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誘拐~宣言6
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現地の政府軍と、我が国の近衛兵が10分で到着した。藤堂と合流した健斗と未来は、他の軍隊とは別行動で、尊人のいる部屋の外へ回った。敵がこちらの軍隊に気づけば、尊人は人質として連れていかれてしまう。その前に救い出さねばならない。そのためには、普段訓練している、忍術を使うしかない。
3人は外を調べたが、外から尊人を上手く出す手立てはないようだった。そこで、正面突破、ではなく、正面入り口からこっそり入るしかない。見張りはやはり一人。3人は防弾チョッキを着て、入口へ回った。しかし、既に入口の見張りは、軍隊に気づいたようだった。
「何だありゃ!まずい、まずいぞ!」
そう言ったかどうだか、言葉は分からなったが、何かをわめきながら知らせるために中へ入って行った。その隙に、3人は入り口の中へ侵入した。
中には、猟銃を持った男たちがうろちょろしていた。けれども、見張りが何か言ったので、みんなでリーダーの元へ集まって行こうとしているようだった。3人は黒い服で暗闇を通り、尊人のいる独房の近くまで来た。そこにも見張りがいるが、みんなが浮足立っているので、気もそぞろだ。
忍法隠れ蓑の術を使う時が来た。ドアと同じ色の布でドアを覆い、その中へ入り込んで部屋の中に入る。これは、未来がやってのけた。ドアをそっと開けて中に入ると、尊人が高い窓の外を見上げていた。
「尊人、来たよ。」
急にドアの方から声をかけられて、尊人はびっくりして振り返った。
「未来!」
未来はさっと唇の前に人差し指を立てた。尊人は黙って頷いた。未来は尊人に防弾チョッキを着せ、黒いマントをその上から着せた。そして、そっとドアに手をかける。すると、ドアが外開きのはずだったのに、なぜかスライドして開いた。未来は尊人の手を握ると、走り出した。尊人は、視界が全く開けないのに驚いた。前を走る未来の後ろ姿しか見えない。横はいつも壁。しかし、これは隠れ蓑だ。隣を健斗が走っているのだ。敵は混乱しているが、リーダーが、
「人質を連れてこい!」
と叫んだ。見張りをしていた者が、ドアを開けようとして悲鳴を上げた。
「わー!ドアが、ドアが布になっちまった!」
尊人たちは何とか建物の外に出た。敷地の外に出た時、藤堂が合図を出し、突入の命令が下され、政府軍が突入を始めたのだった。尊人たちは軍の後ろに待機していた車に乗り込んだ。
「ありがとう、みんな。迷惑をかけてすまない。」
尊人が頭を下げた。
「何をおっしゃいます。私たちの仕事ですから。あっ。」
藤堂がそう言い、最後に手を口元に持って行った。もう、尊人が国王ではなくなった事を思い出したのだ。
「陛下、いえ、尊人様、本当に国王を辞めてしまわれるのですね。」
「藤堂、これまで長い間ありがとう。世話になった。ああ、違うな。お世話になりました。」
もう一度、尊人は頭を下げた。
「そんな、辞めてください。たとえ国王でなくなっても、あなたは高貴なお方です。」
藤堂はそう言って、少し微笑んだ。
「それにしても、本当にこれで我が国の国王制は廃止されたんだろうか。そんな簡単に話は進むのか?」
健斗が言った。
「うーん、そうだな。だが、この後の国賓行事は皆キャンセルされたから、そういう事なんじゃないのか?」
未来が言う。
「尊人、これからどうする?俺たちもさ。」
健斗が言う。
「そうだな、何も考えてなかったな。生きて帰れると思ってなかったし。」
尊人はそう言うと、なんだかおかしくなって、くっくっくと笑いだした。3人もつられて、ふふふ、あははは、と笑いだした。急に仕事も身分も無くなった。なんだか、おかしかったのだ。4人は、しばらく笑っていた。
3人は外を調べたが、外から尊人を上手く出す手立てはないようだった。そこで、正面突破、ではなく、正面入り口からこっそり入るしかない。見張りはやはり一人。3人は防弾チョッキを着て、入口へ回った。しかし、既に入口の見張りは、軍隊に気づいたようだった。
「何だありゃ!まずい、まずいぞ!」
そう言ったかどうだか、言葉は分からなったが、何かをわめきながら知らせるために中へ入って行った。その隙に、3人は入り口の中へ侵入した。
中には、猟銃を持った男たちがうろちょろしていた。けれども、見張りが何か言ったので、みんなでリーダーの元へ集まって行こうとしているようだった。3人は黒い服で暗闇を通り、尊人のいる独房の近くまで来た。そこにも見張りがいるが、みんなが浮足立っているので、気もそぞろだ。
忍法隠れ蓑の術を使う時が来た。ドアと同じ色の布でドアを覆い、その中へ入り込んで部屋の中に入る。これは、未来がやってのけた。ドアをそっと開けて中に入ると、尊人が高い窓の外を見上げていた。
「尊人、来たよ。」
急にドアの方から声をかけられて、尊人はびっくりして振り返った。
「未来!」
未来はさっと唇の前に人差し指を立てた。尊人は黙って頷いた。未来は尊人に防弾チョッキを着せ、黒いマントをその上から着せた。そして、そっとドアに手をかける。すると、ドアが外開きのはずだったのに、なぜかスライドして開いた。未来は尊人の手を握ると、走り出した。尊人は、視界が全く開けないのに驚いた。前を走る未来の後ろ姿しか見えない。横はいつも壁。しかし、これは隠れ蓑だ。隣を健斗が走っているのだ。敵は混乱しているが、リーダーが、
「人質を連れてこい!」
と叫んだ。見張りをしていた者が、ドアを開けようとして悲鳴を上げた。
「わー!ドアが、ドアが布になっちまった!」
尊人たちは何とか建物の外に出た。敷地の外に出た時、藤堂が合図を出し、突入の命令が下され、政府軍が突入を始めたのだった。尊人たちは軍の後ろに待機していた車に乗り込んだ。
「ありがとう、みんな。迷惑をかけてすまない。」
尊人が頭を下げた。
「何をおっしゃいます。私たちの仕事ですから。あっ。」
藤堂がそう言い、最後に手を口元に持って行った。もう、尊人が国王ではなくなった事を思い出したのだ。
「陛下、いえ、尊人様、本当に国王を辞めてしまわれるのですね。」
「藤堂、これまで長い間ありがとう。世話になった。ああ、違うな。お世話になりました。」
もう一度、尊人は頭を下げた。
「そんな、辞めてください。たとえ国王でなくなっても、あなたは高貴なお方です。」
藤堂はそう言って、少し微笑んだ。
「それにしても、本当にこれで我が国の国王制は廃止されたんだろうか。そんな簡単に話は進むのか?」
健斗が言った。
「うーん、そうだな。だが、この後の国賓行事は皆キャンセルされたから、そういう事なんじゃないのか?」
未来が言う。
「尊人、これからどうする?俺たちもさ。」
健斗が言う。
「そうだな、何も考えてなかったな。生きて帰れると思ってなかったし。」
尊人はそう言うと、なんだかおかしくなって、くっくっくと笑いだした。3人もつられて、ふふふ、あははは、と笑いだした。急に仕事も身分も無くなった。なんだか、おかしかったのだ。4人は、しばらく笑っていた。
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