黄昏の国家

旅里 茂

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核の正体

黄昏の国家12

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高沢は防衛救急隊が既に出動していることを確認後、現場に索敵チームを送らせた。
一刻も被疑者を確保して、事の状態を収集したい。
索敵チームより連絡が入る。「こちらデルタワン、被疑者と思われる人物を二人確保!」
状況からして北朝鮮の人物と判明する。
公安も動いている。全てをオーイックスが管理することは出来ない。
すぐさまテロの容疑者を公安に委ねる。
救急隊も入り、オーイックスの救護隊も活動に当たった。
現状の酷さに目を背けたくなるが、人命第一である。
一人一人にトリアージを付けて、それぞれの所轄に搬送するが、オーイックスの現場での簡易手術室車が到着し、ことに当たる。
火災は次第に小康状態となり、警察と消防の現場検証が入った。
使用された爆発物は、TNT火薬であることが化学班の調べで判った。
日本政府は直ぐに、大規模テロとして緊急対策本部を設けた。
国内を始め海外でも大体的に報じられ、テロが身近で発せしうる恐怖を共有した。
これがまだ、始まりの序章なのか?こんな惨事を起こし、更に壊滅的な兵器を使用する。だが、絶対に防がなければいけない。
突如、ビジョノートから連絡が入る。角安からであった。
「どういう状況かね。TVでは可成りの規模のテロだと判断しているが…」
高沢は今回の事件が、先にある目くらましと伝えた。その根拠はサキナたちの言葉しかないのだが。
「それは、例のギークたちか。過信過ぎるのではないかね」
それを聞いて反芻する自分がいる事に気付いた。サキナたちの判断を今一度、振り返っている。
そして「最初は私も疑心暗鬼でした。しかしながらギークたちが言う、核攻撃の意味を今一度考えております」
しかし、角安は不信感で一杯だった。「ギークと言っても所詮は子供の戯言だと思うがね、今の北朝鮮を操る中国がそんなことをして何になる?」
だが、何とも言いようのない不安が高沢の脳裏に過る。
高沢の中で静かに事態を吸収することを願った。
「角安副次官、私は自分の今の立場を無くしても構いません。どうか残りの時間を私に託して頂けませんか?」
角安は少しの時間を置いて、「判った。事態が起きてからでは、全ては無に帰す。お前さんの言葉とギークたちを信じようじゃないか」
「有難う御座います。引き続き警戒に当たります」
軍需コントロール室にすぐさま戻り、サキナたちに再度再開する。
「あと一日と二十一時間。必ず二発の核がここへ飛んでくるわ。でも、大丈夫、防いで見せるわ」
高沢の心を読んだのか、先程より話し方が柔らかいようだった。
その頃、防衛ビッグ・マーカーでは、妙な動きをする二つの衛星に注目が集まっていた。
「これは中国製の軍事衛星みたいだな。なんで降下している?」
量子コンピューターを介して計算を始める。
すると妙な一致点を探り当てた。此の軌道でもし地上に落ちるとしたら、此処ビッグ・ワンであることは間違いない。
更に、衛星のデータをネットワーカーという資料内容を、自動的に習得する機器で調べた処、両機共に原子力で動いていることが分かった。
沢田は驚愕した。まさにギークたちが予見したことが、この二つの衛星の事ではないか?
では、迎撃しても濃度の高い放射能汚染が広範囲に広がる。
「そうか!それでニュートリノ・レーザーの照射を求めたのか」
では、北朝鮮と中国の取り分はなんだ?何をこれで得る?疑問が残った。
しかし、衛星は確実にビッグ・ワンに落下する。
間違いない、沢田は直感した。すぐに高沢に連絡する。
「リュクスタ、今、不審な衛星二機を確認しました。軌道を下げながらゆっくりと降下しています。ギークたちが予見したのは、実はこの衛星ではないかと…。」
高沢はその言葉で話を繋げた。「その衛星というのは両方とも原子力のものでないか?」
「その通りです、リュクスタ。ギークたちの予見は弾道ミサイルではなく、原子力で動く衛星だったでは…」
なるほど。全てが一致するものではなく、あくまでも原子力のもの。放射能を伴るものだったのか。
高沢はサキナに連絡を取る。「事情はそうだ。この衛星二つではないのか?」
サキナは少し混乱していたが「核には違いない。だとしたら私たちが予見したのは…」そこで自己不振に陥ったのか。
「サキナ。少なくとも君たちギークが予見したものが多少外れただけで、大変な状況だという事には変わりない。防衛ビッグ・マーカーからも全力で後押しする。
ニュートリノ・レーザーが何処まで有効か分からないが、これに掛けたい!」
「判ったわ。有難う、私たちを信じてくれて…」
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