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反抗期~自嘲4
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久しぶりに両親と食事を共にし、遥貴は夜、未来と一緒に部屋に戻った。未来は早速、スポーツをやるなら何がいいかと遥貴に聞いた。
「ラグビーか、クリケットか、サッカーか、テニスか、空手。」
遥貴は即答した。答えながら考えたと言った方がいいかもしれない。
「さすが、イギリスで育っただけあるね。クリケットは学校が絞られてしまうな。ラグビーは難しいな。お前は細いし、流石に危険だと言われてしまうだろう。テニスはいいな。王族がいかにもやりそうなスポーツだ。サッカーもいいか。空手は・・・健斗に習え。」
未来がざっと批評すると、遥貴は目をパチクリさせた。
「ちょっと考えるよ。」
遥貴が言った。未来は、遥貴がお風呂に入るので、お休みと言って部屋を後にした。
翌日、未来は尊人に呼び止められた。
「昨日言ったよね、遥貴をかまってやってと。」
「え?何?」
未来は面食らった。実は夕べ、未来がお休みと言って遥貴の部屋を出た後、尊人は遥貴の部屋に行ったのだ。そうしたら、遥貴は元気がなく、話を聞いてみると、未来がそっけない、冷たい、と悩みを打ち明けたのだった。
「未来は、どう思ってるんだい?」
尊人は少し怒ったように言った。
「え、何を?」
「だから、遥貴の事をだよ。」
「どうって。大事だよ。」
未来は思わずそう言った。
「大事?好きって事か?」
尊人は詰め寄る。未来は目を泳がせた。
「そっか。ならよかった。」
尊人が少し穏やかになった。
「良くないよ。まだ13歳だよ。手を出したら犯罪だよ。」
未来が言うと、尊人はにやりとした。
「未来、光源氏計画って知ってるか?」
尊人が言った。
「ひかるげんじ?なんだそりゃ。」
未来は知らなかった。
「とある国の古代のお話で、源氏物語ってのがあるんだけど、そのお話の主人公の光源氏が、少女と出会って、その少女を理想の女性に育てて、妻にするんだ。それにちなんで、光源氏計画。つまり、子供の頃から理想の相手に育てて、将来結婚するという計画だよ。」
尊人はさすが帝王学を受けて育っただけあって、外国の文化に詳しい。
「それで、その光源氏計画がどうしたって?」
未来が言うと、
「それを、やってみたらどうだ?」
尊人が言う。
「・・・つまり、遥貴を理想の相手に育てろ、と?」
未来が言うと、尊人は満足げに頷いた。
「手を出さずに、育てるって事だよな。」
「放っておくなって事だよ。可愛がって育ててやってよ。」
未来はそれを聞いて、渋い顔をした。
「中途半端に可愛がるのは、きついんだよなあ。」
最後は独り言を言いながら、未来は頭に手をやって、尊人の元を去った。
その夜も、未来は遥貴を部屋まで送った。これは未来の仕事であり、尊人が国王だった時にも同じようにしていた。そういえば、尊人に対してもずいぶん中途半端にハグしたりしていたよな、と未来は思った。
「未来、スポーツだけどさ、今日先生とも話したら、やっぱりテニスがいいんじゃないかって。僕もテニスは学校でやったことがあるし、またやろうかなって思って。」
ソファに腰かけて、遥貴が言った。未来は隣に腰かけた。
「よし、じゃあどこでやるか考えるよ。国立学校の部活がいいだろうね。」
「うん。」
ふと、未来の頭に光源氏計画がよぎった。真に受けるつもりはないが、親の了承も得ているわけだし、多少は可愛がってやるか、と。それで、未来は遥貴の肩に腕を回した。すると、遥貴が未来の顔を見た。未来もその顔を見返し、ハッとした。
遥貴は顔を赤らめ、揺れる目で未来の目を見ている。尊人にもこのようにした事があるが、反応が全然違う。顔はそっくりなはずなのに。尊人は、未来をこんな風に見た事はなかったのだ。こんな風に熱っぽく、艶やかに見た事は。あの、一度だけしたキスの瞬間でさえ。
欲していたものが、ここにある。未来の中でぐらっと何かが動いた。ぐっと遥貴の肩を引き寄せ、すぐ近くにある唇を見た。遥貴は目を閉じる。未来は遥貴に口づけた。だが、すぐに離した。そして、ぱっと立ち上がった。
「やっべ。何やってんだ俺は。」
未来はそう言って頭を抱えた。
「いいのに。」
遥貴がぼそっと言った。
「良くないよ!犯罪だよ。」
未来はそう言って、ため息をついた。
「僕は、この国の法律には当てはまらないよ。法律は国民に対して決められている事だから。僕は国民ではない。」
遥貴がそう言ったので、未来は遥貴を見た。
「ね。だから、またして!」
遥貴は立ち上がって、未来に抱き着いた。嬉しそうに笑いながら。未来は、その遥貴をぎゅっと抱きしめた。そんな風に自分に対して笑うのも、尊人ではなく遥貴だけだ。
「はいはい、また明日な。」
未来は顔が熱くなったので、顔を見られないようにそっぽを向いて遥貴を離した。
「明日もしてくれるの?」
あどけない様子で遥貴が見上げている。やっぱり、甘やかしている、と未来は思った。それでも、うんうんと頷く。そしてちらっと遥貴の顔を見ると、幸せそうにうつむいていた。
「・・・ああ、もう!」
未来は遥貴を横抱きに抱き上げ、ベッドに乗せた。遥貴は驚いて未来の目を凝視した。だが、言葉が出ない。
「もう止められないからな。」
未来はそう言うと、もう一度口づけた。
「ラグビーか、クリケットか、サッカーか、テニスか、空手。」
遥貴は即答した。答えながら考えたと言った方がいいかもしれない。
「さすが、イギリスで育っただけあるね。クリケットは学校が絞られてしまうな。ラグビーは難しいな。お前は細いし、流石に危険だと言われてしまうだろう。テニスはいいな。王族がいかにもやりそうなスポーツだ。サッカーもいいか。空手は・・・健斗に習え。」
未来がざっと批評すると、遥貴は目をパチクリさせた。
「ちょっと考えるよ。」
遥貴が言った。未来は、遥貴がお風呂に入るので、お休みと言って部屋を後にした。
翌日、未来は尊人に呼び止められた。
「昨日言ったよね、遥貴をかまってやってと。」
「え?何?」
未来は面食らった。実は夕べ、未来がお休みと言って遥貴の部屋を出た後、尊人は遥貴の部屋に行ったのだ。そうしたら、遥貴は元気がなく、話を聞いてみると、未来がそっけない、冷たい、と悩みを打ち明けたのだった。
「未来は、どう思ってるんだい?」
尊人は少し怒ったように言った。
「え、何を?」
「だから、遥貴の事をだよ。」
「どうって。大事だよ。」
未来は思わずそう言った。
「大事?好きって事か?」
尊人は詰め寄る。未来は目を泳がせた。
「そっか。ならよかった。」
尊人が少し穏やかになった。
「良くないよ。まだ13歳だよ。手を出したら犯罪だよ。」
未来が言うと、尊人はにやりとした。
「未来、光源氏計画って知ってるか?」
尊人が言った。
「ひかるげんじ?なんだそりゃ。」
未来は知らなかった。
「とある国の古代のお話で、源氏物語ってのがあるんだけど、そのお話の主人公の光源氏が、少女と出会って、その少女を理想の女性に育てて、妻にするんだ。それにちなんで、光源氏計画。つまり、子供の頃から理想の相手に育てて、将来結婚するという計画だよ。」
尊人はさすが帝王学を受けて育っただけあって、外国の文化に詳しい。
「それで、その光源氏計画がどうしたって?」
未来が言うと、
「それを、やってみたらどうだ?」
尊人が言う。
「・・・つまり、遥貴を理想の相手に育てろ、と?」
未来が言うと、尊人は満足げに頷いた。
「手を出さずに、育てるって事だよな。」
「放っておくなって事だよ。可愛がって育ててやってよ。」
未来はそれを聞いて、渋い顔をした。
「中途半端に可愛がるのは、きついんだよなあ。」
最後は独り言を言いながら、未来は頭に手をやって、尊人の元を去った。
その夜も、未来は遥貴を部屋まで送った。これは未来の仕事であり、尊人が国王だった時にも同じようにしていた。そういえば、尊人に対してもずいぶん中途半端にハグしたりしていたよな、と未来は思った。
「未来、スポーツだけどさ、今日先生とも話したら、やっぱりテニスがいいんじゃないかって。僕もテニスは学校でやったことがあるし、またやろうかなって思って。」
ソファに腰かけて、遥貴が言った。未来は隣に腰かけた。
「よし、じゃあどこでやるか考えるよ。国立学校の部活がいいだろうね。」
「うん。」
ふと、未来の頭に光源氏計画がよぎった。真に受けるつもりはないが、親の了承も得ているわけだし、多少は可愛がってやるか、と。それで、未来は遥貴の肩に腕を回した。すると、遥貴が未来の顔を見た。未来もその顔を見返し、ハッとした。
遥貴は顔を赤らめ、揺れる目で未来の目を見ている。尊人にもこのようにした事があるが、反応が全然違う。顔はそっくりなはずなのに。尊人は、未来をこんな風に見た事はなかったのだ。こんな風に熱っぽく、艶やかに見た事は。あの、一度だけしたキスの瞬間でさえ。
欲していたものが、ここにある。未来の中でぐらっと何かが動いた。ぐっと遥貴の肩を引き寄せ、すぐ近くにある唇を見た。遥貴は目を閉じる。未来は遥貴に口づけた。だが、すぐに離した。そして、ぱっと立ち上がった。
「やっべ。何やってんだ俺は。」
未来はそう言って頭を抱えた。
「いいのに。」
遥貴がぼそっと言った。
「良くないよ!犯罪だよ。」
未来はそう言って、ため息をついた。
「僕は、この国の法律には当てはまらないよ。法律は国民に対して決められている事だから。僕は国民ではない。」
遥貴がそう言ったので、未来は遥貴を見た。
「ね。だから、またして!」
遥貴は立ち上がって、未来に抱き着いた。嬉しそうに笑いながら。未来は、その遥貴をぎゅっと抱きしめた。そんな風に自分に対して笑うのも、尊人ではなく遥貴だけだ。
「はいはい、また明日な。」
未来は顔が熱くなったので、顔を見られないようにそっぽを向いて遥貴を離した。
「明日もしてくれるの?」
あどけない様子で遥貴が見上げている。やっぱり、甘やかしている、と未来は思った。それでも、うんうんと頷く。そしてちらっと遥貴の顔を見ると、幸せそうにうつむいていた。
「・・・ああ、もう!」
未来は遥貴を横抱きに抱き上げ、ベッドに乗せた。遥貴は驚いて未来の目を凝視した。だが、言葉が出ない。
「もう止められないからな。」
未来はそう言うと、もう一度口づけた。
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