素敵な贈り物

旅里 茂

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                             旅里 茂



 今日は土曜日。サナは、いつものように、郵便受けを見に行きました。
お父さんが「何か来てるかー?」と、居間から大声で言ってくるし…。
もう、今見ようとしているのに!とぷんぷんしながら覗いて見ました。
すると電気代の紙と葉っぱのような、不思議な手紙が入っていたのです。
裏を返すと「サナさんへ」と書いていた事に、ちょっと驚きました。
なんだろこれ?新しい詐欺かな?
取り敢えずお父さんの処へ行き、「こんだけしか無かったよ」と何故か葉っぱのような手紙は渡せなかったのです。
お父さんは、「うわ!電気代かー。もっと良いものが入ってたらなー」と愚痴をいっています。
お母さんは台所から「今月、幾らになってる?」とお父さんに聞いています。
「あらー、また値段が上がってるわ」不服そうに言いながら、台所に戻りました。
サナは例の手紙を持って、自分の部屋に行こうとするが、お母さんが「サナ、もう朝ごはんよ」
「うん、部屋に行くだけだから…」そう言って、部屋に駆け込み、郵便物を開けて覗いて見ると、其処には森が見えたので、驚きました。絵葉書?
なんだか不安になった気持ちと、ワクワクする気持ちで複雑な思いを感じます。
指を入れたその途端、びゅーと風が部屋に流れて、サナは葉書の中に吸い込まれたのでした。
一瞬、目が回って、少し落ち着いて辺りを見回すと、不思議な光景が広がっています。
其処へ一匹のリスがやって来てこう言いました。「ようこそ!動物の楽園へ」
わぁー、リスが喋ってるー!サナは動揺し、早く部屋に戻りたいと願うも、あの手紙がありません。
それを見たリスは、「まぁまぁ、落ち着いて下さい、サナさんはここへ招待されたのです」
招待?なんで?
「それは後程お伝えします。こちらへどうぞ」
仕方がないので、云われるままに着いていったのでした。
すると一つの大きなたけのこに似たお家があって、その中へとリスと入ったのでした。
サナが入ると一斉に視線が注がれて、「やぁ!ようこそ!サナさん」
大きな熊が帽子を脱いで挨拶をしました。
「あ、お、お早うございます…」其処で思いだしたのです、朝食を食べなければいけない事に。
「あのう、直ぐにお母さんに朝ご飯を食べるように云われているんですけど…」
熊はもう一度会釈して、こういいました。「大丈夫です。朝食前には戻れますから」
でもでも、サナの時計は既に八時半を回ってる。どうしよう。
そんな様子を眺めていたきつねが「大丈夫だい!俺たちを信じろって!」
それが出来たら苦労しないよ。
「まぁまぁ、こちらの席にどうぞ」大きなイタチが椅子に付かせてくれたのですが、ま、いいかとサナの軽さが出て来て、ワイワイしている動物たちを眺めやったのです。
其処へ狸が出て来て「さぁ、本日のメインイベント!御二方どうぞ!」
そこで、スポットライトが当たって、二匹の子猫が姿を現しました。
あれ?どこかで見覚えのある猫たちだ。
「サナさーん。久しぶりです!」二匹は揃って挨拶をしました。
あっ!あの時の子猫たち。
それは一週間前の事でした。雨が降る土曜日の午後、段ボールに入った二匹の猫が濡れていて、にゃーにゃー力弱く鳴いていたのでした。
サナは買ったばかりの、お気に入りのハンカチで二匹を拭いてあげて、傘を掛けてあげました。
自分も濡れましたが、全速力で家に帰りました。
そうだ!あの時の子猫たちだ。良かった。助かったんだ。
二匹はサナに洗濯したであろうハンカチと傘を渡してくれました。
「あの時は、本当に有難う御座いました。私たち兄妹はあれからある人に拾われて、今とっても幸せに暮らしています」
「もしも、サナさんに出会わなければ、生きていたか判りません。本当に有難う御座いました!」
そこに居た動物たちは、一斉に拍手をしました。
子猫二匹は、サナの手を取り、豪勢な食事をすることにしました。
宴が始まってかなり時間が過ぎたけれど、皆の言葉を信じて楽しみました。
子猫たちは、最後にいつでもここに来れる、例の葉っぱの手紙を渡してくれました。
「また、サナさん、皆さんとお会いして下さい」そう言って、最後の締めくくりとして、もう一つ、もみじの葉をくれました。
これは、この世界を眺める事が出来る葉っぱだよ。
思わず、サナは泣いてしまいました。
猫たちと動物たちが、こんなにも優しく接してくれたのが嬉しかったのです。
皆もそんなサナを見て、ホロリと涙を流しました。
葉っぱの手紙を広げてみると、お母さんたちが、まだ朝食の準備をしている処です。
きつねが自慢そうに「だから言ったろ!さぁ、皆、一旦さよならしようぜ」
「サナさん、こちらに来たように葉っぱを広げて指を入れて下さい」
サナは云われるままに、そっと指を入れました。
そして、気付くとサナの部屋で椅子に座った状態で寝てました。
お母さんの声が聞こえます。「サナ、まだかい?もうお椀に添いだよ」
はっとして、「今行く」あれは夢だったのでしょうか。でも、そうじゃない事に直ぐ判りました。
あの時のハンカチと傘と、そして葉っぱの手紙、もみじの葉がそこにあったのでした。
サナは元気いっぱいに、動物たちとの友情を大切にすることを忘れてはいけないと思う様になりました。

                                 完
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