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政変~契り3

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 任期満了に伴う国会議員選挙が行われる事になった。そこで、大統領制実施を掲げる国民主権党は、党首演説でこんなことを言った。
「我々の目指す大統領制では、大統領候補は政党から出すものではありません。今まで通り、国会議員の第一党の党首は、首相として内閣を組閣します。内閣とは別に、大統領が存在するのです。今の国王がなさっている仕事は、ほぼ大統領が受け継ぎます。我々は、我が国最初の大統領には、現国王の遥貴様がふさわしいと考えております。もちろん、国民による選挙の結果選ばれるのが大統領ですが、我々は遥貴様を推薦致します。」
この発言により、世論がぐっと国民主権党に傾いた。更に、現首相の汚職事件がリークされ、現政権の信用は失墜した。誰がリークしたのかは、言わずもがなである。
 そうして、投票が行われ、国民主権党が第一党になり、首相が交代した。ここまでは、今までの政治システム通りに動いた。そして、これから大統領を存在させる事になる。数カ月ののち、いよいよ大統領選挙が行われる運びとなった。立候補予定者は20人を超えた。政党に属してはいけないという事で、政治家が政党を離党して立候補したり、芸能人や元スポーツ選手などの著名人、大学教授や宗教家、ユーチューバーなどなど、多岐に渡ったラインナップだった。遥貴がその中の一人になるのは、何となく不似合いだった。そういう世俗的な、下々の競争の中に放り込まれるのが、どうも不釣り合い。国民が皆そう感じたと言っても過言ではない。ましてや、身内は尚更である。
「なあ未来、本当に遥貴に立候補させるのか?」
当然父親の一人である健斗も苦言を呈する。もう一人の父親である尊人は、事情が分かるだけに何も言わなかったが、あまり賛同している様子ではなかった。
「ねえ未来、僕は奥さんをもらいたくないが為に、大統領になるのか?それっておかしくないか?そもそも、僕に大統領が務まるのだろうか?結局国王とやる事は同じなのか?」
遥貴自身も不安を隠せずにいた。
「世襲制か、選挙で選ばれるか、の違いだよ。だが、大きな違いだろ?無理に子供を作る必要がなくなるんだから。」
未来が言うと、遥貴は大きくうんうんと頷いた。
「なるほど、やる事は同じでも全然違うね。僕がダメな大統領だったら、次は違う人を皆が選べばいいんだものね。でもさ、僕はこの選挙に勝てるのかな。勝てないような気がするんだけど。もし負けたら、僕はどうなるのかな?」
「その時は、別の仕事を探せばいいんじゃないか?俺が付いているから大丈夫だ。だが、俺は遥貴が当選すると思うね。他に適任の輩は見つからないよ、あの候補者の中には。」
未来が事も無げに言う。が、やはり遥貴は不安で、あまり納得が行かなかった。
「でもやっぱり、僕が大統領だなんて・・・。」
納得しないまでも、反論するほどの根拠もなく、遥貴はそれ以上何も言わなかった。

 選挙戦が始まったら、演説をしなければならない。遥貴は勉強も続けながら、公務もこなし、選挙の対策も練らなければならない。しかし、選挙対策の方は、全て未来に考えてもらった。演説内容も未来が考える。立候補の締め切り日まであと10日。選挙戦はたったの2週間だ。あちこちを回って演説をして回る事になっている。誰に応援演説を頼むか、どことどこを回るか。未来は知恵を絞って考えた。
 選挙戦対策を練る未来は、それはそれは生き生きとしていた。一方で、忙しくて夜遅くまで仕事をしており、遥貴はあまりかまってもらえなくなっていた。子供だと言われたくなくて、遥貴はずっと黙っていた。一日、また一日と、二人きりの時間がない状態が続いた。そうなると、やはり尊人に泣きつく遥貴だった。
「わがままを言ってはいけないって、分かってはいるんだけど。」
遥貴は尊人の肩にもたれかかって、そう言った。二人は遥貴のベッドの上に並んで座っている。
「そうだね。相手が仕事で忙しい時は、黙って支えるしかないね。」
尊人は優しくそう言った。
「おかしいよね。未来が僕を支えてくれているはずなのに、今は僕が未来を黙って支えるなんて。僕、支えにもなっていないか。」
ひねくれる遥貴に、尊人はくすっと笑った。
「未来は、遥貴の為に頑張ってるんだよね?」
「・・・うん。でもさ、僕が本当に大統領になんてなれると思う?僕が大統領になったら、未来はもっと忙しくなっちゃうんじゃないかな。そうしたら、やだな。」
尊人は、遥貴の手をポンポンと叩いた。
「早く立派になって、未来に負担をかけないようにすればいいんじゃないか?そうしたら未来の時間も増えるんじゃない?」
「僕だって、頑張るよ。でも、そうなるまでに後何年かかるか。あーあ、僕なんかより、未来の方がよっぽど大統領に向いてると思うけどなー。」
遥貴はそう言うと、大きく伸びをした。そのままベッドにひっくり返った。そして、尊人を見ると、尊人はじっと前を向いて動かない。
「どうしたの、パパ。何考えてるの?」
寝っ転がったまま遥貴が聞くと、尊人はゆっくりと振り向いた。
「あのさ、未来が大統領に向いてるって、言ったよね、今。」
「え、あ、うん。」
尊人と遥貴は目が合った。次の瞬間、遥貴はがばっと起き上がった。
「大統領には、未来がなればいい!」
二人は声を揃えて言った。
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