上 下
2 / 30

絶対に一軍に入ってやる!

しおりを挟む
 3年生が引退し、1、2年生だけとなった我が東尾学園野球部。新たに一軍と二軍に再編された。一軍二軍は部員の間での通称だ。本当はAチームBチームという。
「Aチームメンバーを発表する。」
顧問の小野寺先生が、メンバー表を見ながらそう言った。ミーティングルーム内である。場内は静まり返った。
「角谷、戸田、関口、吉田・・・。」
ガックシ。やっぱり僕の名前は呼ばれなかった。
「瀬那、お前は辞めないよな?」
僕の肩に手をかけ、清水道男がそう言った。
「もちろん、辞めないよ。来年までには絶対一軍に入るんだから。」
僕は拳を握りしめて、目をつり上げてそう言った。
「あはははは。頼もしいな。俺ももうちょっと頑張ってみようかな。」
清水はどこか寂しげに笑いながらそう言った。
 一軍に入れなかった2年生は、ごっそり退部する。ここで持ち堪えても3年生になる時にまたごっそり辞めるのだ。
 僕は諦めないぞ!・・・とはいえ、自信があるわけではない。
 小さい頃からずっと野球をやってきて、周りよりも上手い方だった。でも、名門校に入ってみると皆すごいやつばかり。ガッツだけは誰にも負けないつもりだったけど、ここへ来たらガッツのあるやつばかりだし。
 才能のあるやつはいいよな。戸田とか。

 僕はガッツを見せるため、練習はもちろんのこと、後始末も人一倍頑張った。グラウンド整備やボール磨き、用具の片付けなど。
「おお、瀬那、精が出るな。」
ボールを布でせっせと磨いていると、田北監督から声をかけられた。
「ハイ!」
嬉しくなって声のトーンも上がる。
 田北監督は厳しい練習をさせる人で有名だけど、部員に下の名前で呼びかける、気さくな人だった。練習着の背中にローマ字で名前が入っているので、全員の名前を覚えているかどうかは不明だけれど。
 僕の背中には「AIZAWA SENA」と書いてある。清水の背中には「SHIMIZU MICHIO」だ。そして、戸田の背中には「TODA RYOYU」・・・あいつは関係なかった。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

『甘露歴程 …ハイチュウ、17世紀 アジアを平定す…』

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

好きな人の幸せを本当に願えますか?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:17

一万回転生した転生者が行く地球産ダンジョン攻略

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:278pt お気に入り:2

札幌真夜中カフェ ~天国へ導くハーブティー~

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:14

【完結】銀月揺れる、箱庭

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:11

突撃お嬢様は止まれない

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:37

アラサー女子、人情頼りでブラック上司から逃げきります!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:103

八百万の学校 其の参

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:391pt お気に入り:7

ひめさまはおうちにかえりたい

恋愛 / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:693

処理中です...