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決闘?
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なんだかすごい勢いで、鼻息も荒く俺の前を歩くテツヤ。寮の俺たちの部屋に着くと、バンと勢いよくドアを開けた。ベッドに座っていたカズキ兄さんが顔を上げると、テツヤはツカツカとそのカズキ兄さんの目の前まで歩いて行き、いきなり床に手をついて座った。
「カズキ、頼む!レイジの事は諦めてくれ!」
テツヤは土下座をしてカズキ兄さんにそう言った。
「え?何?」
カズキ兄さんが戸惑っていると、
「お前はいいやつだ。俺は知っている。だから、他の物だったらなんだってやる。でも、レイジだけはダメだ。やらない。」
テツヤは顔を上げてそう言った。まだ床に座ったままだ。カズキ兄さんが黙っていると、更にテツヤは続けた。
「お前は充分魅力的だ。ファンがたくさんいるだろ。レイジじゃなくたっていいだろ?」
するとカズキ兄さんが、
「でも、ファンとは出会えないもん。」
と言った。
「リョウ兄さんは?」
テツヤが言った。リョウ兄さんは、かつて俺がファンだったという事もあり、テツヤと喧嘩した事がある会社の先輩だ。つまり、俺に一時気があるようだったリョウ兄さんをカズキ兄さんにくっつけてしまおうという、一石二鳥な感じで名前を挙げたのだろう。
「やだよ。年下がいい。」
だが、即刻却下された。カズキ兄さん、この間まで年上と付き合っていたくせに、そんな事を言う。
「年下で、ファン……。よし、ちょっと待ってろ!」
テツヤはそう言うと、いきなり立ち上がって部屋を出て行った。え?どこ行くの?
しばらくして、テツヤは部屋に戻って来た。その時、一人の男を連れてきた。いや、この寮で生活をしている訓練所の仲間で、一応顔見知りだ。でも、しゃべった事はなかった。
「はい、連れてきたよ。」
テツヤが得意げに言った。
「えっと?」
カズキ兄さんが説明を促すと、
「カズキのファンで、年下。」
テツヤはそう言って、連れてきた男を両手で紹介するように示した。多分名前も知らないのだろう。要するに、カズキ兄さんのファンを探し回ったという事なのか?寮の部屋を一部屋一部屋聞いて回ったのか?すごい。ある意味決闘だな。
連れて来られた男は、はにかんで俯いている。その男を、テツヤは肘でつついた。
「え?あ、あの、僕ずっとカズキさんのファンで。」
頭の後ろに手をやって、彼は言った。
「どうして今まで黙ってたんだ?」
テツヤが聞いた。
「え、それは……。話し掛けたかったんですけど、いつもレイジさんと一緒にいて、話しかけるタイミングがなくて。」
うわ、俺のせいか。だが、なかなか美青年ではある。
「本当に、俺のファンなの?」
カズキ兄さんが問う。
「あ、はい。」
青年、はにかむ。
「ふーん。あ、こっちにおいでよ。」
カズキ兄さんは自分のベッドに座るように促した。お、これは?カズキ兄さんもまんざらではない?
テツヤが俺においでおいでをした。二人で部屋を出る。カズキ兄さん、あの男と上手く行くといいのだが。ファンとは知り合えないなんて言っていたけど、案外知り合えるものなのだな。
「じゃ、もう一回ホテル行こうか。」
テツヤは笑ってそう言い、俺の手を取った。うわ、テツヤの方からホテルに誘ってくれたよ。俺のやる気は、触られなくても収まらないほどに……。
「俺の為に、ありがと。」
ホテルに向かう道すがら、そう言うと、
「お前の為なら何だってするさ。」
とテツヤが言った。やっぱり兄さんだなぁ。潔く頭を下げ、その上スパッと解決しちゃう辺り、すごくカッコいい。ますます惚れ直しちゃったよ。
「カズキ、頼む!レイジの事は諦めてくれ!」
テツヤは土下座をしてカズキ兄さんにそう言った。
「え?何?」
カズキ兄さんが戸惑っていると、
「お前はいいやつだ。俺は知っている。だから、他の物だったらなんだってやる。でも、レイジだけはダメだ。やらない。」
テツヤは顔を上げてそう言った。まだ床に座ったままだ。カズキ兄さんが黙っていると、更にテツヤは続けた。
「お前は充分魅力的だ。ファンがたくさんいるだろ。レイジじゃなくたっていいだろ?」
するとカズキ兄さんが、
「でも、ファンとは出会えないもん。」
と言った。
「リョウ兄さんは?」
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「やだよ。年下がいい。」
だが、即刻却下された。カズキ兄さん、この間まで年上と付き合っていたくせに、そんな事を言う。
「年下で、ファン……。よし、ちょっと待ってろ!」
テツヤはそう言うと、いきなり立ち上がって部屋を出て行った。え?どこ行くの?
しばらくして、テツヤは部屋に戻って来た。その時、一人の男を連れてきた。いや、この寮で生活をしている訓練所の仲間で、一応顔見知りだ。でも、しゃべった事はなかった。
「はい、連れてきたよ。」
テツヤが得意げに言った。
「えっと?」
カズキ兄さんが説明を促すと、
「カズキのファンで、年下。」
テツヤはそう言って、連れてきた男を両手で紹介するように示した。多分名前も知らないのだろう。要するに、カズキ兄さんのファンを探し回ったという事なのか?寮の部屋を一部屋一部屋聞いて回ったのか?すごい。ある意味決闘だな。
連れて来られた男は、はにかんで俯いている。その男を、テツヤは肘でつついた。
「え?あ、あの、僕ずっとカズキさんのファンで。」
頭の後ろに手をやって、彼は言った。
「どうして今まで黙ってたんだ?」
テツヤが聞いた。
「え、それは……。話し掛けたかったんですけど、いつもレイジさんと一緒にいて、話しかけるタイミングがなくて。」
うわ、俺のせいか。だが、なかなか美青年ではある。
「本当に、俺のファンなの?」
カズキ兄さんが問う。
「あ、はい。」
青年、はにかむ。
「ふーん。あ、こっちにおいでよ。」
カズキ兄さんは自分のベッドに座るように促した。お、これは?カズキ兄さんもまんざらではない?
テツヤが俺においでおいでをした。二人で部屋を出る。カズキ兄さん、あの男と上手く行くといいのだが。ファンとは知り合えないなんて言っていたけど、案外知り合えるものなのだな。
「じゃ、もう一回ホテル行こうか。」
テツヤは笑ってそう言い、俺の手を取った。うわ、テツヤの方からホテルに誘ってくれたよ。俺のやる気は、触られなくても収まらないほどに……。
「俺の為に、ありがと。」
ホテルに向かう道すがら、そう言うと、
「お前の為なら何だってするさ。」
とテツヤが言った。やっぱり兄さんだなぁ。潔く頭を下げ、その上スパッと解決しちゃう辺り、すごくカッコいい。ますます惚れ直しちゃったよ。
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