黄昏の国家

旅里 茂

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大国の負

黄昏の国家27

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オーイックスでは対応に追われた。
防衛ビッグ・マーカーの沢田は怒りを抑えるのがやっとだった。
高沢にも連絡が入り、直ぐにでもロシア側に事の真相を吐いて貰う勢いだった。
日本政府も外務省の面々が亡くなった事に気付かされ、流石に看過出来ないと判断、外務省を通じてロシアに最大の抗議を入れた。
それでもロシア外務省は責任は日本側にあるとの一点張りで、状況が極めて悪質として、ロシア大使を召喚した。
可成りの緊張感をもってして、逆にロシア側から断交も辞さないとの脅しを受ける。
日本の国事大臣である安形健は、冷静さと冷酷さを併せ持つ人物で、今回の事案については徹底して調査する旨を叩き出した。
まず、ロシア側に遺体の回収と、その経緯になった部署を徹底して公開するように通達した。
もしも、平然と虚言をするならば、力ずくで対処すると豪語した。
実際に陸上自衛軍においては戦闘車、48式機動戦車、51式特務レーザー砲車両、四足式攻撃車、エスティ戦闘ヘリの一部を北海道の先端に配備しつつあった。
また海上自衛軍に置いては納沙布岬に、駆逐艦二隻、強襲揚陸艦二隻、攻撃型原水潜水艦を六隻を展開しつつあった。
また、敵攻撃基地破壊命令も出し、いつでもロシア領におけるミサイル基地を攻撃出来る手筈を整えた。
核はまだ持っていないが、それは表向きで既に三十年代初頭に、米国から極秘で水爆のデータをスーパーコンピューターにて解析、所持する事に成功している。
勿論この事実を知っているのは、米国と日本政府だけである。
国民にも特例の人物以外は公表は一切されていない。
原子力発電を停止してから十四年程が経つが、プルトニウムの保有量は世界でも有数である。
これはロシアに対し、日本が本気で有る事を物語っている。
しかし実際には中越総理が川崎副総理と密会の上、オーイックスの名称を各部分に使用している事が判明する。
要はいざ責任問題に発展すると、オーイックスにそれらにおいて押し付ける手筈となっていた。
機密隊の情報で直ぐに、それら日本政府の情報を受けた高沢はロシア外務省に準政府特権で非公式に連絡を取った。
今回発生した事案に、日本政府が既に核を持ち合わせている事、先制攻撃に出るやも知れない事も暴露した。
ロシア政府としては、ここはオーイックスとの調停で日本政府の振り上げた剣を仕舞わせた方が方策と思案したのだろう。高沢の意見に則り、被害者の遺骨と讃岐の情報を全て渡すことで、幕引きをしようと判断した。
この条件が元で、日本政府は自衛軍に対して撤収を掛けざるを得なかった。
この一件で日本政府とオーイックスとの間に、少なからず亀裂を受けたこととなる。

ロシア外務省からの讃岐のデータを解析するのは、ギーグであるサキナが本部長として体制がとられた。
只、本部長という肩書だけで、実際は沢田に完全な指揮権がある。
それと永井が忌野の際に防衛ビッグ・マーカーに送信された大量のデータを、確認作業として追われた。
サキナ率いるギーグたちは、黙々と作業を熟したが、長いが見た通りのデータを確認して、一人が発作を起こしたのだ。
内容を多田たちが確認すると、人と思しき姿をしているが、電極や腕が四本あるもの、頭が二つ付いているものと、驚愕する映像があった。
一人は直ぐに保険班に拠って、救護室に運ばれた。
「こんな研究をしていたのか?」多田たちは恐怖を感じていた。
ロシアという国の恐ろしさを目の当たりにしている。サキナがこれを見てと言った。
其処には、低能者、管理所と人体改造のデータがきめ細かく記録されていた。
どうやら、知能数の高い者たちだけに市民権を与え、それ以外の人物には実験道具にする、そんな研究を重ねていたのだろう。
そこで、班の一人が疑問に思った。
「多田主任、ロシアはこれらの情報が抜かれる事を事前に察知している筈です。何故、それらを大人しく開示、或いはデータの破壊を行わなかったのでしょうか?」
多田もそこが引っかかっていた。
「現状、ロシアはこんなえぐい事をしていながら、体制が中国と同じく、可成り資金練りに危険と言われていたからな。だからと言ってこれだけの負になる情報を何も手付かずでこちらの通りにするのは、正直に言って判らん」
サキナたちが、データの一部に興味深いものを発見した。
中国共産党と結託して、大国構想というものを立てている、としている。
益々混迷を極める内容だったが、裏を返せば自国だけでは持たないという事か。
大国構想というのは、2020年後半、中国が一帯一路というのを打ち立てた。
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