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六話

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【紫電纏う至高の二槍】
  称号 アヴェンジャー
  LV:??

 二本角が大きくなった。というだけの変化であったのならこれほど警戒しなかっただろう。
 まず名前が今までのスライムだのイッカクウサギだのと違う。気合入りすぎでしょうかなんだそのキラキラネーム。

 泥の塊は先程までと同じウサギの姿を模したみたいだけど、二本角よりもなお大きく、大型の獣というよりは車などと比較するほど巨大になった。その背中は血を被ったように不自然不規則に赤く染められている。

 何よりも離れて立っているはずなのにここにまでくるピリピリとした静電気。二本の角は紫色の電気を増幅させるようにバチバチと

【 Action Skill : 《紫雷槍》 】

 目の前と一緒で思考が空白になるほどの眩い電撃。脳をほとんど介さない電気信号はとにかく回避を選択した。初期ポイントを全て振ったAGIの全力をもってしてもギリギリのところで避ける。
 電撃の槍は僕が先ほどまで立っていた地面を焦がす……いや土が少し融解するほど高温になっていた。
 これ初期VITとかいう問題じゃなくない?

 ウサギ型モンスターが遠距離攻撃とか僕ちょっとそういうのどうかと思います。

【 Action Skill : 《紫電一閃》 】

 突進の強化版、というような簡単な変化だったらどれほど楽だっただろうか。まさしく雷。溜め動作すらなく唐突に光ったかと思うとすでに突進していた。

 まぁ光った瞬間にとりあえずステップ使ったらギリギリ避けれたみたいだけど。
 でもそうだな。ただ来るだろうなと予感だけで避けたので起点からやられていたら普通に当たっていた、なんとなくそんな雰囲気がある。

 当たり前だけど、ボスモンスターということは倒せない敵ではないのだろう。攻略を前提に作られた攻撃だ

「今やれることはひたすら行動パターンの解析……突進前は光る。雷の槍の前は角がバチバチする」

 あまりの速度にウサギすら対応できていないのか一瞬だけ僕を見失ったみたいだったので、今のうちに二本角戦で得たステータスを割り振る。VIT上げても意味なさそうだしINTもHPもMPも意味なさそう。触れれば消し炭だし。

 AGIでいいか。

【コマイヌ】
 称号 【駆け出しの冒険者】
 BLV:5
 CLV:5

 H P《Hit Point》 : 500
 M P《Magic Point》 : 100
 STR《Strength》 : 10 +2
 VIT《Vitality》 : 10
 DEX《Dexterity》: 10
 AGI《Agility》 : 10 +56
 INT《Intelligence》: 10


 ここから一番困るのは二本角がやってきたみたいなスキル連携だけど……さてどうくる。
 電気ウサギは蹴散らすべき羽虫に二回も避けられたのが意外なのか、様子見をするように二本の角に雷を貯めている。遠距離攻撃なんて悠長な攻撃しているならこちらから行かせてもらおうかな。

 身を伏せながら前方へ、ウサギの姿勢を低くした状態で前に飛び出す。相手は少し予定外だったのか逡巡するも、どうせ攻撃するなら同じだと言わんばかりに雷撃を飛ばす。

【 Action Skill : 《紫雷槍》 】

【 Action Skill : 《ステップ》 】
【 Action Skill-chain : 《ラッシュ》 】

 電撃を飛ばす瞬間にスキルを発動。すぐさまスキルを連携させる。電撃を扱う際に角が光るのは確定みたいなので、読めていた動きなら見てからでも回避が間に合う。

 二本角の時同様に足や背中、頭を刺していく……が一切ダメージを通せた気がしない。どれも剣が突き刺さった感触がなかったのだ。全部弾かれてる気がする。

 今だけはリアル志向とかいいからHPを見させてほしい。もしくはHPを見るスキルでもいい。

 電気ウサギの中で僕は羽虫からちょこまか動く羽虫程度には進化できたようで、その巨体を活かしたタックルで押しつぶしにきた。
 平面で捉えようと言う作戦だろうけど、スキルも電気も乗せていない攻撃なら簡単に躱せる。確かに横にも後ろにも回避しづらいけど上……背中側ががら空きだった。

 今までの小さいウサギとは違い、車と比較するほど大きな背中の上にしがみつく。
 首、関節、目玉、とにかく生物なら通りそうな部位に攻撃を繰り返すが頭は電気を纏った角が防御し、他は首や足の関節、臀部にいたるまで効いた気配がない。

 振り落とすのを諦めたのか電気ウサギは立ち止まった。何をする気だろうと警戒し攻撃の手を止めると角がバチバチと輝き出す。

 嫌な予感を感じ背中から飛び退く。超小規模な暗雲が空に立ち込めたかと思うとスキル発動のログが流れる。

【 Action Skill : 《雷牙咬差》 】

 ウサギなのに牙ってなんだ。前歯かなあれ、ずいぶん大きな前歯だな。
 雷は雲とウサギの角から放たれ交差し、辺りへ電気を撒き散らした。死角に行くと雷の範囲攻撃、距離を取ると遠距離攻撃、足を活かそうとするとそれを超えた速度で突っ込まれる。AGI振りが相性良かっただけで他に振ってたら10秒で蒸発しそう。

 うーん、詰みか。でも全部避けれてるし。とりあえずレベル不足というか単純な数値不足を感じる。多分こんな序盤で戦う敵じゃないんだろうな。

 しかしそれはそれでなんだか悔しいので抵抗だけはしてやる。鼠窮して猫……じゃなくて犬窮して兎噛むんだ。

 それただの猟犬だ。

 一番避けやすい遠距離攻撃はこちらが遠距離攻撃がないので無し、突進は一つでもミスしたら即死なので無し。
 背中だな、ずいぶん行動パターンが多いAIみたいだけどいずれまた平面タックルをしてくるはずだから。それまでは回避に徹してレッツ討伐。まぁまだスキルありそうな気がするけど!

【 Action Skill : 《紫雷槍》 】

 集中していたので回避。このときばっかりはAGI振りで良かったと思う。

【 Action Skill―chain : 《足刈―瞬―》 】

【 Action Skill : 《ステップ》 】
 未見だったスキルに対してこの段階でステップを切らされた。二本角の時とは段違いの速度で繰り出されるスキル。ステップのクールダウンまであとは自力で避け続けるしか…!

【 Action Skill―chain : 《紫雷槍》 】

 嘘でしょクールダウンとかないのウサギさん。まさか二本の角の一本ずつでリキャストが違うとかそんな理不尽なことある!?
 横に転がるように避けることで背中を焦がすまでに留めれた。相手もさすがに硬直があるようで追撃はなかったけど今のでまたHPが半損だ。ポーションポーション。

 相手スキルにもクールダウン時間はあるようでタックルが来る。
 うおおおおその角折ってやるうううううううう!

 ◇

 案外折れた。スキルを何十回と打ち込んでやっと一本折れた。でも折ったら常時雷を全身に纏うようになった。攻撃すると感電します、電気ウサギが走った場所は電気の道となりその上に立つとスリップダメージを喰らいます。電気の道の上を雷の槍が通ると大きくなります。上から雷を降らす攻撃は電気の道全体へ通電します。

「第二形態まであるとは……」

しかも第二形態がキツすぎる。AGI振りじゃないと避けれないしVITに振らないとスリップダメージすら耐えれない。救いがあるとすると第二形態は攻撃が通りやすくなっているようだ。剣は刺さった

しかしもうポーションもなくなりスリップダメージすら回復できない。剣も角に当て続けたのでボロボロだ。

「次は二本目の角まで折ってやる……」

リベンジを誓い剣を構える。電気ウサギはトドメに雷を纏い突進する、僕は剣を合わせ振り抜く。



『復讐は為された。獣は盟約に従い命を捧げる』

『ボスモンスターが消滅しました』


まっすぐ僕を貫いた電気ウサギは血に伏せると消滅していく。
あ、戦っただけで経験値入るんだ。
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