黄昏の国家

旅里 茂

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オーイックスの巡行

黄昏の国家29

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これはオーイックス内でも極秘扱いさせている内容だが、空中戦艦の発展には必要不可欠な案であること。
こういう話であれば絵空事として、失笑を買うかもしれないが現実に向かうための制作試案は既に出来上がっていた。
原理や浮遊装置の内訳だが、先に述べたCo2光合成エンジンが大きな役割を持つ。
二酸化炭素の原子同士を反発させる技術を既に手にしている。問題点は幾つもあるが、これが解決すれば『アルバルト特殊合金』が戦艦の全体像を覆う。
これは、通常の合金の1500倍の強度を持ち、軽さにおいてはジュラルミンより1/5も軽い。
ロシアでさえ解読出来なかった合金だが、オーイックスと栄重工が内需で制作していた。
栄重工は20年前に発足した重工業会社だが、世界中で研究が進められていた、核融合炉を世界で初めて成功を収めた企業である。
これにより原発は不要となり、僅かな試料で絶大なエネルギーを人類は得る事に成功した。
勿論、完成したものを単純に政界に分ける、という事でなく可成りの混乱をもたらせたのも事実である。
世界的な技術と科学の進歩は目まぐるしいが、オーイックスが最終的に目指すのは、『世界の安定期』というものである。
安定期と一言で言っても、何に対するものなのかは、一人一人によって違いがある。
オーイックスが求めるものは、世界中での内乱やジェノサイド、難民問題、エネルギー問題など、多岐に渡る。
これらを全て解決する事が、本当の意味での『世界の安定期』である。
一部の職員からは、「宗教的」と野次られることもあるが、オーイックス幹部は本気で身構えている。
その頂点に今立っている高沢も例外ではない。
オーイックスという準政府組織がいつまで続くかは分からない。
先の話にもし、オーイックスが空中戦艦を持つ次元になった際、戦闘機は日本航空自衛軍Fー6を当面、運用しようという目論見がある。その前にFー7以降が完成している場合もあるが…。
水面下で既にオーイックスと日本政府との間で、交渉が進んでいるが懐疑的な与党議員からは、金の無駄遣いだと揶揄されている。
但し金の無駄遣いは、日本政府の今に始まったことではない。
絶えず「バラマキ」と言われた政策を、日本政府は未だにやっている。
それを喜ぶ人、困惑する人、反対する人、様々ではあるのだが…。
オーイックスと国防省との繋がりが強くなっている事が、現在の状況である。
Fー6は当時の内閣の肝いりだったが、米国の干渉でまたしても純国産とはいかなかった。
それでも性能面で言うと、コーマーステルスと衛星とのリンク攻撃など、多彩な機能が凝縮している。
但し、肝心な部分はブラックボックスになっており、不具合が出た場合は米軍がそれに当たる。
だからこそ、Fー7では必ず、日本の手で完成を夢見ているのだ。
オーイックスも日本政府とは別に、特殊作戦機の制作を模索している段階で有った。
これも極秘事項であり、現在ではオーイックス内でも知る者は少ない。
九州地方に建造したビッグ・スリーには、ロケット発射管制塔の建造を行っている。
既にビッグ・ファイブ迄完成しているのだが、ビッグ・スリーは宇宙監視部隊の現場にもなる為、工期が少し遅れている。
その他のビッグ・フロート計画は順調に進み、多少のいざこざは在ったものの、海運と海洋の部分については、従来通りの進行を成し遂げた。
最終的にはビッグ・ツゥエンティまで建造を計画しているが、資金練と存続政索に大型プロジェクトも考えねばならない。
既に、養殖業であるプランは大成功を収め、近隣の行業組合からその道の議員までを取り込んで、運営を賄っている。
他では、Co2光合成電源による大手への手配。これが大きな収益を生んだ。
また、海洋であるが、海水の小型完全ミネラル水への変換システムが、多くの国への手助けになった。
これには日本政府も乗っかり運用を共同で発注を掛けている。
但し、政府のブレが結構有る為、その流れをオーイックスが訂正する事も屡々しばしばあるが、デフレからの脱却に成功したのも、実の処、オーイックスの介入があったからだ。
既にCo2光合成電源の運転が、神戸市をモデルに始まっており、当初、近畿電力がそれらに猛反発をしたが、結局は政府のごり押しで通してしまった。
云わばオーイックスにしては日本政府を隠れ蓑にして、対応している部分もある。
実際、自治体から割り当てられた一家に一台、Co2光合成電源を使用してもらっているが、それだけで発電するので、電気代がかからないのが大きい点だ。
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