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反抗期~自嘲3
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「尊人!」
宮殿に現れた尊人に、未来は思わず抱き着いた。健斗と共に、極秘に入国し、無事に宮殿に到着したところだ。
「未来、いろいろありがとう。遥貴の事、任せっきりでごめんよ。」
尊人がそう言った。そこで、未来ははた、と気づいた。ここは、息子である遥貴が真っ先に尊人に飛びつく場面だったのでは、と。恐る恐る遥貴を振り返ると、遥貴はじとーっとした目で未来を見ていた。
「あ、はは。ごめん。遥貴、ほら。」
未来はハグした腕を離し、遥貴にどうぞと尊人を差し出した。だが、遥貴は来ない。何しろ反抗期だから。尊人は遥貴を見ると、ゆっくり歩いて行き、遥貴を抱きしめた。
「遥貴、ご苦労様。」
そう言って、尊人は遥貴の頭を撫でた。遥貴は、ゆっくりと手を尊人の背中に回し、ぎゅっとした。
「パパ。僕、パパが国王だったなんて知らなかったよ。まさか、この国に来てこんな事になるとは思っていなかった。」
遥貴がそう言うと、尊人は腕を離して遥貴を見た。
「話してなかったっけ?」
遥貴の表情が驚愕のそれに代わった。
「は?全く話してないよ!初耳だったよ。びっくりしたよ!」
遥貴は手ぶりを付けて激しく言った。
「健斗が言ったと思っていたよ。」
尊人はしれっと言う。健斗も近づいて来て、遥貴を後ろからハグした。
「ダディも言ってないから!」
「ははは。」
健斗はただ笑った。
宮殿の中に尊人と健斗の部屋がしつらえられた。未来はシーツなどを持って、その部屋へ行った。尊人が部屋の整理をしていた。
「尊人、結局ここに戻ってきちゃったけど、それで良かったのか?」
未来が聞くと、
「もう、十分自由にさせてもらったから。またこの国に戻って来られて良かったよ。それに、遥貴ともまた一緒に暮らせるし。」
尊人は笑って言った。尊人は以前よりも肩の力が抜けて、ずいぶん印象が変わった。国王だった時よりも健康的になった。
「俺は、働かなくていいのか?それこそ庭で畑でもやろうか?」
尊人が言う。
「そうだな、仕事については考えてみるよ。尊人に向いているものがあるかどうか、探してみる。公務を行うのは嫌だろうから。」
未来はそう言いながらシーツをベッドに掛けた。
「それより、遥貴のしつけの方をお願いしたいよ。ほんと、お前が来てくれて良かった。俺だけだと甘やかしてしまいそうで。」
未来がぼやくと、
「甘やかすのか?どんな風に?」
尊人が意味深に聞く。未来は手を止め、尊人の顔を見た。尊人がニヤニヤしていたので、ぼっと顔が熱くなった。
「いや、だから、強く叱れないっていうか、結局言う通りにしてしまうっていうか、そういう意味でだよ!」
変な事言うなよ、とブツブツ言いながらまた作業を再開した未来だった。尊人はくくくっと笑った。
「そうだな、遥貴がわがままを言ったら、俺か健斗に言ってくれ。健斗が叱る時は、天井にしがみつかせて叱るよ。」
尊人が言った。
「え!?ああ、そうか。健斗に育てられたんだもんな、遥貴は忍法を使えるのか。親が忍者教室の先生だったんだから。そうか、そうなのか。」
未来は独り言のように言った。
「そういえば、遥貴は学校には行っていないのだろう?スポーツをやっていないんだよな?」
尊人が言った。それは未来も気になっていた。体育と称して多少体を動かす事はさせていたが、庭で一人でできる事をしていただけだった。13歳と言えば、中学校で部活をやらせた方がいいくらいだ。
「どうしたらいいかな?やっぱり学校に行かせるべきなのだろうか。」
未来が言うと、尊人は少し考え込んだ。
「それはまあ、学校には行かせた方がいいが。国王だからな、皇太子とは違って警備も難しいだろうな。」
尊人が言った。そこへ、健斗が入って来た。
「未来、サンキュ。」
「健斗、お前はどう思う?遥貴にスポーツをやらせるにはどうしたらいいか。学校に行かせるべきか、どうか。」
未来が健斗に問いかけると、健斗は即答した。
「部活だけやらせればいいだろ。俺が送り迎えしてやろうか?イギリスにいた時みたいに。」
「部活だけ、か・・・。分かった。遥貴に聞いてみよう。」
未来が言うと、
「今、遥貴は何してるんだ?」
健斗が聞く。
「勉強だよ。先生が来ている。」
未来が言う。
「そっか、公務の他はほとんど勉強か。帝王学を身に着けなきゃいけないんだろ?大変だなあ。まあ、尊人の子だから大丈夫だろうが。」
と、健斗が言った。
「未来、あの子は重圧をたくさん抱えているはずだ。友達もいないし、勉強もきっとつらいだろう。お前がいるからこそ、頑張っているんだから、頼むぞ。ちゃんとかまってやってくれよ。」
と、尊人が言った。
「あ、ああ。」
かまうって何だ?と未来は頭に「?」を思い浮かべたが、流した。
「じゃ、俺は行くわ。何か足りないものがあったら言ってくれ。」
そう言って、未来はその部屋を後にした。
宮殿に現れた尊人に、未来は思わず抱き着いた。健斗と共に、極秘に入国し、無事に宮殿に到着したところだ。
「未来、いろいろありがとう。遥貴の事、任せっきりでごめんよ。」
尊人がそう言った。そこで、未来ははた、と気づいた。ここは、息子である遥貴が真っ先に尊人に飛びつく場面だったのでは、と。恐る恐る遥貴を振り返ると、遥貴はじとーっとした目で未来を見ていた。
「あ、はは。ごめん。遥貴、ほら。」
未来はハグした腕を離し、遥貴にどうぞと尊人を差し出した。だが、遥貴は来ない。何しろ反抗期だから。尊人は遥貴を見ると、ゆっくり歩いて行き、遥貴を抱きしめた。
「遥貴、ご苦労様。」
そう言って、尊人は遥貴の頭を撫でた。遥貴は、ゆっくりと手を尊人の背中に回し、ぎゅっとした。
「パパ。僕、パパが国王だったなんて知らなかったよ。まさか、この国に来てこんな事になるとは思っていなかった。」
遥貴がそう言うと、尊人は腕を離して遥貴を見た。
「話してなかったっけ?」
遥貴の表情が驚愕のそれに代わった。
「は?全く話してないよ!初耳だったよ。びっくりしたよ!」
遥貴は手ぶりを付けて激しく言った。
「健斗が言ったと思っていたよ。」
尊人はしれっと言う。健斗も近づいて来て、遥貴を後ろからハグした。
「ダディも言ってないから!」
「ははは。」
健斗はただ笑った。
宮殿の中に尊人と健斗の部屋がしつらえられた。未来はシーツなどを持って、その部屋へ行った。尊人が部屋の整理をしていた。
「尊人、結局ここに戻ってきちゃったけど、それで良かったのか?」
未来が聞くと、
「もう、十分自由にさせてもらったから。またこの国に戻って来られて良かったよ。それに、遥貴ともまた一緒に暮らせるし。」
尊人は笑って言った。尊人は以前よりも肩の力が抜けて、ずいぶん印象が変わった。国王だった時よりも健康的になった。
「俺は、働かなくていいのか?それこそ庭で畑でもやろうか?」
尊人が言う。
「そうだな、仕事については考えてみるよ。尊人に向いているものがあるかどうか、探してみる。公務を行うのは嫌だろうから。」
未来はそう言いながらシーツをベッドに掛けた。
「それより、遥貴のしつけの方をお願いしたいよ。ほんと、お前が来てくれて良かった。俺だけだと甘やかしてしまいそうで。」
未来がぼやくと、
「甘やかすのか?どんな風に?」
尊人が意味深に聞く。未来は手を止め、尊人の顔を見た。尊人がニヤニヤしていたので、ぼっと顔が熱くなった。
「いや、だから、強く叱れないっていうか、結局言う通りにしてしまうっていうか、そういう意味でだよ!」
変な事言うなよ、とブツブツ言いながらまた作業を再開した未来だった。尊人はくくくっと笑った。
「そうだな、遥貴がわがままを言ったら、俺か健斗に言ってくれ。健斗が叱る時は、天井にしがみつかせて叱るよ。」
尊人が言った。
「え!?ああ、そうか。健斗に育てられたんだもんな、遥貴は忍法を使えるのか。親が忍者教室の先生だったんだから。そうか、そうなのか。」
未来は独り言のように言った。
「そういえば、遥貴は学校には行っていないのだろう?スポーツをやっていないんだよな?」
尊人が言った。それは未来も気になっていた。体育と称して多少体を動かす事はさせていたが、庭で一人でできる事をしていただけだった。13歳と言えば、中学校で部活をやらせた方がいいくらいだ。
「どうしたらいいかな?やっぱり学校に行かせるべきなのだろうか。」
未来が言うと、尊人は少し考え込んだ。
「それはまあ、学校には行かせた方がいいが。国王だからな、皇太子とは違って警備も難しいだろうな。」
尊人が言った。そこへ、健斗が入って来た。
「未来、サンキュ。」
「健斗、お前はどう思う?遥貴にスポーツをやらせるにはどうしたらいいか。学校に行かせるべきか、どうか。」
未来が健斗に問いかけると、健斗は即答した。
「部活だけやらせればいいだろ。俺が送り迎えしてやろうか?イギリスにいた時みたいに。」
「部活だけ、か・・・。分かった。遥貴に聞いてみよう。」
未来が言うと、
「今、遥貴は何してるんだ?」
健斗が聞く。
「勉強だよ。先生が来ている。」
未来が言う。
「そっか、公務の他はほとんど勉強か。帝王学を身に着けなきゃいけないんだろ?大変だなあ。まあ、尊人の子だから大丈夫だろうが。」
と、健斗が言った。
「未来、あの子は重圧をたくさん抱えているはずだ。友達もいないし、勉強もきっとつらいだろう。お前がいるからこそ、頑張っているんだから、頼むぞ。ちゃんとかまってやってくれよ。」
と、尊人が言った。
「あ、ああ。」
かまうって何だ?と未来は頭に「?」を思い浮かべたが、流した。
「じゃ、俺は行くわ。何か足りないものがあったら言ってくれ。」
そう言って、未来はその部屋を後にした。
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