第二の人生への過渡期~初めて救急車を呼んだ出来事~

夏目碧央

文字の大きさ
上 下
16 / 41

着替えを届けに

しおりを挟む
 さあ、翌朝もゆっくりしてはいられない。次男の着替えを届けに行かなければならない。入院の際に言われた持ち物は、パンツとシャツと靴下、飲んでいた薬(もう飲まないと思ったが、飲むかもしれないから一応と言われた)、マスク、スマホの充電コードだった。忘れないように、夕べの内にそれらを積んでおいたが、入れ物を探すのは今日にしようと思っていた。
 朝、夫を起こすと、開口一番、
「病院から電話、無かったよね。」
という。え!何?そういえば、私のスマホは夜中には鳴らないようになっている。固定電話だと、寝ていたら気づけないかも?と不安になったが、
「無かったよね。」
夫が更に言う。無かったはず。無かったと思いたい。
 夫も心配なのだろう。確かに、容体が急変し……いや、病院で処置してもらったのだから、前より悪くなる事はないだろう。無い、無い。
 そこへ、次男からLINEが入った。
「イヤホンも持ってきて」
良かった、無事だ。
 諸々を、次男が昨日使っていた黒いリュックに入れた。このリュックを戻してあげた方がいいだろう。あの、頼りないナイロン巾着袋では気の毒だ。それとは別に、自分の赤いバッグも用意。財布とか病院の資料などを入れる。
 なるべく早く行ってあげたかったのだが、結局到着は11時頃になりそうだった。午前中には届けた方がいいだろうと、何とか急いだ結果だ。

 最寄り駅に着いて、地図アプリで駅から病院へのルートを表示させながら進む。今はこれがあるから楽勝だ、と思ったら大間違い。
 行きつ戻りつしながらも、何とか病院の近くまでは行けた。こんなに細い道を通るのか、という事もしばしば。そして、もうこのブロックの向こう側が病院だと分かっているのだが、ナビ通りに道が無い。
 行き止まりだよな、と思って、仕方がないから道のある方へ進む。しかし、いつまで経っても向こう側に渡る道が無いではないか。これは困った。戻る。いや待てよ。ナビは本当に間違えているのか?やっぱりナビ通りに行けるのではないか。そう思って行き止まりだけれどもナビが差す方へ行ってみると……なんと、人が1人通れるだけの「隙間」があった。道ではない。家と家の間の隙間。
 荷物があるから体をよじってその「隙間」を通り抜けると、私道のような人の家の庭のような所を少し歩き、道路に出た。すると、振り返ればそこが目指している病院だった。なーんだ、ナビは合っていたのか。だが、こんな狭い所を通らなくても、少しだけ大回りすれば楽に通れるではないか。コンピューターはこれだから。融通が利かないのだ。ひたすら「最短距離」を探すから。
 さて、一応予定通り11時頃に病院に到着した。昼間見る病院は、夜とは全然違う。夜は灯りが点いている「救急入り口」しか見えていなかったが、その隣の建物が少し立派で、駐車場も思ったよりも広かった。夕べは病院の正面がどこなのかも分からずに帰ってしまったのだが。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

先日、恋人が好きじゃなくなりました。

さとう たなか
エッセイ・ノンフィクション
同性の恋人にふられた作者が、相手に振られた直後PCやノートに打ち殴り書いた文章です。 なぜだか語り口調です。 記憶がないので理由が説明できません(笑) 最近、我を取り戻し見直してみた所、相当病んでいたのか、大量に文章があったので、これはもったいないなと、思ったのでメモとして残すことにしました。 相手の名前は伏せて、その時書いたものをそのままにしております。 情緒不安定でイタい仕上がりになっておりますがご了承ください。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

お笑い芸人ランキング Sランク・Sランク+編

採点!!なんでもランキング!!
エッセイ・ノンフィクション
お笑い芸人の能力値を項目毎にランク付けし、その実力を解説していきます。

リアル男子高校生の日常

しゅんきち
エッセイ・ノンフィクション
2024年高校に入学するしゅんの毎日の高校生活をのぞいてみるやつ。 ほぼ日記です!短いのもあればたまに長いのもだしてます。 2024年7月現在、軽いうつ状態です。 2024年4月8日からスタートします! 2027年3月31日完結予定です! たまに、話の最後に写真を載せます。 挿入写真が400枚までですので、400枚を過ぎると、古い投稿の挿入写真から削除します。[話自体は消えません]

命のボタン

倉澤 環(タマッキン)
エッセイ・ノンフィクション
糖尿病、人工透析、脊柱管狭窄症など病のデパートの彼の介護記録です。

ポケっこの独り言

ポケっこ
エッセイ・ノンフィクション
ポケっこです。 ここでは日常の不満とかを書くだけのものです。しょーもないですね。 俺の思ってることをそのまま書いたものです。 気まぐれ更新ですが、是非どうぞ。

処理中です...