俺の可愛いお嬢様を、悪役令嬢にはさせません!

曼珠沙華

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しかし改めて決意したのはいいが、俺にできることは本当に少ない。

ゲームの流れを知っている俺としては、できればお嬢様に王子を諦めてもらいたいところだが……。


ゲームの中のお嬢様を思い出す。


ヒロインに嫌がらせ三昧を繰り返したお嬢様。

地位や名誉のためというのもあったかもしれないが、ゲームの中のお嬢様は本当に王子のことを愛しているように見えた。

愛しているが故に、王子が他の女性に心を奪われることが我慢ならなかったのだ。


できればお嬢様が望む方と幸せになってもらいたい。


大丈夫。
お嬢様はとてもお優しく、可憐なお方。
王子だってお嬢様がヒロインにいじめや嫌がらせさえしなければ、きっとお嬢様と幸せになる道を選んでくださる。


そうと決まれば……。


「お嬢様」

「なに、オリオン」

「シンデレラという物語をご存知ですか?」

「しんでれら?」

屋敷の庭で本を読まれていたお嬢様に俺は唐突に問かけた。

お嬢様が本から目を離し、俺を見る。

急に何を言い出すんだと思われたのだろう。
お嬢様はこてんと首を傾げた。

「きいたことないわ」

なるほど、この世界には前世で有名な物語たちは存在しないのか。

お嬢様に恋愛というものを指南したくとも、前世では『彼女いない歴=年齢』の俺。

そんな上級レベルなことできるわけがない。

そして本を読まれているお嬢様を見て思いついた。

世界観が似ている『シンデレラ』なら参考になるのではないかと。


だって、あれは確か王子様と幸せになれる話だったはず。


俺は物語を頑張って思い出そうとした。

読書の邪魔をした俺を咎めることなく、その様子を見ていたお嬢様はくすりと笑った。


「そのものがたりきかせて」


興味をもってくださった!


「えっとですね、昔々シンデレラは意地悪な継母と義姉たちと一緒に暮らしていました」


えっと、それからなんだっけ……。

あれ?シンデレラってどうやって王子様と出会うんだっけ?


「とにかくシンデレラは継母と義姉たちからすごく苛められていたんです」

「どうして?」

「それは……シンデレラがすごく美人だったからです。継母たちはそれに嫉妬したんです」


あ、なんか思い出してきた。
そうだ、確か若さと美しさに嫉妬して……。

「シンデレラは継母たちに毒リンゴを食べさせられてしまいます」

「どくりんご?」

そう、確か「鏡よ、鏡」っていうセリフが……。

あれ?
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