7 / 33
ロックとレイン
しおりを挟む
レインが貼り紙を手に初めてやって来た時、ロックは息が止まるかと思った。レインが、あまりに美しかったから。
「君がロック?この貼り紙を見て来たんだけど。」
レインはそう言った。
「あ、はい、僕がロックです。あなたは?」
「僕はレイン。料理が得意だよ。」
そう言ってニッコリ笑ったレインに、即座に恋に堕ちたロックだった。
レインは見た目の麗しさに似合わず、ずけずけと物を言うタイプだった。けれども、一番年上だからと言って、命令口調で物を言う事はなかった。特に、呼びかけ人のロックに対しては、リーダーだからと一目置いていた。
ただ、他のみんながロックと呼ぶのに、レインだけはロッキーと呼んだ。ロックはいつになっても、ロッキーと呼ばれると照れ笑いをするのだった。
ロックは毎日畑で仕事をした。雨の日は部屋で本を読んだり、異種配合の実験をしたりした。カフェが閉店した後には、毎日経理の仕事をした。帳簿を付けるのだ。そして、売り上げの動向を分析し、仕入れや作付けの計画を練った。
「ロッキー、毎日遅くまでお疲れ様。」
ロックが経理の仕事をしていると、店にレインが現れた。ロックはカフェ店内のテーブル席で帳簿を付けていたのだ。
「レインさん。」
ロックは顔を上げて微笑んだ。
「お茶でも入れるね。」
レインはそう言うと、カウンターの中に入った。ハーブティーの葉をポットに入れつつ、お湯を沸かす。そして、帳簿を付けているロックの方を、じっと見つめた。
ロックはふと顔を上げた。レインがじっとこちらを見ていたので、また息が止まるかと思った。
「はっ、な、なんですか?どうしたんですか、そんな、僕の方なんか見て。」
ドギマギしてそんな事を口走る。
「ん?いや、頑張ってるなーと思って。それに、真剣な顔をしてるロッキーは男前だなーと。」
余裕の笑顔で言うレイン。ロックは余りの事に表情を無くした。ロックの顔は元々シンプルである。端正だとも言えるが、どちらかと言うと地味なのである。
「あの、男前って何ですか?」
ロックがそう言うと、
「ああ、言葉が古すぎるか!」
レインが手を叩いて笑う。そのうちお湯が沸いて、レインはお湯をポットに入れた。カップを二つ出し、丁寧にハーブティーを注ぐ。
「入ったよ~。はい、ここに置くね。」
テーブルに二つのカップを運んできたレインは、一つをロックの前よりも少し端っこの方へ置いた。いや、置きかけた。
「あ、ありがとうございます!」
思わず自分の手を出して引き取ろうとしたロック。レインの指に、ロックの指が触れた。
「あっ!す、すみません!」
ロックはすぐに手を引っ込めた。カップはまだ数ミリ浮いていたので、ガタンとカップが揺れて、お茶がバシャッとこぼれた。
「あーあー、何やってるんだよ。あははは。ロッキーはドジだなぁ。」
レインは笑いながら布巾を取りに行き、戻ってきてテーブルを拭いた。
「手は?大丈夫?」
レインは、ロックの指を掴んで引き寄せた。
「えっ、あ、あの、大丈夫です。」
ロックが慌てているのを分かっているのかいないのか、レインはロックの指を確認し、
「うん、火傷はしてないみたいだね。」
と言って放した。そして、ロックの向かい側の椅子に座り、自分のお茶をすすりながら、じっとロックの顔を見る。ロックはカーッと顔が熱くなった。
「ほら、続きやって。」
レインは帳簿を指さす。
「あ、はい。」
酷である。
「君がロック?この貼り紙を見て来たんだけど。」
レインはそう言った。
「あ、はい、僕がロックです。あなたは?」
「僕はレイン。料理が得意だよ。」
そう言ってニッコリ笑ったレインに、即座に恋に堕ちたロックだった。
レインは見た目の麗しさに似合わず、ずけずけと物を言うタイプだった。けれども、一番年上だからと言って、命令口調で物を言う事はなかった。特に、呼びかけ人のロックに対しては、リーダーだからと一目置いていた。
ただ、他のみんながロックと呼ぶのに、レインだけはロッキーと呼んだ。ロックはいつになっても、ロッキーと呼ばれると照れ笑いをするのだった。
ロックは毎日畑で仕事をした。雨の日は部屋で本を読んだり、異種配合の実験をしたりした。カフェが閉店した後には、毎日経理の仕事をした。帳簿を付けるのだ。そして、売り上げの動向を分析し、仕入れや作付けの計画を練った。
「ロッキー、毎日遅くまでお疲れ様。」
ロックが経理の仕事をしていると、店にレインが現れた。ロックはカフェ店内のテーブル席で帳簿を付けていたのだ。
「レインさん。」
ロックは顔を上げて微笑んだ。
「お茶でも入れるね。」
レインはそう言うと、カウンターの中に入った。ハーブティーの葉をポットに入れつつ、お湯を沸かす。そして、帳簿を付けているロックの方を、じっと見つめた。
ロックはふと顔を上げた。レインがじっとこちらを見ていたので、また息が止まるかと思った。
「はっ、な、なんですか?どうしたんですか、そんな、僕の方なんか見て。」
ドギマギしてそんな事を口走る。
「ん?いや、頑張ってるなーと思って。それに、真剣な顔をしてるロッキーは男前だなーと。」
余裕の笑顔で言うレイン。ロックは余りの事に表情を無くした。ロックの顔は元々シンプルである。端正だとも言えるが、どちらかと言うと地味なのである。
「あの、男前って何ですか?」
ロックがそう言うと、
「ああ、言葉が古すぎるか!」
レインが手を叩いて笑う。そのうちお湯が沸いて、レインはお湯をポットに入れた。カップを二つ出し、丁寧にハーブティーを注ぐ。
「入ったよ~。はい、ここに置くね。」
テーブルに二つのカップを運んできたレインは、一つをロックの前よりも少し端っこの方へ置いた。いや、置きかけた。
「あ、ありがとうございます!」
思わず自分の手を出して引き取ろうとしたロック。レインの指に、ロックの指が触れた。
「あっ!す、すみません!」
ロックはすぐに手を引っ込めた。カップはまだ数ミリ浮いていたので、ガタンとカップが揺れて、お茶がバシャッとこぼれた。
「あーあー、何やってるんだよ。あははは。ロッキーはドジだなぁ。」
レインは笑いながら布巾を取りに行き、戻ってきてテーブルを拭いた。
「手は?大丈夫?」
レインは、ロックの指を掴んで引き寄せた。
「えっ、あ、あの、大丈夫です。」
ロックが慌てているのを分かっているのかいないのか、レインはロックの指を確認し、
「うん、火傷はしてないみたいだね。」
と言って放した。そして、ロックの向かい側の椅子に座り、自分のお茶をすすりながら、じっとロックの顔を見る。ロックはカーッと顔が熱くなった。
「ほら、続きやって。」
レインは帳簿を指さす。
「あ、はい。」
酷である。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる