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イレウス管

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 やっとゆっくり、次男から入院中の話を聞けたわけだが、親の知らぬところで色々と苦労したらしい。
 腸閉塞は、医学用語でイレウスと言う。腸の一部が閉塞し、そのせいで腸が膨張してお腹がパンパンに腫れている状態。腸が動かず、その状態で食べれば嘔吐するし、食べなくても胃が苦しくて吐き気がする。そして、お腹が非常に痛い。
 救急車で病院に運ばれて、まず痛み止めの点滴を打たれ、血液検査とレントゲン検査を受けた。痛み止めのお陰で激しい腹痛は治まった。
 血液検査の結果、腸に炎症が起きている事が分かり、レントゲン検査の結果、腸閉塞が起きている事が分かった。そして、胃腸の圧を抜くために、鼻から胃へ管を通すという処置をされた。
 右と左、どちらの鼻の孔がいいかと聞かれたそうだ。よく分からず、何となく左になったらしい。管を飲み込みながら胃へ入れていくのだが、唾を飲み込むのも痛いし、もちろん気持ち悪い。管を入れ終わってそのまま固定されたのだが、
(本当に、これで正解なのか?)
というくらい、辛い状態だったそうだ。あの、処置室から出てきて、げっそりとして笑顔が消えていた時だ。荷物をどうするかの会話をした時、そんな状態だったのか。
 その状態でベッドに寝かされた。右を向いていればまだ何とかなっていたものの、左を向いてしまったら、ものすごく気持ち悪くなって、マスクをした状態で吐いてしまったそうだ。
 口の中に吐しゃ物がある状態で、ナースコールを連打した。しかし、もう間に合わず、床に吐き出したそうだ。そうしたら、胃から管が飛び出し、口から出てきたと。なんと!瞬時にはどんな状態か想像がつかなかった。すると次男が話を続ける。
(あぅ!鼻から入れたものが口から出ている状態!)
慌てて鼻から管を引っ張り出したそうだ。すると先生が来て、
「やっぱりまだ吐き気があるわね。吐き気がある内はイレウス管が必要だね。」
と言う。
(違うだろぅ!管のせいで気持ち悪いんだ!)
と思ったが、またイレウスを通す処置をする事に。
 今度は右の鼻の孔から入れてもらう事にした。そうしたら、するすると入って行くではないか!もちろん気持ち悪いのだが、唾を飲み込んでも痛くない。これなら吐かずにいられそうだ、と思ったそうだ。
 つまり、次男の鼻の孔は、右の方が大きかったのだ。初めて知ったそうだ。これを知っていれば、最初から右に入れてもらったのに、と彼は悔やんだ。私もそんな事は知らなかったし、自分の鼻の孔の事さえも知らない。それにしても、ずいぶん辛かったのだな。
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