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再会
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12時45分、待ち合わせ場所のマック前に到着。
少し早めに着いた。
予定まで後15分ある。
辺りを確認していると、駅からこちらに気づき走ってくる女性の姿。
「立花君?久しぶり!高校振りだね!」
工藤の姿は、高校の頃の面影は、一切なかった。
甘い香水の匂いが充満し綺麗だった長髪の黒髪も、
ショートヘア―の栗色の髪色に変わり
清楚で大人しめだったはずが、何処か強気な雰囲気を醸し出し
高校から何年も経てば変わるかと彼女を観察していた。
「工藤変わったね」
「そう?立花君は、変わらないね!」
「そうかな・・・。」
「懐かしいね!でも懐かしんでる暇ないよ。早く真由美の彼氏見つけなきゃ」
「そうだな。」
「取り合えず立ち話もあれだし、場所変えよっか。」
「あぁそうだな。」
「そうだなー。この辺で個室がある所ってある?」
「向いのカラオケか、ちょっと行った所の満喫か。」
「そうだ!確か立花んちこの辺なんだよね?」
「えっ・・・そうだけど?」
「じゃあ立花んち行こう!」
僕は戸惑った。長い間哲也以外自宅に上げたことがない。
ましてや女性など。
「大丈夫?」
工藤の真っ直ぐな目と勢いに、押し負け取り合えず自宅を目指すことになった。
向かいながら話題はないかと頭をフル回転させた。
すると工藤は、まるで日常会話の様に確信をついてきた。
「そーいえば、立花君もキャンペーンって奴知ってるの?」
「えっ?キャンペーン?」
「そそ、夢が叶うとかって奴。」
「へーそんなのあるんだね」
「私思うの、真由美の彼氏それに巻き込まれたんじゃないかって」
僕は思わず立ち止まってしまった。
思考が停止するとは、まさにこういう事なのだろう。
頭が真っ白になった。
すると工藤が振り向きニッコリと笑った。
「あくまで私の勘だよ?」
「そ・・・そうか。」
その後は、他愛もない話をした。
真由美との関係、真由美から聞く哲也の話、高校を卒業してからの彼女の生活。
どうやら彼女は、大学に入り色々な友達が増え昔の自分から変わったそうだ。
彼女の話が丁度終わりを迎える頃、自宅に着いた。
「ここ?お化け屋敷みたいだね」
「ハハハ、女の子から見たらそう見えるんだね。」
工藤を連れて自宅の鍵を開け、玄関の電気をつけた。
「適当に座って。」
「はーい!うわーなんもないね」
「引っ越してから中々家具買いに行く暇なくて。」
ワンルームの部屋は、第三者から見れば確かに布団とテレビしかない寂しい部屋なんだなと今まで当たり前だった部屋を寂しい気持ちで眺めた。
ホットコーヒーを淹れ、工藤に差し出した。
「ありがとう!」
スス―と、コーヒーを唇に運び、フーっと息を吐く工藤を眺めていた。
工藤も変われたなら、自分もきっかけさえあれば変われたのかな。
と過去を振り返ってしまった。
「さてと。本題だけど、嘘とかなしで話してね。」
「えっ?」
「全部話して。哲也君の話。立花君の話。」
「・・・わかったよ。」
躊躇ったが、これも哲也の為。協力者は多い方がいいと思い、
これまでの話を工藤に全部話した。
キャンペーンの事。それから起きた事。哲也が協力してくれた事。
そして山路の事。
「やっぱり嘘ついたんだね?さっき。」
「・・・ごめん。でも巻き込みたくなくて。」
「でもその話が本当なら早く哲也君を助けなきゃね。」
「そうだな。工藤は、何か手掛かりでもあるのか?」
「実は、近頃そのキャンペーン対象者狩りが起こってるって話聞いた事あるの」
「キャンペーン対象者狩り!?」
「うん。この前も駅前の飲み屋街で、大学生が狙われたみたいで。」
全身に鳥肌が立った。
本当に夢を奪うなんて事が起きているのか。
「で、丁度真由美と哲也君がその場にいたみたいで、恐らくそれで」
「それ本当か!?」
「・・・うん。多分それで哲也君狙われちゃったのかな。」
「その場所わかる!?」
「うん。丁度真由美とはぐれた場所で、私もその辺いたから」
「案内して貰える?」
「でも覚悟はあるの?」
「・・・覚悟?」
「もしかしたら立花君も狙われる可能性あるんだよ?」
「それで哲也が巻き込まれたなら早く助けに行かなきゃ。」
「わかった。いいんだね。」
「頼む!その場所に案内してくれ。」
工藤は、ゆっくり頷いた。
だが、その表情は、少し笑った様に見えた。
一瞬だったので、もしかしたら勘違いかも知れないが。
自宅を出て、もう一度駅方面へ向かった。
早く哲也の安否が知りたかった。
焦りのせいか、小走りで向かっていた。
踏切を越え、自宅側と反対の飲み屋街に向かった。
「この辺?」
「うん、確かこっち。」
工藤が前を歩き路地裏へと入り込む。
路地裏は、人気がないせいか、薄暗く不気味に感じた。
「何処で哲也と真由美ちゃんを見たの?」
「もう少し進んだ先。」
工藤が指さす方に、ゆっくり進んでいく。
どんどん道幅が狭くなり人一人しか通れないような路地になり
なんとかそこを抜けるとようやく少し広い路地に出た。
「ここ?」
僕が振り返ると、工藤は鉄パイプを大きく振りかぶっていた。
「え?」
次の瞬間、一瞬激しい痛みが頭に走り
カランと、鉄パイプが地面に落ちた音と共に
その場に倒れ込み、意識を失った。
…………
………
……
…
記憶が、曖昧だった。
目覚めたのは、冷たいコンクリートの床。
辺りは、真っ暗闇。時間もわからない。
どれ位ここで眠っていたのか。
体中に痛みが生じる。
「ようやく起きた?」
聞き覚えのある女性の声が、耳に入った。
朦朧とする意識の中、声の主を見上げた。
そこには、不気味に微笑む工藤の姿。
しかし何故だろうか。
工藤の面影とは、別の面影が重なる。
この不気味な微笑み。何処かで。
『立花君~。ちょっといいかな?』
脳裏にその面影が蘇った。
そんなはずは。
もう一度工藤を見上げた。
「今度こそ久しぶりだね。思い出した?」
「福、澤・・・?」
少し早めに着いた。
予定まで後15分ある。
辺りを確認していると、駅からこちらに気づき走ってくる女性の姿。
「立花君?久しぶり!高校振りだね!」
工藤の姿は、高校の頃の面影は、一切なかった。
甘い香水の匂いが充満し綺麗だった長髪の黒髪も、
ショートヘア―の栗色の髪色に変わり
清楚で大人しめだったはずが、何処か強気な雰囲気を醸し出し
高校から何年も経てば変わるかと彼女を観察していた。
「工藤変わったね」
「そう?立花君は、変わらないね!」
「そうかな・・・。」
「懐かしいね!でも懐かしんでる暇ないよ。早く真由美の彼氏見つけなきゃ」
「そうだな。」
「取り合えず立ち話もあれだし、場所変えよっか。」
「あぁそうだな。」
「そうだなー。この辺で個室がある所ってある?」
「向いのカラオケか、ちょっと行った所の満喫か。」
「そうだ!確か立花んちこの辺なんだよね?」
「えっ・・・そうだけど?」
「じゃあ立花んち行こう!」
僕は戸惑った。長い間哲也以外自宅に上げたことがない。
ましてや女性など。
「大丈夫?」
工藤の真っ直ぐな目と勢いに、押し負け取り合えず自宅を目指すことになった。
向かいながら話題はないかと頭をフル回転させた。
すると工藤は、まるで日常会話の様に確信をついてきた。
「そーいえば、立花君もキャンペーンって奴知ってるの?」
「えっ?キャンペーン?」
「そそ、夢が叶うとかって奴。」
「へーそんなのあるんだね」
「私思うの、真由美の彼氏それに巻き込まれたんじゃないかって」
僕は思わず立ち止まってしまった。
思考が停止するとは、まさにこういう事なのだろう。
頭が真っ白になった。
すると工藤が振り向きニッコリと笑った。
「あくまで私の勘だよ?」
「そ・・・そうか。」
その後は、他愛もない話をした。
真由美との関係、真由美から聞く哲也の話、高校を卒業してからの彼女の生活。
どうやら彼女は、大学に入り色々な友達が増え昔の自分から変わったそうだ。
彼女の話が丁度終わりを迎える頃、自宅に着いた。
「ここ?お化け屋敷みたいだね」
「ハハハ、女の子から見たらそう見えるんだね。」
工藤を連れて自宅の鍵を開け、玄関の電気をつけた。
「適当に座って。」
「はーい!うわーなんもないね」
「引っ越してから中々家具買いに行く暇なくて。」
ワンルームの部屋は、第三者から見れば確かに布団とテレビしかない寂しい部屋なんだなと今まで当たり前だった部屋を寂しい気持ちで眺めた。
ホットコーヒーを淹れ、工藤に差し出した。
「ありがとう!」
スス―と、コーヒーを唇に運び、フーっと息を吐く工藤を眺めていた。
工藤も変われたなら、自分もきっかけさえあれば変われたのかな。
と過去を振り返ってしまった。
「さてと。本題だけど、嘘とかなしで話してね。」
「えっ?」
「全部話して。哲也君の話。立花君の話。」
「・・・わかったよ。」
躊躇ったが、これも哲也の為。協力者は多い方がいいと思い、
これまでの話を工藤に全部話した。
キャンペーンの事。それから起きた事。哲也が協力してくれた事。
そして山路の事。
「やっぱり嘘ついたんだね?さっき。」
「・・・ごめん。でも巻き込みたくなくて。」
「でもその話が本当なら早く哲也君を助けなきゃね。」
「そうだな。工藤は、何か手掛かりでもあるのか?」
「実は、近頃そのキャンペーン対象者狩りが起こってるって話聞いた事あるの」
「キャンペーン対象者狩り!?」
「うん。この前も駅前の飲み屋街で、大学生が狙われたみたいで。」
全身に鳥肌が立った。
本当に夢を奪うなんて事が起きているのか。
「で、丁度真由美と哲也君がその場にいたみたいで、恐らくそれで」
「それ本当か!?」
「・・・うん。多分それで哲也君狙われちゃったのかな。」
「その場所わかる!?」
「うん。丁度真由美とはぐれた場所で、私もその辺いたから」
「案内して貰える?」
「でも覚悟はあるの?」
「・・・覚悟?」
「もしかしたら立花君も狙われる可能性あるんだよ?」
「それで哲也が巻き込まれたなら早く助けに行かなきゃ。」
「わかった。いいんだね。」
「頼む!その場所に案内してくれ。」
工藤は、ゆっくり頷いた。
だが、その表情は、少し笑った様に見えた。
一瞬だったので、もしかしたら勘違いかも知れないが。
自宅を出て、もう一度駅方面へ向かった。
早く哲也の安否が知りたかった。
焦りのせいか、小走りで向かっていた。
踏切を越え、自宅側と反対の飲み屋街に向かった。
「この辺?」
「うん、確かこっち。」
工藤が前を歩き路地裏へと入り込む。
路地裏は、人気がないせいか、薄暗く不気味に感じた。
「何処で哲也と真由美ちゃんを見たの?」
「もう少し進んだ先。」
工藤が指さす方に、ゆっくり進んでいく。
どんどん道幅が狭くなり人一人しか通れないような路地になり
なんとかそこを抜けるとようやく少し広い路地に出た。
「ここ?」
僕が振り返ると、工藤は鉄パイプを大きく振りかぶっていた。
「え?」
次の瞬間、一瞬激しい痛みが頭に走り
カランと、鉄パイプが地面に落ちた音と共に
その場に倒れ込み、意識を失った。
…………
………
……
…
記憶が、曖昧だった。
目覚めたのは、冷たいコンクリートの床。
辺りは、真っ暗闇。時間もわからない。
どれ位ここで眠っていたのか。
体中に痛みが生じる。
「ようやく起きた?」
聞き覚えのある女性の声が、耳に入った。
朦朧とする意識の中、声の主を見上げた。
そこには、不気味に微笑む工藤の姿。
しかし何故だろうか。
工藤の面影とは、別の面影が重なる。
この不気味な微笑み。何処かで。
『立花君~。ちょっといいかな?』
脳裏にその面影が蘇った。
そんなはずは。
もう一度工藤を見上げた。
「今度こそ久しぶりだね。思い出した?」
「福、澤・・・?」
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