君は祭壇にいればいい

SSYM

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事後

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「.......僕はね」

 私に体を拭かれながら彼は口を開く。

「君が安心するなら腕も足も全部あげられるよ」

「もうもらったよ。嘘付かない君が好き」

 断面を撫でる。彼の腕を切り落としたときの興奮は二度と味わえないだろう。

「でもね、悲しいこともある」

 ぽつりぽつりと彼は語る。彼の目は私を見ておらず、遠くを見ていた。

「僕は君のために何もできない」

「存在するだけでいいのに」

「それじゃ、だめなんだよ」

 なだめるように彼は続ける。

「大好きな君を抱きしめることも撫でることも」

 残っている短い腕をぱたぱたと動かし、仰ぐ。ほら、頬も撫でられない。彼の表情も曇っていく。その腕を握りしめて、落ち着かせる。昔は絡みついていた指同士。埋めあった隙間は今はもう。彼が言いたいことはわかっていた。わかっているんだ。けれど受け入れられない。

「わたしがだきしめるよ」

「働いて君の誕生日を祝うことも
 料理して帰宅する君を待つことも」

「やめて」

「僕は君のために生きたかった。君が僕のために頑張ってくれるように、つらいことにだって意味があることだって君が一番知っているじゃないか」

 やめて、それ以上は。黙らせたくて、首を絞めてしまった。嫌嫌と喚く私の理不尽な暴力でも彼は抵抗できない。指が食い込み、彼の顔が赤くなっても。我に返って手を離せば、彼はいつもの優しい顔を私に向けた。

「このまま殺してくれる?」

 答えはキスを1つ落とすだけで保留してしまった。私は最低な人間だ。けれど殺すのは今のところは嫌。あなたは私と一緒に死ぬの。あなたの体も心も、命も全部私が握る。

 間違っていたとしても。私は彼と一緒にいたいから。
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