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32 お風呂3★

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 背中から包み込まれるように抱き込まれると、腰の後ろに彼のものの存在感がくっきりと感じて条件反射のように緊張してしまう。

 強張った身体を宥めるように髪を梳かれ、掻き分けて露出させたうなじに唇が寄せられた。

「あっぅ」

 その場所から広がる痺れるような快感が、喘ぎとなって喉から漏れてしまう。
 そのまま舐めたりキスをしたりを繰り返されるのを、逃げ出したいようなこのままずっとこうして居たいような気持ちで受け入れていると、不意に強く吸われて痛みが走った。

「ちょっんぅ」

 こんな所に痕を付けられたら皆に見られてしまうではないかと抗議の為に振り返った所で、言葉にする前に唇を塞がれた。
 そのままでは体勢が不自然になるからだろう、脇の下に手を入れられて向きを変えられ、晴人さんの身体を跨いで正面から抱き合う体勢にされた。
 とろみのあるお湯は浮力も強くて、そこまでの流れがとてもスムーズだった。

 ならばと彼の両腕をつねるように強めに握りしめた所で背中がお湯のぬめりを帯びた手で撫で上げられてぞくりと走った快感に仰け反ってしまい、更に深く彼の唇を受け入れる事になった。

 流石に番になると受け入れた相手の舌を噛むなどという暴挙も出来ず、口の中で攻めこんでくる舌を押し返そうと応戦すると、舌を絡め取られてそのまま上顎だったり舌裏だったり歯列を舐められたりする内に腰が砕けてしまった。

「晴人さんのばーか。こんな所で……」

 思う存分口の中を蹂躙した晴人さんに抵抗しきれずに身を任せてしまう状況は悔しいが、ほんのり幸せだと思った。
 でもやっぱり悔しいので詰めると、晴人さんは楽しそうにクスクスと笑いながらぎゅっと私を抱きしめた。

「大丈夫ですよ、獣人の番にキスマークが無い方が珍しいですから一つや二つ何とも思われません。それに番専用の部屋はこういう事も想定されてますから」
「は、ちょっ何言って」

 明け透け過ぎる言い様に焦って話を聞けば、獣人の中にはセックスこそコミュニケーションだと考えているようなタイプもいるので、番専用部屋を使う場合、汚したら自分で後始末をする事を条件に色々と黙認されるそうだ。
 勿論医者の許可が出ている事が条件ではあるが。

「という事はドクターストップが解けたって言うのは……」
「はい、一応許可は出てますよ」

 私がひくりと口元を引きつらせながら確認すると、晴人さんは苦笑しながら答えた。

「や、嫌よこんな所で」

 お尻にグリグリと押し付けられている気がする彼の欲望から距離を取ろうとした所で、それ以上離れられない事に気付いた。

「な、何これ!」

 晴人さんから発せられたのだろう糸が私の身体に絡んでいる。いつのまにかこんな状態になったのかという驚きから立ち直って暴れるよりも早く唇を塞がれた。
 そのまま胸の膨らみを優しく揉みしだかれ、頂きを摘まれる。

「俗説かもしれませんが、快感を得る事で女性ホルモンが活性化されて骨に良い影響があるんだそうですよ」
「こ、この糸や……あん」

 話しながら、頂きを口に含まれて舌で弄ばれる。
 胸の先端から全身に突き抜けるのうな快感に仰け反っていると、もう反対側の胸も同じようにされた。
 彼の膝に乗せられていた状態から、離れようとした所で糸に固定されてしまったので、両脚を大きく開いた状態で大事な場所を晴人さんに突き出すような状態になっている。

「や、糸、解いてぇ」

 腰から下はお湯の中だが、お湯はドロドロと濁ってはいてもシルエットは分かる。それが妙に卑猥で淫媚な情景を作り出していて、いつでも交接が可能な体勢で動けないのが恥ずかしくて涙目だ。

「逃げないで、瑠璃さん」

 そのまま抱きしめてくる晴人さんの言葉にハッとする。
 晴人さんは私を全力で愛してくれているのに、私は番になると了承した癖に逃げ腰でいるばかりで彼を受け入れる事をしていない。
 これでは彼が可哀想だ。せめて抱きしめ返すくらいはしようと腕を伸ばそうとするが、糸は腕も絡め取ってしまっていて叶わない。

「あ、あの、糸、解いて……」
「あぁ、やっぱりもがく瑠璃さんは蝶のように綺麗だ。あまり興奮させられると加減ができなくなりそうです」
「んな! やぁ!?」

 逃げるなという言葉が私の考えていたのと全く違う意味だった事に驚いて絶句していると、お湯に身体が沈み込むように押し倒された。上体が大きく傾いてお湯から出ているのは鎖骨から上と、両胸の胸の先端あたりだけの状態にされる。

「あ、やぁっぁあ」

 そのまま全身を撫でさすられる。
 ぬめりのあるお湯で受ける愛撫は緩やかながら確かな快感をもたらして、唇からは喘ぎしか漏れなくなる。
 しかも浴室なので反響してとても響くのが更に羞恥を煽る。
 そこで気付いた。
 この浴室は病室の出入り口付近にある。大きな声をだせば廊下まで響いてしまうのではないかと少し青くなって唇を噛み締めたのを、晴人さんが気付いて頰を包みながらキスをしてほぐすように舐めてくるので力が緩んでしまう。

「声を抑えようとしないで大丈夫ですよ。ここは防音になっているので外に声は響きません」
「……」

 もう絶句とはこの事だ。
 番専用部屋は、つまり最初からこういう事を想定されているのだと思い知らされた。
 ラブホか!



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