黄昏の国家

旅里 茂

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情報戦線

黄昏の国家31

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ありえない話ではない。
国防大臣ともなると、オーイックスはまだ赤子だ。そんな相手を本気にするだろうか。
しかしながら、川崎や安形が対応した事実もある。
卑下にされている可能性は捨てられないが…。
「兎に角、現状を確保して、純国産機の取り付けをしなければいけない。それは今後のオーイックスの有り様を占う事にある。頼んだぞ」
尾本は一瞬、息を飲んだが「判りました」とだけ応答した。
果たして、角安の言葉が国防省を動かしたのか。それとも荒木が絡んでの事なのか。確かな事は判らない。
純国産にこだわるのは、今後、オーイックスの軍需産業を世界に知らしめるチャンスだからだ。
此処でわやにしてしまうのは、決してそうさせてはならない。阻止のみである。
その間にやらなければならない事がある。
ギーク達を使って、イギリスのジェットエンジン開発元である、「ロイス・ランド」社のサーバーに侵入し、事を確かめる。
勿論、国際上スパイ防止法に抵触する。だが、これらは各国が行っており、特に激しいのが、中国共産党である。
仰天する内容は、堂々と認め、国際上の場であっても他国を攻撃する、無法な対応をしてくる。
ならずモノ国家とはよく言ったのもので、中国民主改革党がその度に謝罪をしている。これも中国共産党の攻撃が激しく、各都市で小さな衝突を起こしている為、国連が介入しようとするが、中国共産党とロシアが否決にまわる始末だ。
最早、中華人民共和国とは仮の名で、欧米や日本からは中華民主改革国と揶揄される始末である。
その状況から、英国の情報機関であるMI6がどこまで食い込んでいるのか。
もし、これが荒木のフェイクなら、簡単な話となる。
だが真に英国との共同となると、オーイックスの存続が微妙な位置関係となる。
日本政府有ってのオーイックスなのだから、愛国で有れその他の国で有れ対応は非常に苦しいものとなる。
ギークたちがサイバーアタックを掛けている。その様、異様だが、彼らの能力は常人を凌駕している。
やがて英国の国防省の内部に食い込むことに成功した。
問題は足跡を付けない事。これが解ってしまえば国際的に非難を受けるのは必至である。
その中にある、データベースを一からではなく、荒木が指し示した僅かな情報から探りを入れる。
量子コンピューターのセキュリティプログラムが走査しているが、それに触れずに渡り歩くのは至難の業である。
但し、ギークたちには、それは苦ではないらしい。
時間が経つ程、感知されやすくなる為、短時間でのハッキングが要求される。
ギークの一人がそれらしい情報の内部を確認した。
コピーガードが施されているが、そこを難なく突破したのは流石である。
データを引き落とし、痕跡を消し去る。
その時間、僅か三十分弱である。高沢を始め、そこに居合わせた職員が感嘆する。
只、本当に痕跡を追跡されていないか不安要素は残る。
かのMI6である。ここまでこれたのは奇跡に近い。
幾ら十五か国を経由して侵入したとしてもだ。

抜き取ったデータを精査する。
其処にあったのは日本政府と英国国防省とのやり取りである。
Fー7のエンジン政策における覚書と、荒木が深く関わっている事を示す詳細な内容が記録されている。
やはり荒木本人が関与していたのか。
角安を始め川崎副次官も、純国産を謳っていた。
これが、今の日本の現状なのだ。
与党内であっても全く一枚岩ではない。
複雑な政治的内面を、派閥抗争や国外勢力との繋がりなど、様々である。
川崎に連絡を取る方法も模索したが、前回の事がある。
角安については、連絡が取れない。この事態にどう行動を取れば良いか。
その時、尾本率いる「機密隊」からの情報が上がって来た。
其処には興味深い情報がいくつか上がって来ている。
まず、角安が軟禁状態にある事。これは賄賂の件で差し込まれた可能性がある。
どちらにしても連絡はとれまい。
もう一つは、外務省外部公安自署の川田が、離反するような態度を取っている事。
中にはその他、国防省の数人が異議を唱えている事だ。
高沢はこれをチャンスと捉えた。
これ機に角安に貸しを作っておけば、こちらの駒となる。
荒木に専用回線を使用して、再度コンタクトを取ってみる。
角安の件を持ち出して、釣り上げる。これに掛かれば上等だが…。
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