Bless for Travel ~病弱ゲーマーはVRMMOで無双する~

NotWay

文字の大きさ
上 下
63 / 76

五十八話

しおりを挟む
【紫電纏う至高の二槍】
  称号 アヴェンジャー
  LV:??

今見ても結構異質だな。長い名前のモンスターはだいたいボスモンスターの中でも強い印象がある。あと漢字使うやつ。
さて、正直あの時は必死だったし、体を動かす感覚に慣れている時間だったので苦戦したけど、今ならどうだろうか。

【 Action Skill : 《紫雷槍》 】

以前はこれをギリギリ≪ステップ≫を使って躱していたんだっけ。今なら見てから回避も間に合うようになってしまった。成長を実感するな。
さて、まだいろいろあるでしょ電気ウサギ。もっと出しなよ。せめて哭竜騎士くらいのことしてくれなきゃ楽しめもしないよ。

【 Action Skill : 《紫電一閃》 】

突進の強化版、今でならわかるけど僕の≪ダッシュ≫に攻撃判定が付いたようなスキルだ。ただ溜め時間がわかりやすいし、足元に雷のエフェクトもついている。
それに思考は結局のところAIのモンスターだ。そういう突進系スキルは自分よりも早い相手には、普通に使っても回避されるだけだ。
だから、相手より早いならいい。

【 Action Skill : 《紫電一閃》 】

僕《・》の足元に雷のエフェクトが付く。少しかがんだ姿勢をスキルの予備動作として取らされたあとに、視界が高速で流れる。右腕に【血兎《アルミラージ》】を長く展開した状態で、足元を通り過ぎる。全身が当たり判定と化したスキルの上に、右腕に展開した刃が止まることなく撫で切っていく。

予想通り、僕の方が早かったのか、警戒という行動をウサギから取っていたのかわからないけれど、前までは角にしか与えられていなかった有効打をいきなり脚に与えられた。
正直今からすると角の方が硬いと思うけど、あの時はクリティカル運ゲーを連打しながら根性で頑張ったんだっけ。我ながら無茶するなぁ。

と電気ウサギがこちらを様子見する静寂の時間、離れた位置に置いてきたはずのシバさんがこちらへ寄ってくる。あれ、逃げてって言ったのに。

「でっかいウサギさんをいじめちゃだめっすよ!」

「あー、そういうこと言ってる場合じゃないと……」

話をしようとしたシバさん目掛け、雷が角に溜められる。とりあえずシバさんを掴んで≪ライトウェイト≫を起動。雷の槍を回避させた後にもう一度溜め始めるウサギ目掛けて、剣を射出する。これはwiki'sさんが発見した攻略情報。あの雷を止めている状態の時に、金属製のアイテムを当てると。

「うわ、まぶし」

暴発するのだ。あの状態の時に剣で切りつけても何も起こらないのだが、投擲を当てると爆発する仕様らしい。うっかり剣を角の上に落としたプレイヤーが至近距離で暴発をくらいそのままデスしたことで発見されたらしいけど。
ただ僕の【血兎】パーツは元々高い電気耐性が備わっているし、数本当てても問題ない。まさに電気ウサギメタアイテムだ。

「え、あ、た、助けてくれて……」

「さすがに状況がわかってきた感じですかね」

この人もさすがにあの電気ウサギがやばいと気づいてきたのか、顔を青くしながらお礼を言おうとしてくる。別に悪い人ではないんだろうけど、ちょっと頭がメルヘンなところが問題な感じかな。

別に嫌いなタイプじゃないけどね。今この場面だと少しこの人の身が心配だ。もう何回か打ち合うと第二形態に入るし。

「自分も何か手つだ」

「手伝うことはないので、見学してていいので離れてもらえると」

この人は何か動いてないと落ち着かない人なのかな。まぁ僕も最初このゲームを始めた時は動けることが嬉しすぎてそんな感じだったけど。この人のはちょっと違うというか……子犬みたいな。

「なんか解説とかいります?」

「いや、集中してもらって大丈夫っす!」

見てるだけじゃ退屈かなって思ったけど案外そうでもないみたいだ。と言っても僕ももうこの状態じゃ電気ウサギの攻撃を食らうこともないんだよね。
そういえばこの前動画を見ていたら魅せコンなる物があるってのを聞いたな。動きが大きいスキルとかエフェクトが派手なスキルを組み合わせて魅せる、カッコいい動きをするってやつ。あれやりたい。
まぁああいうのは条件が整ってできるものだろうし今回はやらないけど。

始まりの草原というだけあって場所は草しかない草原、たまに少し大きめの岩がある程度で障害物や足掛かりになりそうなものは何にもない。

うん、無理だな。なんなら竜騎士とか枝垂れ桜の方がカッコいい動き出来る。もっと言うと川辺にいた熊相手の方がマシレベルで。

僕が周りを観察して何かにいかせないか見ていると電気ウサギが隙だと思ったのか、何も考えていないのかわからないけれど足元を薙ぐように角で掬いに来る。
≪ハイジャンプ≫を起動、ウサギよりも高くへ飛び上がる。このまま空中から≪空烈閃≫でも出したいところだけど最終段だけをうまいこと角にあてるのは難しいのでなし。
無難に視界外からのスキル連携と、飛び上がったときに地上に残した剣を鎖で巻き上げて繋げるくらいでいいだろうか……と思っていると上空にいる僕よりもさらに上、空と言われる境界に暗雲が立ち込めた。
そう言えばこんな技あったね。

【 Action Skill : 《雷牙咬差》 】

取得できるならこのスキルも……いや、いらないか。僕って相手より上にポジショニングすることはよくあるけど相手より下から攻撃することってあんまりないんだよね。

昔はこれもこんな上空で当てられていたら避けられなかったスキルなんだけどね。地上にある剣に伸ばしていた鎖を接続する。≪バッシュ≫を発動し電気ウサギの横っ面を殴打する。多少角がそれたことによりギリギリ回避できるかできないか程度にはなった。ただ剣が腕から伸びて、それが何かに接触しているということは空中判定が途切れる。暗雲が光を発する瞬間に≪ステップ≫を踏み、横に回避する。

そういえばこれも修正しないでいいのかな。体から伸びている物が接触していれば空中判定ではないのなら、最悪の場合なんかすっごい長い糸とか体から伸ばし続けてれば空中じゃない判定になると思うけど。

そんなアホなこと試す人がいないだけだろうけど。この空中判定のあやふやさが修正されちゃうと、僕の空中機動力が下がるのでやめてほしいなぁ。殴打した剣と左腕に転嫁した刃で≪クロスカット≫、雷落としは連発できないらしいので≪飛燕≫を両足で発動し即キャンセル。高度だけを稼ぎながら半回転する。

≪飛燕≫のキャンセルに地上に残した剣で≪スラッシュ≫≪ピアス≫を発動したのであの剣で使えるスキルはもう一つしかなくなってしまった。単純な動作のスキルももう少し増やしたいな。最近剣術系のスキル増やしてないし。

ただ残っている一つのスキルを鎖越しに発動する。≪飛燕≫の効果により地上にあった剣は電気ウサギを掠めながらふわりと浮かび上がる。鎖を巻き取るのと併用することにより素早く手元に引き戻し、収納。新たに控えの刃と入れ替え、地上に射出する。

そして一度着地しないと、最悪控えの剣まで含めて≪飛燕≫のストックが切れる。元々≪飛燕≫って飛ぶスキルじゃないだろうからそんなに高度が稼げないし。たぶん飛び上がる技ではあるけどそのあと≪空烈閃≫とかに繋ぐスキルなのかな。なんか≪ハイジャンプ≫以外に高度稼げるスキル欲しいな。ないかな。
ついでにこのままだと頭から落下するところを電気ウサギに虐殺されるだけなので、空中で脛の裏、ふくらはぎあたりにエフェクトをつける。抜刀スキル≪一閃≫。大振りなところはデメリットだけど、これのおかげで一気に姿勢が直せる。

ついでに……こっちが本来の用途か。威力が超超高度からの≪空烈閃≫を除いた僕のスキルの中で一番高い。≪紫電一閃≫もほぼ避けられないスキルだからか若干威力が物足りない。

まぁスキルそれぞれにいいところがあるけどね。≪紫電一閃≫、まだ実用例が少ないけど可能性すごく感じるし、可能性があるから取ったわけだし。

キレイに両足で着地する。そして着地をした瞬間に、砕け散るような音と共に周囲一帯に雷のエフェクトが走る。

さぁ、第二ラウンドだ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

年下の地球人に脅されています

KUMANOMORI(くまのもり)
SF
 鵲盧杞(かささぎ ろき)は中学生の息子を育てるシングルマザーの宇宙人だ。  盧杞は、息子の玄有(けんゆう)を普通の地球人として育てなければいけないと思っている。  ある日、盧杞は後輩の社員・谷牧奨馬から、見覚えのないセクハラを訴えられる。  セクハラの件を不問にするかわりに、「自分と付き合って欲しい」という谷牧だったが、盧杞は元夫以外の地球人に興味がない。  さらに、盧杞は旅立ちの時期が近づいていて・・・    シュール系宇宙人ノベル。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

滅亡後の世界で目覚めた魔女、過去へ跳ぶ

kuma3
SF
滅びた世界の未来を変えるため、少女は過去へ跳ぶ。 かつて魔法が存在した世界。しかし、科学技術の発展と共に魔法は衰退し、やがて人類は自らの過ちで滅びを迎えた──。 眠りから目覚めたセレスティア・アークライトは、かつての世界に戻り、未来を変える旅に出る。 彼女を導くのは、お茶目な妖精・クロノ。 魔法を封じた科学至上主義者、そして隠された陰謀。 セレスティアは、この世界の運命を変えられるのか──。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

戦国時代の武士、VRゲームで食堂を開く

オイシイオコメ
SF
奇跡の保存状態で頭部だけが発見された戦国時代の武士、虎一郎は最新の技術でデータで復元され、VRゲームの世界に甦った。 しかし甦った虎一郎は何をして良いのか分からず、ゲーム会社の会長から「畑でも耕してみたら」と、おすすめされ畑を耕すことに。 農業、食堂、バトルのVRMMOコメディ! ※この小説はサラッと読めるように名前にルビを多めに振ってあります。

New Life

basi
SF
なろうに掲載したものをカクヨム・アルファポにて掲載しています。改稿バージョンです。  待ちに待ったVRMMO《new life》  自分の行動でステータスの変化するアビリティシステム。追求されるリアリティ。そんなゲームの中の『新しい人生』に惹かれていくユルと仲間たち。  ゲームを進め、ある条件を満たしたために行われたアップデート。しかし、それは一部の人々にゲームを終わらせ、新たな人生を歩ませた。  第二部? むしろ本編? 始まりそうです。  主人公は美少女風美青年?

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...