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ダンスを観に行く
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次の週末、朝陽と里奈に会いに行けないか、と思案した。とにかく里奈の具合を尋ねてみよう。
「里奈の熱は下がったか?」
すると、里奈の写真と共に
「一応お医者さんに行ったけど、何でもなかった!もうすっかり元気だよ」
という返事が返って来た。
「週末、会いに行ってもいい?」
と、聞いてみた。すると、しばらく返事が返ってこなかった。やれやれ、ダメかと諦めかけたところへ、思ったよりも少し長い文章が送られてきた。
「実は、土曜日に舞台に出るんだけど、もしよかったら見に来る?」
それは見たい。ダンサー……実はそういうの、ものすごく好みだ。
「行きたい!絶対行く!」
と、食い気味に返した。するとまたしばらく間が空いて、
「あのさ、もし迷惑じゃなかったら……里奈を本番の間預かってもらえないかな。抱っこしていてくれるだけでいいんだけど」
と、返って来た。
「それは、里奈を抱っこしながら朝陽を観ればいいって事か?」
そう尋ねてみたら、そうだと言う。
「それなら問題なし!預かるよ」
そう返した。すぐに笑顔のスタンプが送られてきた。
土曜日。約束の時間に朝陽の部屋へ行った。
「祐作さん、ほんとごめん。いつも頼んでるベビーシッターさんが今日体調崩しててさ。どうしようって迷ってたんだ。ほんと、助かったよ。」
バタバタしながら、朝陽がそう言った。
「本当にお前、苦労人だな。」
思わずポツリと言ってしまった。
「はい、これとこれが荷物ね。それで、この抱っこバンドを……ちょっとサイズを緩めるか。うん、これでよし。どう?大丈夫そう?」
すっかり里奈を固定された。赤ん坊は温かい。
「あのさ、泣かれたらどうしたらいいのかな。俺、赤ん坊の扱いなんて分からないよ。」
何だか急に不安になった。この世で赤ん坊と2人きりのような錯覚に陥る。
「大丈夫。現場までは俺も一緒だし、リハーサルの時は俺も何とか出来るし。祐作さんが里奈と2人きりになるのは、本番の30分くらいの間だけだから。」
と、朝陽が言った。それなら、なぜ今から俺に抱っこさせるのかと疑問に思ったのだが、急に2人きりにされたら里奈がびっくりするから、今から慣らしておく方がいいという事だった。だが、もしかすると本番前に肩や腰に負担を掛けたくないからでは、という思いが湧いたのは、電車を乗り継ぎ、しばらく歩いた後の事だった。赤ん坊とはこんなに重いものなのか。最初はそうでもなかったが、時間が経つにつれ、肩が凝り、腰が痛くなってきたのだ。
「祐作さん、大丈夫?」
だが、そんな情けない事を言う訳にはいかない。
「全然平気さ。」
そう言って、里奈の頭を撫でた。
「里奈の熱は下がったか?」
すると、里奈の写真と共に
「一応お医者さんに行ったけど、何でもなかった!もうすっかり元気だよ」
という返事が返って来た。
「週末、会いに行ってもいい?」
と、聞いてみた。すると、しばらく返事が返ってこなかった。やれやれ、ダメかと諦めかけたところへ、思ったよりも少し長い文章が送られてきた。
「実は、土曜日に舞台に出るんだけど、もしよかったら見に来る?」
それは見たい。ダンサー……実はそういうの、ものすごく好みだ。
「行きたい!絶対行く!」
と、食い気味に返した。するとまたしばらく間が空いて、
「あのさ、もし迷惑じゃなかったら……里奈を本番の間預かってもらえないかな。抱っこしていてくれるだけでいいんだけど」
と、返って来た。
「それは、里奈を抱っこしながら朝陽を観ればいいって事か?」
そう尋ねてみたら、そうだと言う。
「それなら問題なし!預かるよ」
そう返した。すぐに笑顔のスタンプが送られてきた。
土曜日。約束の時間に朝陽の部屋へ行った。
「祐作さん、ほんとごめん。いつも頼んでるベビーシッターさんが今日体調崩しててさ。どうしようって迷ってたんだ。ほんと、助かったよ。」
バタバタしながら、朝陽がそう言った。
「本当にお前、苦労人だな。」
思わずポツリと言ってしまった。
「はい、これとこれが荷物ね。それで、この抱っこバンドを……ちょっとサイズを緩めるか。うん、これでよし。どう?大丈夫そう?」
すっかり里奈を固定された。赤ん坊は温かい。
「あのさ、泣かれたらどうしたらいいのかな。俺、赤ん坊の扱いなんて分からないよ。」
何だか急に不安になった。この世で赤ん坊と2人きりのような錯覚に陥る。
「大丈夫。現場までは俺も一緒だし、リハーサルの時は俺も何とか出来るし。祐作さんが里奈と2人きりになるのは、本番の30分くらいの間だけだから。」
と、朝陽が言った。それなら、なぜ今から俺に抱っこさせるのかと疑問に思ったのだが、急に2人きりにされたら里奈がびっくりするから、今から慣らしておく方がいいという事だった。だが、もしかすると本番前に肩や腰に負担を掛けたくないからでは、という思いが湧いたのは、電車を乗り継ぎ、しばらく歩いた後の事だった。赤ん坊とはこんなに重いものなのか。最初はそうでもなかったが、時間が経つにつれ、肩が凝り、腰が痛くなってきたのだ。
「祐作さん、大丈夫?」
だが、そんな情けない事を言う訳にはいかない。
「全然平気さ。」
そう言って、里奈の頭を撫でた。
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