黄昏の国家

旅里 茂

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日本政府の闇

黄昏の国家37

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しかし、法務の一人物がそれらを掌握出来る訳がない。
だとすれば、日本政府が内容を把握したうえで、沢崎を高沢に連絡を伝える役を果たしたのか。
それが正解に近いものだとすれば、IRで受けた資金を横流ししている事になる。
国家的にやはり第二の軍隊を日本政府は目論んでいるのだろうか。
情報監視部の幹部、韮崎健斗がある情報を伝えた。
「近年、自政党のタカ派が立ち上げた、『幽玄の会』というものを精査しておりました。此の会を立ち上げたのが、自政党幹事長の田滝友禅という人物です。現状では消費税の分割化・特別給付金の囲いを謳っていますが、実際はIRから売り上げ3%取り上げております」
ざわつく会議室内。
「ちょっと待って下さい、韮崎監視官。明らかに違法行為ですよ。何故、公安が動かないんですか?」
その言葉に韮崎は苦笑いをしながらこう告げた。
「日本政府は米国と『IR共同スワップ協定』成る物を極秘に結んでおりまして、3%だけではなく、それ以上に横流しをしております」
高沢がそこに入って「すると何か、米国と共同で軍事部門を創立させる為、オーイックスを利用して、IRの金を流しているのか?」
「その通りです、リュクスタ」
国家の信用というのは何処までも非道だなと思いつつ、それならば国民に伝えていた、児童教育の強化や介護体制のさらなる充実とは一体何なのか。
現実にそのような事がまかり通ること事体、この国の行く末はどうなるのだろうか。
しかし、飲み込むには危険過ぎるのではないか。
もし、これらの情報が予め設定されているとしたら、オーイックスがその罠にはまっているとしたら、どうする?
一定の短い時間が沈黙にあった時、軍事確定委員会の理事、磯部圭太が発言した。
「これは寧ろチャンスかもしれません」
そこに居た全員がざわついた。高沢が問う。
「どういうことか、磯部理事」
磯部はある事を考えていた。「表向きは我らオーイックスが第二軍事部門を立てる事に日本政府は判っております。だとすれば、堂々と特殊戦闘機などの開発費も表から堂々と得る事が出来ます」
韮崎がそれに異論を唱えた。「もし、その計画自体がオーイックスを潰す為の口実としたら、どうします?」
磯部がそれについて答える。「確かに何重もの罠を張られている可能性は否定出来ません。が、いざとなれば証拠になる沢崎の会話を公開して、IRの米国との裏取引に関する内容を、世間に晒せば良いかと…」
そうなれば日本政府が大打撃を食らう事になるだろう。
しかし、このまま磯部の言う通りに進捗すれば、事は形式通りに運ぶだろうか。
此処は『機密隊』を指揮している尾本に探りを入れる様、指示した。
只、今回は可成り苦心するに違いない。
相手は日本国の中枢である。機密隊の動きを掴まされば、大きな問題として取り上げられる。
オーイックスも解体させられるかも知れぬ。
危険な賭けではあるが、内情をどうしても把握しておきたい。

一方、沢崎は高沢に釘を刺しつつ、川崎内閣副総理に電子メモで連絡を取っていた。
オーイックスの潤沢じゅんたくな資金を元に日本政府が米国との軍事費のまかないを賭けての大勝負と言う、大いに馬鹿げた勝負事を計画している事を話しているのだ。
「沢崎くん、今回の話、上手くいっているようだね」
川崎は二重の盾を構えていたのだ。
「はい。オーイックスの資金を使用すれば今の米国には負けません。もっとも高沢が気が付く訳もありませんが…」
それについては川崎は逆に釘を刺した。
「沢崎くん、高沢くんを侮ってはいけないよ。彼は勘のいい男だ。くれぐれも用心するように」
そうして電子メモの回線を閉じた。
ふん、オーイックスの高沢がどれ程のものか。沢崎は成り上がりと卑下している。
それもその筈で、沢崎の経歴は東大を首席で卒業し、更にはハーバー大の総務研究室に入学したエリートである。その後、直ぐに法務省に入省、自衛軍の研究をしていた。
その頃、機密隊がギークの子供たちとの共同戦線で、日本政府に探りを入れる準備をしていた。
機密隊には初めての認識阻害システムを装着し、云わば見えない部隊として侵入する。
これは赤外線やニュートリムセンサーにも反応しない。
そこへギークたちが指示を行うというもだった。黄昏の国家第三十七章
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