6 / 41
社交性不安障害
しおりを挟む
次男はそのまま塾へ直行し、私は処方箋薬局へ寄った。2か月分の薬をもらったのだが、薬剤師さんが、
「下剤ですねー。」
と言う。びっくり。え、下剤?便秘気味か下痢気味か悩むような子に、下剤?少し不安になった。1日1回2錠だが、辛かったら1錠でもいいと言われた。3千円以上支払って、下剤をもらってきた。朝でも昼でも夜でも、忘れない時に食前に飲めばいいらしい。次男と話して、とりあえず朝に飲む事にした。
翌朝、朝食前にその下剤を飲んだ次男。やっぱり食後にお腹が痛くなり、制服を着たままソファに倒れた。また遅刻だ。それでも、10時半過ぎには何とか起き上がり、学校に行った。
「辛かったら帰って来るよ。」
と言いながら。その「帰って来る」が、すごく先の事になろうとは、この時には知る由もなかった。
次男が学校に行ってから、私は社交性不安障害について調べてみた。そうしたら、ようするに「あがり症」の事だった。なんだ、私からの遺伝ではないか。もっと、いつも何に対しても不安に思ってしまうという状態かと思った。社交性がつくと、人目を気にして自分を発揮できないという意味らしい。
そうか……私は薬があったなら、せめて就活の時には飲みたかったな、などと考えた。確かに、薬のせいで何かができるようになるのもちょっと癪だが、それでも生きづらさが薬で解消されるなら、いい事なのではないか。常用するのも私の目薬と一緒だし。
いや、でも。私の眼科の先生は、緑内障の治療を始める時に、
「でもねえ、始めたら75歳くらいまではずっと目薬をつけ続けなきゃいけないからね。負担もけっこうあるからね。」
と、薬代の負担の事まで考えてくれていたのだ。それを、あんな若いうちからずーっと常用するなんて。どれだけ薬代がかかるのやら。もし、将来定職に付けなかったりしたら、親がいなくなったら……なのに、ずっと喜んで使っている人もいますよ、なんて。
次男は、あのタッピングのおまじないを、全然信じてはいなかった。むしろ、マインドコントロールされないようにと警戒していたそうなのだ。先生を全然信じていないようだ。やっぱり薬を「喜んで」使っている人と言った事は、胡散臭いと思ったらしい。
逆に夫は、私が先生から聞いた話をすると、
「そうだよね、メガネと同じだと思えばいいんだよね。」
なんて言ってほだされている。確かに、他の薬と同じだと思えばいいのかもしれない。私も頭痛薬やら鉄剤やら、飲んだらすごく元気になって、もっと早く飲めば良かったと思う事も多い。それなら、抗うつ薬を飲んで楽になるなら、飲んでもいいのでは。
でも、お腹が痛くなるのと、あがり症なのとはほとんど関係ないと思うのだ。あがり症のせいでストレスが多くかかるのも確かだが、お腹が痛くなるストレスは、人前で話すとかよりも、土日に休めない事なのは明白だからだ。そこが、どうもあのかかりつけ医を信頼できない理由なのだ。次男がちゃんと言わないからかもしれないが、それこそあがり症の子にちゃんと言えというのは酷な話。私よりはずっとずっとマシで、次男本人も、お母さん(私)よりは自分の方がマシだと思っている。だから、それほど深刻に悩んではいない。私があれだけあがり症なのに、今まで生きて来られているから。そのせいで、表舞台に立つ人にはなっていないけれど、その代わりに物書きにはなっている。なっている?まあ、文章を書くのが得意にはなっている。
次男は言う。
「自分の特性だからさ、このままでいいと思うんだよ。人と同じじゃつまらないじゃん?人と違うなら、そのままでいいんだ。」
「下剤ですねー。」
と言う。びっくり。え、下剤?便秘気味か下痢気味か悩むような子に、下剤?少し不安になった。1日1回2錠だが、辛かったら1錠でもいいと言われた。3千円以上支払って、下剤をもらってきた。朝でも昼でも夜でも、忘れない時に食前に飲めばいいらしい。次男と話して、とりあえず朝に飲む事にした。
翌朝、朝食前にその下剤を飲んだ次男。やっぱり食後にお腹が痛くなり、制服を着たままソファに倒れた。また遅刻だ。それでも、10時半過ぎには何とか起き上がり、学校に行った。
「辛かったら帰って来るよ。」
と言いながら。その「帰って来る」が、すごく先の事になろうとは、この時には知る由もなかった。
次男が学校に行ってから、私は社交性不安障害について調べてみた。そうしたら、ようするに「あがり症」の事だった。なんだ、私からの遺伝ではないか。もっと、いつも何に対しても不安に思ってしまうという状態かと思った。社交性がつくと、人目を気にして自分を発揮できないという意味らしい。
そうか……私は薬があったなら、せめて就活の時には飲みたかったな、などと考えた。確かに、薬のせいで何かができるようになるのもちょっと癪だが、それでも生きづらさが薬で解消されるなら、いい事なのではないか。常用するのも私の目薬と一緒だし。
いや、でも。私の眼科の先生は、緑内障の治療を始める時に、
「でもねえ、始めたら75歳くらいまではずっと目薬をつけ続けなきゃいけないからね。負担もけっこうあるからね。」
と、薬代の負担の事まで考えてくれていたのだ。それを、あんな若いうちからずーっと常用するなんて。どれだけ薬代がかかるのやら。もし、将来定職に付けなかったりしたら、親がいなくなったら……なのに、ずっと喜んで使っている人もいますよ、なんて。
次男は、あのタッピングのおまじないを、全然信じてはいなかった。むしろ、マインドコントロールされないようにと警戒していたそうなのだ。先生を全然信じていないようだ。やっぱり薬を「喜んで」使っている人と言った事は、胡散臭いと思ったらしい。
逆に夫は、私が先生から聞いた話をすると、
「そうだよね、メガネと同じだと思えばいいんだよね。」
なんて言ってほだされている。確かに、他の薬と同じだと思えばいいのかもしれない。私も頭痛薬やら鉄剤やら、飲んだらすごく元気になって、もっと早く飲めば良かったと思う事も多い。それなら、抗うつ薬を飲んで楽になるなら、飲んでもいいのでは。
でも、お腹が痛くなるのと、あがり症なのとはほとんど関係ないと思うのだ。あがり症のせいでストレスが多くかかるのも確かだが、お腹が痛くなるストレスは、人前で話すとかよりも、土日に休めない事なのは明白だからだ。そこが、どうもあのかかりつけ医を信頼できない理由なのだ。次男がちゃんと言わないからかもしれないが、それこそあがり症の子にちゃんと言えというのは酷な話。私よりはずっとずっとマシで、次男本人も、お母さん(私)よりは自分の方がマシだと思っている。だから、それほど深刻に悩んではいない。私があれだけあがり症なのに、今まで生きて来られているから。そのせいで、表舞台に立つ人にはなっていないけれど、その代わりに物書きにはなっている。なっている?まあ、文章を書くのが得意にはなっている。
次男は言う。
「自分の特性だからさ、このままでいいと思うんだよ。人と同じじゃつまらないじゃん?人と違うなら、そのままでいいんだ。」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

先日、恋人が好きじゃなくなりました。
さとう たなか
エッセイ・ノンフィクション
同性の恋人にふられた作者が、相手に振られた直後PCやノートに打ち殴り書いた文章です。
なぜだか語り口調です。
記憶がないので理由が説明できません(笑)
最近、我を取り戻し見直してみた所、相当病んでいたのか、大量に文章があったので、これはもったいないなと、思ったのでメモとして残すことにしました。
相手の名前は伏せて、その時書いたものをそのままにしております。
情緒不安定でイタい仕上がりになっておりますがご了承ください。


愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

リアル男子高校生の日常
しゅんきち
エッセイ・ノンフィクション
2024年高校に入学するしゅんの毎日の高校生活をのぞいてみるやつ。
ほぼ日記です!短いのもあればたまに長いのもだしてます。
2024年7月現在、軽いうつ状態です。
2024年4月8日からスタートします!
2027年3月31日完結予定です!
たまに、話の最後に写真を載せます。
挿入写真が400枚までですので、400枚を過ぎると、古い投稿の挿入写真から削除します。[話自体は消えません]
ポケっこの独り言
ポケっこ
エッセイ・ノンフィクション
ポケっこです。
ここでは日常の不満とかを書くだけのものです。しょーもないですね。
俺の思ってることをそのまま書いたものです。
気まぐれ更新ですが、是非どうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる