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サヨナラを売るセールスマン
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山崎の額に幾つもの汗が流れ落ちた。
何とも言えぬ緊迫した空気が漂っている。
前方から迫りくる黒づくめの二人組の大男達。
明らかに今まで出会ってきた人間とは違っていた。
まるでホラー映画に出てくる薄気味悪いピエロの様だ。
真正面に立った一人の男が口を開いた。
「そう怖がらなくて大丈夫ですよ。我々は貴方方が持っている大切な物を返して頂きたく此処に訪れたのです。」
「大切な物?」
山崎が口を開くと大男はにっこりと微笑み山崎の手に持っているスマホを指さし呟いた。
「えぇ・・・そちらの携帯電話でございます」
「・・・あんた等にこれを返したら俺達はここから立ち去ってもええんか?」
そう言うと大男は、困った顔でもう一人の男と顔を見合わせた。
暫くして大男は溜息を吐いてこう言った。
「それが困った事に、貴方方は携帯の中身を拝見してしまっております。それ即ち我々は罰を与えねばならないのです。」
「ちょっと待ってよ!私はその携帯の中身も知らないしこの人達とは関係ないよ!」
結衣が反論すると大男は、結衣をじっくり観察し、首を左右に振った。
「残念ながら赤槻 結衣。貴方様は別件で我々と着いて来て頂かねばなりません。」
「別件って何よ!?私はただの高校・・・」
割り込む様に大男は、呟いた。
「いいえ、お父様の件で。」
その一言に結衣は、ゾッと身体を縮ませた。
「おぃおぃ!さっきから聞いてりゃ勝手すぎないか!?確かに携帯を持ち出したのは俺達だけど、あんた等が何処の誰か知らないし。第一渡す義務なんてない!」
亀石田が更に割り込む様に会話に入り込むと大男は、ハッと我に返りポケットから名刺を取り出し、
亀石田に名刺を差し出した。
「おっと失礼しました。私、亥がいと申します。我々はサヨナラを売るセールスマンとして活動しております」
一瞬だった。
大男の殺気。まるで小動物を狙う肉食動物の様な眼つき。
一瞬だった。
その殺気に反応し、結衣の手を握り山崎は亀石田に叫んだ。
「走れ!!」
亀石田は、山崎の声に反応し逆方向に走り出した山崎の後を追う。
「おやおや、困った子供達ですねー」
亥がハットを相方に手渡しじっくりと三人が去っていく様子を観察し始めた。
「どうせ、この街から逃げ出す事など出来ないのに・・・。」
「ちょっと痛い!放してよ!」
結衣が必死に抵抗するも、聞く耳を持たない山崎は、無我夢中に行く当てもなく走り続ける。
「おい!ひっさん!その子が可哀そうだぞ!!」
亀石田が声をかけるも反応しない山崎に、亀石田は追いつき肩に手を当て引き留めた。
「おい!ひっさん!!どうしたんだよ!!しっかりしろ!!」
「しっかりしてるよ!!お前こそ感じなかったのか!?あいつの殺気!!」
「はぁ?殺気?」
「あいつ等はヤバい。絶対に関わっちゃいけない奴らだ。」
「じゃあどうするの?」
「・・・。」
山崎は、二人に責められ考え込んでしまった。
「兎に角私は、帰ってもいいかな?さっきの発言気になるし・・・。」
「ごめんね。ひっさんが巻き込んじゃって・・・」
「いいよね?」
結衣が山崎の顔を覗き込むと、山崎は思いついたかの様に呟いた。
「そうだ!この携帯を元の場所に戻そう。」
「戻そうってさっきの人達がいた場所に戻らなきゃだぞ?」
「別の場所を通ろう。」
「私は帰ってもいいでしょ?」
「君には力を貸して欲しいんだ!」
「どうして!?」
山崎は再び黙り込みじっと結衣を見つめた。
そして結衣の手を握りしめ呟いた。
「・・・友達の妹を救いたいんだ・・・。」
何とも言えぬ緊迫した空気が漂っている。
前方から迫りくる黒づくめの二人組の大男達。
明らかに今まで出会ってきた人間とは違っていた。
まるでホラー映画に出てくる薄気味悪いピエロの様だ。
真正面に立った一人の男が口を開いた。
「そう怖がらなくて大丈夫ですよ。我々は貴方方が持っている大切な物を返して頂きたく此処に訪れたのです。」
「大切な物?」
山崎が口を開くと大男はにっこりと微笑み山崎の手に持っているスマホを指さし呟いた。
「えぇ・・・そちらの携帯電話でございます」
「・・・あんた等にこれを返したら俺達はここから立ち去ってもええんか?」
そう言うと大男は、困った顔でもう一人の男と顔を見合わせた。
暫くして大男は溜息を吐いてこう言った。
「それが困った事に、貴方方は携帯の中身を拝見してしまっております。それ即ち我々は罰を与えねばならないのです。」
「ちょっと待ってよ!私はその携帯の中身も知らないしこの人達とは関係ないよ!」
結衣が反論すると大男は、結衣をじっくり観察し、首を左右に振った。
「残念ながら赤槻 結衣。貴方様は別件で我々と着いて来て頂かねばなりません。」
「別件って何よ!?私はただの高校・・・」
割り込む様に大男は、呟いた。
「いいえ、お父様の件で。」
その一言に結衣は、ゾッと身体を縮ませた。
「おぃおぃ!さっきから聞いてりゃ勝手すぎないか!?確かに携帯を持ち出したのは俺達だけど、あんた等が何処の誰か知らないし。第一渡す義務なんてない!」
亀石田が更に割り込む様に会話に入り込むと大男は、ハッと我に返りポケットから名刺を取り出し、
亀石田に名刺を差し出した。
「おっと失礼しました。私、亥がいと申します。我々はサヨナラを売るセールスマンとして活動しております」
一瞬だった。
大男の殺気。まるで小動物を狙う肉食動物の様な眼つき。
一瞬だった。
その殺気に反応し、結衣の手を握り山崎は亀石田に叫んだ。
「走れ!!」
亀石田は、山崎の声に反応し逆方向に走り出した山崎の後を追う。
「おやおや、困った子供達ですねー」
亥がハットを相方に手渡しじっくりと三人が去っていく様子を観察し始めた。
「どうせ、この街から逃げ出す事など出来ないのに・・・。」
「ちょっと痛い!放してよ!」
結衣が必死に抵抗するも、聞く耳を持たない山崎は、無我夢中に行く当てもなく走り続ける。
「おい!ひっさん!その子が可哀そうだぞ!!」
亀石田が声をかけるも反応しない山崎に、亀石田は追いつき肩に手を当て引き留めた。
「おい!ひっさん!!どうしたんだよ!!しっかりしろ!!」
「しっかりしてるよ!!お前こそ感じなかったのか!?あいつの殺気!!」
「はぁ?殺気?」
「あいつ等はヤバい。絶対に関わっちゃいけない奴らだ。」
「じゃあどうするの?」
「・・・。」
山崎は、二人に責められ考え込んでしまった。
「兎に角私は、帰ってもいいかな?さっきの発言気になるし・・・。」
「ごめんね。ひっさんが巻き込んじゃって・・・」
「いいよね?」
結衣が山崎の顔を覗き込むと、山崎は思いついたかの様に呟いた。
「そうだ!この携帯を元の場所に戻そう。」
「戻そうってさっきの人達がいた場所に戻らなきゃだぞ?」
「別の場所を通ろう。」
「私は帰ってもいいでしょ?」
「君には力を貸して欲しいんだ!」
「どうして!?」
山崎は再び黙り込みじっと結衣を見つめた。
そして結衣の手を握りしめ呟いた。
「・・・友達の妹を救いたいんだ・・・。」
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