黄昏の国家

旅里 茂

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時代の変化

黄昏の国家08

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特殊な方法で何重もの養殖プラントを持つビッグシステムは、政治資金の不正で失脚した片岡に失笑していた。
養殖チームリーダーの和巻率いるプラント業務は大成功を収め、近年、大幅に減少していた海洋資源である各種の種において確実な回復を見せた。
ビッグシステムが建造されている各知事は、これらの回復事業を漁業組合に当たらせ、大いに活気付いた。
中越総理の副次官となった角安は既に撤廃した憲法第九条の穴埋めとして、軍事増強を強く推していた。
それに伴い、ビッグシステムのそれぞれに、オーイックス独自の軍も制定することを国会で認めさせた。
現在日本国の兵力は、海上自衛軍で空母打撃群が六部隊、巡洋艦百三十三隻、駆逐艦二百二隻、強襲揚陸艦十二隻、攻撃型原水潜水艦を七十六隻、航空自衛軍では戦闘機、F35BX四十三機、F3が八十八期機、F5が四十機等、陸上自衛軍においては戦闘車、48式機動戦車が百三両、51式特務レーザー砲車両が五十四両、四足式攻撃車三十二両、エスティ戦闘ヘリ五十七機、二足歩行型53式きぜん三十四機と大幅な軍事増強を施している。
そして、敵基地先行破壊準備として、極超音速ミサイルの導入に至った。
これはアメリカが在日米軍を日本の軍備増強を発表したことで、必要がなくなったことと、採算が合わなくなった事による。
この議論は、2000年を超えた時点で何度も繰り返されてきた。
問題は中国や北朝鮮、ロシアを念頭に置かれたものだが、特に中国が2013年ごろに打ち出した『一帯一路』。
これは、その10年後に頓挫するが、アメリカと同等かそれ以上の軍事力を誇っている。
核弾頭においても1000発を超えたと見られている。
状況が状況だけに、日本も防衛費がGDP1%強だった頃とは違い、実に10倍に上げる事となった経緯がある。
それはやはり、中華人民共和国の脅威が在った為であり、2025年3月に勃発した、尖閣諸島上陸事件において日本の自衛隊と中国人民解放軍との衝突が発生したのがきっかけで有る。
この時は米軍も援護に打ち出て、辛うじて退けた。
それが元で中国とは断交となり、経済の流れが大きく変わった時期でもあった。
共に展開していた業務を会社ごと引き上げ、双方が交通網も遮断した。
しかし、日本の超党派の議員連盟が中国を電撃訪問し、経済の再開を施した。
渋った中国だが、日本抜きでは経済を回すのは無理があるとして、表向きは日本が頭を下げたと国内に喧伝し、実情は胸を撫で下ろしていた。
しかし、尖閣諸島占領に失敗した事実は大きかった。
中国と諸島の問題を抱えていた周辺国は、これを機に一斉に攻勢を強めた。
台湾の動向はこの流れに乗っていた。中国は台湾を先に占領する筈だった。
だが、日本政府、特に自政党は反中国を掲げている為、台湾に幹事長を始め、角安も同行し総勢十五人の友好団を向かわせたのが切っ掛けだった。
これに猛反発した当時の国家主席は、尖閣諸島を先に占領しようと、日本政府を恫喝したのだが通用しなかった。
外交が軟弱と言われたきた日本政府だが、この時世では完璧と言えるほどの中国包囲網が既に出来上がっていた。
逃げ道を失った中国共産党は、次第に形骸化していった。
それでも一党独裁は現在も続いている。
只、それ故に香港、内モンゴル、新彊ウイグル、チベットなど独立気運が高まり、西側諸国の押しもあって、今一歩の状況まで来ている。
どんな政治体制でも、一党で流せば必ず綻びが生じる。
その後押しに日本政府も当然入っていた。
更に奥で暗躍したのがオーイックスの軍事部門である、陸軍特殊部隊『アルファ9』の存在だった。
元々は日本政府にオーイックス内で軍備を持たせるという事を条件に、ビッグ・システムが保有するあらゆる機能の恩恵を受けさせている。
それだけに、口出しを出来るだけ避けるように、暗黙の了解があった。
勿論、一部の与党、各野党から猛反発もあったが、結局はオーイックスが進めて得た利権を前に、黙らすことが出来た。
ビッグ・システムの大型フロート計画では、総合で二十五という極めて広大な大事業である。
これらは雇用を生み、全てのビッグ・システムが出来上がってから、その流れで新たな仕事について貰うという二重の雇用のシステムでもある。
完成しているビッグ・システムの内、神戸空港沖のビッグ・ワンでは密かに『ギーク』と呼ばれる子供たちが防衛の要に就きつつあった。
その中の一人である、「サキナ」という推定年齢十五歳の少女が防衛ビッグ・マーカーのコントロールを行う事となっていた。
彼ら彼女らは、アンドロイドセクターと呼ばれる、人工妊娠で生まれた親が元からいない子供である。
これは、外部に一切報告がされていないオーイックスの事業で、卓越した能力を持った特異点である。
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