。マネージャーが男子っていうのも珍しいし。
「しっかし、久しぶりだなあ。ずいぶんイケメンになっちゃって。でも、坊主頭も可愛かったんだけどなぁ。」
和宏がそう言って目を細める。すると、隣の遼悠が咳払いをした。遼悠を見ると、遼悠は僕の事をじーっと見ている。
「あ、えーと、小中と同じ学校で野球仲間だった宮部和宏。」
遅ればせながら、和宏を紹介した。
「幼なじみか。」
「そう、だね。」
遼悠は和宏を見た。ちょっとちょっと、そんな挑戦的な目をして見たら、変に思われるぞ。
「それで、よく僕が分かったね。」
場の空気を変える為でもあるが、キスを見られたのかどうか心配で、恐る恐る聞いてみた。見られていたらどう言い訳するんだ?
「そのキーホルダーだよ。」
和宏はそう言って、僕のリュックに付いているキーホルダーを指さした。
そうだった。僕の通学リュックには、キーホルダーが付けてあった。そのキーホルダーは、中学を卒業する時に部の後輩達からプレゼントしてもらったもので、野球のボールの形をしている。そこにイニシャルが印字してあるのだ。和宏ももちろん同じ物を持っている。
そうか、これを見て僕だって分かったのか。顔を見られたわけではないのか。とりあえずホッとしたけれど、けっこう二人でくっついてたし、怪しいよなぁ。
「じゃ、お二人さんのお邪魔をしても何だから、俺は帰るわ。」
そう言って、和宏はニヤニヤしている。
「エースとマネージャーかぁ、なるほどねえ。」
などと、変な事を言っている。
「な、何だよ。」
「瀬那、今夜電話していい?」
「え?あ、うん、いいけど。」
「じゃ、また今夜!」
そう言うと、和宏は去って行った。今夜電話してくるだって?一体何を聞かれるやら。
「電話・・・。」
遼悠がそうつぶやいた。顔を見ると、すっごく険しい表情をしていた。
「あの・・・。」
「で、瀬那は俺の事が好きになったのか?」
「うっ。」
その質問、戻ってきたか!分からないのに!
「そっか、キスOKしたって事は、好きって事だよな?」
遼悠がたたみかける。ああ、そうなのか?僕、こいつの事が好きなのか?
「お前が俺を好きになってくれないなら、俺は穂高を好きになっちゃおうかなー。それでもいいのか?」
などと言うものだから、僕は思わず遼悠にしがみついた。
「・・・やだ。」
「ふっ。くー、たまらんな、こりゃ。」
遼悠は、そんならしくない事をつぶやくと、片手で僕の背中をぎゅっと抱いたのだった。
「瀬那、傘持ってる?」
遼悠がそう聞いてきた。
「持ってる。」
「今日はお前の家まで行くから、傘に入れてくれ。」
「は?」
と言うことで、今日は一駅先まで歩かず、遼悠が僕の家の前まで行く事になった。僕らは相合い傘をして、僕の家の最寄り駅から一緒に歩いた。なんでこうなってるんだか。
「瀬那。」
「ん?」
「お前、誤解してるよ。」
「何が?」
「あいつ、穂高の事。」
「・・・。」
言葉を失った。
「ちょっとお前をからかっただけだから。」
「え?」
「別に、あいつの事なんて何とも思ってないから。」
何となく、二人して足を止めた。そして、しばらくの間見つめ合った。
「お前・・・もしかして、俺の事好きになったの?」
遼悠がそう聞いてきた。わかんない、わかんないよ。僕が答えずにいると、遼悠は傘を持っていない方の手を僕の腰に回した。僕がその手に気を取られて視線を外すと、
「キス、していいか?」
などと、言ってきた。こんなところで、ダメに決まっている。いや、そうじゃなくて、どこでも、ダメなのに、ダメだって思っているのに、
「いいよ。」
なぜか、そう答えていた。
雨の音が回りの音をかき消す。遼悠は僕の腰をぐっと引き寄せ、キスをした。僕のまつげが、手が、胸が、震える。
なぜだろう。嬉しいという気持ちがわき上がる。遼悠は、まだ僕の事が好きなんだ。穂高ではなく、僕の事が好き。それが嬉しくて・・・。
「あれ、瀬那じゃね?」
いきなり声を掛けられて、飛び上がるほど驚いた。顔の前に傘があって、声を掛けてきた人物は足しか見えなかった。傘を持っていた遼悠が傘を上げたので、相手の顔が見えた。
「和宏?」
宮部和宏(みやべ かずひろ)だった。小、中と同じ学校で、野球仲間だった。っていうか、今の見られたのか?キスしてたとこ?えー!!いやいや、傘で顔は隠れていたはずだけど・・・だったらどうして僕だって分かったって言うんだよ!
僕は混乱して、二の句が継げずにいると、和宏は、
「やっぱり瀬那だよな。お前の坊主じゃない顔初めて見たよ、アハハハ。」
「わ、笑うなよ。」
僕はいろいろあって、顔が熱くなった。たぶん赤面しているだろう。
「アハハハ、ハ、あ?あれ、戸田遼悠?そうだよね?」
和宏は、一緒にいた遼悠の顔を見て、笑いを引っ込め、遼悠を指さしてそう言った。指さしなんて、ちょっと失礼な感じなので、遼悠はむすっとしている。だが、
「そうだけど。」
と、答えた。
「うわあ、初めまして!宮部って言います。よろしく。」
和宏はそう言って、傘を持ち替え、右手を差し出して来た。握手を求めているのだ。元々左手で傘を持っていた遼悠は、右手を出して握手をしてやった。
「和宏、なんで遼悠を知ってるの?」
「お前バカか。彼ほどの有名なピッチャーを知らずして、東京で野球やってるなんて言ったらモグリだぜ。」
「あ、そっか。つまり、和宏は今も野球続けてるんだね?」
「ああ、一応な。瀬那は、髪を伸ばしてるって事は、マネージャーになったっていう話は本当なんだな?」
「うん。って、それも知ってるの?」
「ああ。中学の野球部仲間の間では有名だぜ。お前テレビに映ったしな。」
そうでした。マネージャーが男子っていうのも珍しいし。
「しっかし、久しぶりだなあ。ずいぶんイケメンになっちゃって。でも、坊主頭も可愛かったんだけどなぁ。」
和宏がそう言って目を細める。すると、隣の遼悠が咳払いをした。遼悠を見ると、遼悠は僕の事をじーっと見ている。
「あ、えーと、小中と同じ学校で野球仲間だった宮部和宏。」
遅ればせながら、和宏を紹介した。
「幼なじみか。」
「そう、だね。」
遼悠は和宏を見た。ちょっとちょっと、そんな挑戦的な目をして見たら、変に思われるぞ。
「それで、よく僕が分かったね。」
場の空気を変える為でもあるが、キスを見られたのかどうか心配で、恐る恐る聞いてみた。見られていたらどう言い訳するんだ?
「そのキーホルダーだよ。」
和宏はそう言って、僕のリュックに付いているキーホルダーを指さした。
そうだった。僕の通学リュックには、キーホルダーが付けてあった。そのキーホルダーは、中学を卒業する時に部の後輩達からプレゼントしてもらったもので、野球のボールの形をしている。そこにイニシャルが印字してあるのだ。和宏ももちろん同じ物を持っている。
そうか、これを見て僕だって分かったのか。顔を見られたわけではないのか。とりあえずホッとしたけれど、けっこう二人でくっついてたし、怪しいよなぁ。
「じゃ、お二人さんのお邪魔をしても何だから、俺は帰るわ。」
そう言って、和宏はニヤニヤしている。
「エースとマネージャーかぁ、なるほどねえ。」
などと、変な事を言っている。
「な、何だよ。」
「瀬那、今夜電話していい?」
「え?あ、うん、いいけど。」
「じゃ、また今夜!」
そう言うと、和宏は去って行った。今夜電話してくるだって?一体何を聞かれるやら。
「電話・・・。」
遼悠がそうつぶやいた。顔を見ると、すっごく険しい表情をしていた。
「あの・・・。」
「で、瀬那は俺の事が好きになったのか?」
「うっ。」
その質問、戻ってきたか!分からないのに!
「そっか、キスOKしたって事は、好きって事だよな?」
遼悠がたたみかける。ああ、そうなのか?僕、こいつの事が好きなのか?
「お前が俺を好きになってくれないなら、俺は穂高を好きになっちゃおうかなー。それでもいいのか?」
などと言うものだから、僕は思わず遼悠にしがみついた。
「・・・やだ。」
「ふっ。くー、たまらんな、こりゃ。」
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