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二十九話
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蹴り触れあうも他生の縁。自分でも何を言っているのか全然わからないけれど剣士なのに蹴りで戦うことを意味する言葉です。嘘です。
「おもしれぇじゃねぇか。ちょっとこれ付き合えよ」
というと【暴風】さんは剣をかなぐり捨てて拳を構える。硬そうな籠手とブーツが阻んでいるとはいえまさか徒手空拳とかしないですよね。
【 Action Skill : 《ジャブ》 】
いやそんなことある?
明らかに純粋な剣士プレイヤーが拳で殴り掛かってきた。しかもスキルを乗せて。しかし随分楽しそうな顔をしているのでこっちも受けなきゃいけない雰囲気がある。ここで【血兎《アルミラージ》】とか最大射程で出したら全力で殺されそうだし。
まぁこっちは剣スキルなんですけど。
【 Action Skill : 《ピアス》 】
軽く当ててくるような拳に合わせて右拳側に出した剣で突く。いくら防具に覆われているとはいえ一方的にダメージを当てられるはずだろうけど。
【 Action Skill-chain : 《ステップ》 】
【 Action Skill-chain : 《ジャブ》 】
こちらのスキルに合わせて僕のとも違う、本当に軽いステップを挟みこみ再度ジャブが飛んでくる。このフォームにステップ……ボクシング?
【 Action Skill-chain : 《ステップ》 】
懐に潜り込んで来ようとする相手から距離を取るために、あちらとは違う長距離のステップだ。それを読んでいたかのように相手は右手を思いっきり引き付けると、体全体を使って拳を飛ばしてくる。
【 Action Skill : 《ストレート・パンチ》 】
この人なんでこんなに格闘スキルが多彩なんだよ。直撃するとまずいと思いこちらもボクシングのガードのように両手を胸の上あたりに構える。そして腕に展開した刃で無理やり受ける。ぐえっ。防御越しなのにHP1割持ってかれた。ビビらずスキルぶつけるべきだった!
「こういうんやれるやつは少ねぇんだ!気に入ったぞ坊主!」
「僕はこういう戦いは遠慮したいですね!コマイヌです!」
「コマイヌか!いいぞ、手加減してやるからもっとかかってこい!」
そういうと後ろ側に飛んでこちらに手を傾け挑発してくる。わかってますよ、剣を捨ててる時点でだいぶ手加減してるということなんでしょうけど。
その舐めプの代償払わせてやる。もうこっちは遠慮せずぶった切ってやるからな!
拳を構えた状態でこちらの動きを待つ【暴風】さんの前に跳び出す。先ほどまでの剣を構えていた状態ならいざ知らず、現在の徒手空拳状態では後ろを取るような戦い方は難しいだろう。
何回か打ち合って分かったのは僕に似たスタイルではあるけど、僕よりもスキルが豊富、僕よりもパワーがある。ただし僕の方がスキルの扱いはうまいし、速さはある。つまりやりたいこととは相手より早くスキルを叩きこみ続ける。ずっと僕のターンだ。というわけでレッツゴー。
相手の拳を届かせるには遠く、僕の拳も届かない距離。この距離から右腕を振り上げ、エフェクトを纏う。
【 Action Skill : 《スラッシュ》 】
【 Action Skill : 《パリィ》 】
これは読まれていたのだろう。右腕から発動するスラッシュは叩き落とされ不発となる。しかし下段に構えた剣を軸にまたスキルを放つ。
【 Action Skill-chain : 《飛燕》 】
切り下すような動作からの切り上げ。さすがに上位プレイヤーなのでこれが通じるとは全く思っていなかったけど、簡単に避けられるとはそれはそれでへこむ。
【 Action Skill-chain : 《スラッシュ》 】
【 Action Skill-chain : 《ラッシュ》 】
落下するモーション中に斜めに傾き、左腕で≪スラッシュ≫を発動し、さらに右足から≪ラッシュを≫放つ。先にキャンセルを挟むことにより相手の意表を……
【 Action Skill : 《ワン-ツーパンチ》 】
右足で放つスキルを全て左右の拳のコンビネーションで相殺された。クリティカルが出た判定は僕の方がダメージを通せているがそれでも微量、ほぼノーダメージだ。しかも無茶な体勢からスキルを放ったためこのまま落下すると敵の前で寝転がる姿を見せることになる。
【 Action Skill-chain : 《飛燕》 】
というわけで左膝に展開した刃からまた飛び上がる。集中しすぎてお互いの動きがスローモーションのように見えてきたがまだこれでも足りないらしい。通常の≪飛燕≫程度なら体を逸らされるだけで避けられる。
刹那の見切りって自分ではやるけどやられると理不尽感がすごいな。再度浮かび上がったとはいえ空中で無防備な姿。【暴風】さんが腰を落とし拳を引く。
【 Action Skill-chain : 《正拳突き》 】
拳に風が纏ったかのような勢いの突き。しかしこれを待っていた。
【 Action Skill-chain : 《クロスカット》 】
【 二刀流スキルツリー:Action Skill : 《クロスカット》 】
二刀で交差するように斜めに切りつける。交差の中心点は威力が上昇する。
本来は右手と左手でばってんを作るように切りつけるスキルだけど、【血兎《アルミラージ》】が使うとあら不思議。右腕と右の靴の底に展開した刃にエフェクトが付く。
右腕の剣戟は先に宙を切り、正拳突きがその隙間へ跳んでくる。しかしこのスキルの動作は交差するように切りつける。つまり右脚の底で発動すれば僕の体は右足を軸に回転するように斬撃を放つ、そしてその勢いのまま一回…するのだ。
いやどうしてこうなるかはわからんけどこうなるんだから仕方がない。スキルが一定の動作をするのが悪いよね。
右足から放たれた斬撃により作られた交差の中心に、相手の拳がちょうどぶつかり合う。威力上昇効果も相まって何とか相殺する。
「てめぇいつまで宙に浮いてんだ!」
「あなたがダメージを負うまでですけど!」
じわじわと拳と剣による貫通ダメージで減らし続けているがさすがにそろそろ剣を構えられそうだ。そうなる前に決着を付けなくては。たぶん剣で切られ続けるだけで押し切られる。
【 Action Skill-chain : 《バッシュ》 】
【 Action Skill-chain : 《ステップ》 】
外れスキルと思っていた≪バッシュ≫だけど空中戦においては有効性がある。面での攻撃なので≪スラッシュ≫や≪ラッシュ≫よりも確実に相手に当てられるし、当てられた場合空中判定が切れて≪ステップ≫が発動できる。
少し怖いがここで右腕を振り上げる。相手は当然それを払い落とし、あわよくば僕に掴みかかり引きずり落そうとする。しかしこうも思っているはずだ。剣の射程にしては遠い、しかし振り上げている手は明らかに剣戟の構えだ。なら攻撃を見てからでも……と。
【 Action Skill-chain : 《シャドウアサルト》 】
と思わせての意表外し。相手の目の前で一瞬消え去ることにより意識を一瞬だけ飛ばす。他のゲームでもそうなんだけど、初心者の暴れに困惑するように、本来思ってもみないことをされると一瞬思考がフリーズしちゃうんだよね。相撲でいう猫だましってやつだ。
そしてアサルトと名のついているスキル通り、この後行われるのは強襲で、突撃だ。全身に展開していた刃を右腕に集中させる。本刃まで合わせた最大連結【血兎《アルミラージ》】だ。透明が解除されるタイミングでも連結は終了していないが、問題ない。最後の最後まで温めておいた奥の手だ。
【 Action Skill-chain : 《ダッシュ》 】
【歩法系スキルツリー: Action Skill : 《ダッシュ》 】
≪シャドウアサルト≫の効果時間中に着地したことにより、このスキルを使用することができる。短距離を現在AGIの二倍の速さで走り抜けるスキルなのだが、僕のAGIで使用すればほとんど瞬間移動だ。これを相手の後方側に無理やり撃つ。僕自身目が回るけど、相手も透明からの瞬間移動でほぼ見つけられることはないだろう。お互いに相手がわからない状態でどう攻撃するか。それは
最大射程の【血兎《アルミラージ》】を適当に振り回すことだ。
「なんかしら当たれッ……!」
【 Action Skill : 《スラッシュ》 】
後方を無理やり横に振りぬくように放つ≪スラッシュ≫。何らかにあたった感触がある。さて、これでHPが全然削れていないようならスキルの硬直が重なって確実に僕のデスだが。
沈黙の時間が少し続く。気になって【暴風】さんの方を振り返ると、ゆっくりとこちらに歩んできていた。あの、処刑の時間を……?
と思うと掌を僕の頭の上に乗せ、笑いだした。その顔の上にあるHPバーは、見事半分以上削り取れていた。
あっぶねぇ……。
「おもしれぇじゃねぇか。ちょっとこれ付き合えよ」
というと【暴風】さんは剣をかなぐり捨てて拳を構える。硬そうな籠手とブーツが阻んでいるとはいえまさか徒手空拳とかしないですよね。
【 Action Skill : 《ジャブ》 】
いやそんなことある?
明らかに純粋な剣士プレイヤーが拳で殴り掛かってきた。しかもスキルを乗せて。しかし随分楽しそうな顔をしているのでこっちも受けなきゃいけない雰囲気がある。ここで【血兎《アルミラージ》】とか最大射程で出したら全力で殺されそうだし。
まぁこっちは剣スキルなんですけど。
【 Action Skill : 《ピアス》 】
軽く当ててくるような拳に合わせて右拳側に出した剣で突く。いくら防具に覆われているとはいえ一方的にダメージを当てられるはずだろうけど。
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こちらのスキルに合わせて僕のとも違う、本当に軽いステップを挟みこみ再度ジャブが飛んでくる。このフォームにステップ……ボクシング?
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【 Action Skill : 《ストレート・パンチ》 】
この人なんでこんなに格闘スキルが多彩なんだよ。直撃するとまずいと思いこちらもボクシングのガードのように両手を胸の上あたりに構える。そして腕に展開した刃で無理やり受ける。ぐえっ。防御越しなのにHP1割持ってかれた。ビビらずスキルぶつけるべきだった!
「こういうんやれるやつは少ねぇんだ!気に入ったぞ坊主!」
「僕はこういう戦いは遠慮したいですね!コマイヌです!」
「コマイヌか!いいぞ、手加減してやるからもっとかかってこい!」
そういうと後ろ側に飛んでこちらに手を傾け挑発してくる。わかってますよ、剣を捨ててる時点でだいぶ手加減してるということなんでしょうけど。
その舐めプの代償払わせてやる。もうこっちは遠慮せずぶった切ってやるからな!
拳を構えた状態でこちらの動きを待つ【暴風】さんの前に跳び出す。先ほどまでの剣を構えていた状態ならいざ知らず、現在の徒手空拳状態では後ろを取るような戦い方は難しいだろう。
何回か打ち合って分かったのは僕に似たスタイルではあるけど、僕よりもスキルが豊富、僕よりもパワーがある。ただし僕の方がスキルの扱いはうまいし、速さはある。つまりやりたいこととは相手より早くスキルを叩きこみ続ける。ずっと僕のターンだ。というわけでレッツゴー。
相手の拳を届かせるには遠く、僕の拳も届かない距離。この距離から右腕を振り上げ、エフェクトを纏う。
【 Action Skill : 《スラッシュ》 】
【 Action Skill : 《パリィ》 】
これは読まれていたのだろう。右腕から発動するスラッシュは叩き落とされ不発となる。しかし下段に構えた剣を軸にまたスキルを放つ。
【 Action Skill-chain : 《飛燕》 】
切り下すような動作からの切り上げ。さすがに上位プレイヤーなのでこれが通じるとは全く思っていなかったけど、簡単に避けられるとはそれはそれでへこむ。
【 Action Skill-chain : 《スラッシュ》 】
【 Action Skill-chain : 《ラッシュ》 】
落下するモーション中に斜めに傾き、左腕で≪スラッシュ≫を発動し、さらに右足から≪ラッシュを≫放つ。先にキャンセルを挟むことにより相手の意表を……
【 Action Skill : 《ワン-ツーパンチ》 】
右足で放つスキルを全て左右の拳のコンビネーションで相殺された。クリティカルが出た判定は僕の方がダメージを通せているがそれでも微量、ほぼノーダメージだ。しかも無茶な体勢からスキルを放ったためこのまま落下すると敵の前で寝転がる姿を見せることになる。
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というわけで左膝に展開した刃からまた飛び上がる。集中しすぎてお互いの動きがスローモーションのように見えてきたがまだこれでも足りないらしい。通常の≪飛燕≫程度なら体を逸らされるだけで避けられる。
刹那の見切りって自分ではやるけどやられると理不尽感がすごいな。再度浮かび上がったとはいえ空中で無防備な姿。【暴風】さんが腰を落とし拳を引く。
【 Action Skill-chain : 《正拳突き》 】
拳に風が纏ったかのような勢いの突き。しかしこれを待っていた。
【 Action Skill-chain : 《クロスカット》 】
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二刀で交差するように斜めに切りつける。交差の中心点は威力が上昇する。
本来は右手と左手でばってんを作るように切りつけるスキルだけど、【血兎《アルミラージ》】が使うとあら不思議。右腕と右の靴の底に展開した刃にエフェクトが付く。
右腕の剣戟は先に宙を切り、正拳突きがその隙間へ跳んでくる。しかしこのスキルの動作は交差するように切りつける。つまり右脚の底で発動すれば僕の体は右足を軸に回転するように斬撃を放つ、そしてその勢いのまま一回…するのだ。
いやどうしてこうなるかはわからんけどこうなるんだから仕方がない。スキルが一定の動作をするのが悪いよね。
右足から放たれた斬撃により作られた交差の中心に、相手の拳がちょうどぶつかり合う。威力上昇効果も相まって何とか相殺する。
「てめぇいつまで宙に浮いてんだ!」
「あなたがダメージを負うまでですけど!」
じわじわと拳と剣による貫通ダメージで減らし続けているがさすがにそろそろ剣を構えられそうだ。そうなる前に決着を付けなくては。たぶん剣で切られ続けるだけで押し切られる。
【 Action Skill-chain : 《バッシュ》 】
【 Action Skill-chain : 《ステップ》 】
外れスキルと思っていた≪バッシュ≫だけど空中戦においては有効性がある。面での攻撃なので≪スラッシュ≫や≪ラッシュ≫よりも確実に相手に当てられるし、当てられた場合空中判定が切れて≪ステップ≫が発動できる。
少し怖いがここで右腕を振り上げる。相手は当然それを払い落とし、あわよくば僕に掴みかかり引きずり落そうとする。しかしこうも思っているはずだ。剣の射程にしては遠い、しかし振り上げている手は明らかに剣戟の構えだ。なら攻撃を見てからでも……と。
【 Action Skill-chain : 《シャドウアサルト》 】
と思わせての意表外し。相手の目の前で一瞬消え去ることにより意識を一瞬だけ飛ばす。他のゲームでもそうなんだけど、初心者の暴れに困惑するように、本来思ってもみないことをされると一瞬思考がフリーズしちゃうんだよね。相撲でいう猫だましってやつだ。
そしてアサルトと名のついているスキル通り、この後行われるのは強襲で、突撃だ。全身に展開していた刃を右腕に集中させる。本刃まで合わせた最大連結【血兎《アルミラージ》】だ。透明が解除されるタイミングでも連結は終了していないが、問題ない。最後の最後まで温めておいた奥の手だ。
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≪シャドウアサルト≫の効果時間中に着地したことにより、このスキルを使用することができる。短距離を現在AGIの二倍の速さで走り抜けるスキルなのだが、僕のAGIで使用すればほとんど瞬間移動だ。これを相手の後方側に無理やり撃つ。僕自身目が回るけど、相手も透明からの瞬間移動でほぼ見つけられることはないだろう。お互いに相手がわからない状態でどう攻撃するか。それは
最大射程の【血兎《アルミラージ》】を適当に振り回すことだ。
「なんかしら当たれッ……!」
【 Action Skill : 《スラッシュ》 】
後方を無理やり横に振りぬくように放つ≪スラッシュ≫。何らかにあたった感触がある。さて、これでHPが全然削れていないようならスキルの硬直が重なって確実に僕のデスだが。
沈黙の時間が少し続く。気になって【暴風】さんの方を振り返ると、ゆっくりとこちらに歩んできていた。あの、処刑の時間を……?
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