6 / 33
メタルとシルク
しおりを挟む
シルクは細腰である。体の動きはしなやかだ。目も細い。流し目が色っぽい。サラサラした前髪が揺れ、視線を流せば、それを見た者全てを虜にすると言っても過言ではない。
シルクは接客担当である。カフェでは料理を客の前へ運ぶ。荒くれ軍人の手が、いたずらをする事もある。つまり、セクハラだ。
ある時、シルクが重たいお盆を持って料理を運んでいると、客の軍人の手が伸びて、シルクのお尻を触った。それは我慢したのだが、テーブルへお皿を並べていると、またその手が伸びてきて、尻をなで回した。
「止めてください。」
小さい声でシルクが言った。けれども、軍人はシルクの顔を見てニヤニヤするばかり。手をどけないのだ。
そこへ、メタルがやってきた。
「ちょっとお客さん、うちはそういう店じゃないんで。」
メタルが低くそう言ったので、シルクを触っていた軍人が
「あ?何だって?」
と、すごんでメタルの方を振り返った。しかし、メタルは湯気の出るほど熱々のミルクパンを持っていたので、軍人はさっと手を引っ込めたのだった。
何度かそういう事があった。シルクがセクハラを受けると、コーヒー担当のメタルは何かしら熱々の武器を持ってやってきて、
「うちはそういう店じゃないんで。」
と言ってシルクを助けてやるのだった。
ある夜、店の外でシルクがある軍人と抱き合ってキスをしていた。シルクがいないと思って探しに出たメタルが、店の外へ出てそれを見つけてしまった。
「なに・・・やってるんだ?」
驚愕したメタルがそう言うと、軍人はぴゅーっと逃げていってしまった。それを見送ったメタルは、
「あいつの事、好きなのか?」
と、シルクに聞いた。だが、シルクは首を横に振った。ここで逃げていくような相手は、どう見ても誠実じゃない。つまり、ちゃんとした恋人ではないのだ。
「ごめん、なさい。ちょっと・・・ああいう事に興味があって、それで、誘われたから・・・。」
シルクが声を絞り出す。恥ずかしくて顔から火が出そうだった。
「ちょっと来い。」
メタルはシルクの腕を掴んで、家の中に連れて行った。そして、シルクの部屋へと入っていった。シルクをベッドに座らせ、自分も隣に座る。
「お前はすごく魅力的だ。自分を安売りするな。勿体ない。」
メタルが言う。
「でも・・・。」
シルクが何か言いかけると、
「好きな人がいないなら、お前の事をちゃんと大事にしてくれる相手を探せ。」
と、メタルが言った。
「そんな人、いないよ。」
シルクが言うと、
「いるよ。俺、とか。」
と、メタルが言った。シルクは弾けるようにメタルの顔を見た。冷静な顔をしたメタル。冗談なのか本気なのか、判別出来ない。
「メタルさん?」
シルクは、メタルがいつも自分を守ってくれている事は、もちろんちゃんと分かっていた。けれども、それは仲間意識とか、家族愛とか、兄弟愛とか、そんな感じだと思っていた。それでも、いつもありがたいと思っていたし、助けてくれる度に、そんなメタルをカッコイイと思っていたシルクである。
シルクがじっとメタルの顔を見つめていると、メタルがおもむろにシルクの肩に手を置いた。そして、口づけた。
上唇、そして下唇を何度もハムハムされ、同時に背中をまさぐられる。そして、メタルの唇がシルクの首筋へと移動し、しっとりと口づけされる。首筋への口づけが繰り返されると、シルクの唇から吐息が漏れた。
「はぁ。あっ。」
ふっと後ろに倒れそうになるシルクを、ぐっと支えて引き寄せたメタルは、
「今日はここまで。」
と言った。
「え?ヤダ、もっと。」
シルクが甘えるように言うと、
「また、明日な。」
と、メタルが言った。それを聞いて、シルクの顔はパアっと華やいだ。
「うん。」
その笑顔を見たメタルは、珍しくふっと微笑んだ。そして、
「今日はもう寝なさい。」
と言って、トンとシルクの胸を押してベッドに倒し、シルクの体に掛け布団をかぶせた。
「お休み。」
メタルはシルクのおでこに口づけをし、立ち上がって部屋の出口へ向かった。扉を開け、振り返ると、シルクは既に小さな寝息を立てていた。それを見て、シルクはふっと笑って首を小さく横に振った。
シルクは接客担当である。カフェでは料理を客の前へ運ぶ。荒くれ軍人の手が、いたずらをする事もある。つまり、セクハラだ。
ある時、シルクが重たいお盆を持って料理を運んでいると、客の軍人の手が伸びて、シルクのお尻を触った。それは我慢したのだが、テーブルへお皿を並べていると、またその手が伸びてきて、尻をなで回した。
「止めてください。」
小さい声でシルクが言った。けれども、軍人はシルクの顔を見てニヤニヤするばかり。手をどけないのだ。
そこへ、メタルがやってきた。
「ちょっとお客さん、うちはそういう店じゃないんで。」
メタルが低くそう言ったので、シルクを触っていた軍人が
「あ?何だって?」
と、すごんでメタルの方を振り返った。しかし、メタルは湯気の出るほど熱々のミルクパンを持っていたので、軍人はさっと手を引っ込めたのだった。
何度かそういう事があった。シルクがセクハラを受けると、コーヒー担当のメタルは何かしら熱々の武器を持ってやってきて、
「うちはそういう店じゃないんで。」
と言ってシルクを助けてやるのだった。
ある夜、店の外でシルクがある軍人と抱き合ってキスをしていた。シルクがいないと思って探しに出たメタルが、店の外へ出てそれを見つけてしまった。
「なに・・・やってるんだ?」
驚愕したメタルがそう言うと、軍人はぴゅーっと逃げていってしまった。それを見送ったメタルは、
「あいつの事、好きなのか?」
と、シルクに聞いた。だが、シルクは首を横に振った。ここで逃げていくような相手は、どう見ても誠実じゃない。つまり、ちゃんとした恋人ではないのだ。
「ごめん、なさい。ちょっと・・・ああいう事に興味があって、それで、誘われたから・・・。」
シルクが声を絞り出す。恥ずかしくて顔から火が出そうだった。
「ちょっと来い。」
メタルはシルクの腕を掴んで、家の中に連れて行った。そして、シルクの部屋へと入っていった。シルクをベッドに座らせ、自分も隣に座る。
「お前はすごく魅力的だ。自分を安売りするな。勿体ない。」
メタルが言う。
「でも・・・。」
シルクが何か言いかけると、
「好きな人がいないなら、お前の事をちゃんと大事にしてくれる相手を探せ。」
と、メタルが言った。
「そんな人、いないよ。」
シルクが言うと、
「いるよ。俺、とか。」
と、メタルが言った。シルクは弾けるようにメタルの顔を見た。冷静な顔をしたメタル。冗談なのか本気なのか、判別出来ない。
「メタルさん?」
シルクは、メタルがいつも自分を守ってくれている事は、もちろんちゃんと分かっていた。けれども、それは仲間意識とか、家族愛とか、兄弟愛とか、そんな感じだと思っていた。それでも、いつもありがたいと思っていたし、助けてくれる度に、そんなメタルをカッコイイと思っていたシルクである。
シルクがじっとメタルの顔を見つめていると、メタルがおもむろにシルクの肩に手を置いた。そして、口づけた。
上唇、そして下唇を何度もハムハムされ、同時に背中をまさぐられる。そして、メタルの唇がシルクの首筋へと移動し、しっとりと口づけされる。首筋への口づけが繰り返されると、シルクの唇から吐息が漏れた。
「はぁ。あっ。」
ふっと後ろに倒れそうになるシルクを、ぐっと支えて引き寄せたメタルは、
「今日はここまで。」
と言った。
「え?ヤダ、もっと。」
シルクが甘えるように言うと、
「また、明日な。」
と、メタルが言った。それを聞いて、シルクの顔はパアっと華やいだ。
「うん。」
その笑顔を見たメタルは、珍しくふっと微笑んだ。そして、
「今日はもう寝なさい。」
と言って、トンとシルクの胸を押してベッドに倒し、シルクの体に掛け布団をかぶせた。
「お休み。」
メタルはシルクのおでこに口づけをし、立ち上がって部屋の出口へ向かった。扉を開け、振り返ると、シルクは既に小さな寝息を立てていた。それを見て、シルクはふっと笑って首を小さく横に振った。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる