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6 再びの……★

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 身体が座席に沈み、シートベルトをされるともう動けなかった。
 不快感は全くなくて、ただふわふわと気持ちが良い。だが、それに身をゆだねてはいけないと、重くなる瞼を必死に持ち上げる。

 彼のキスが呼び水になったのか一週間前の出来事が鮮明に思い出されたからだ。

「どう……して……こんなこと……」
  
 晴人さんはにっこりと微笑むだけで何も答えずに運転席に座って、発車した。

 車窓から眺めていれば、段々見覚えのある風景へと切り替わっていった。
 本当に自宅へ送ってくれるようだとそれだけはちょっとホッとした。
 
 ただ、道路脇ではなくコインパーキングに停車されたことに身体が強張った。
 長居するつもりなのかと焦っていると、助手席側へ回って扉を開けた晴人さんは私の頭を引き寄せまた唇を重ねてきた。

「んっ……ん……」

 緩く閉じていた歯の間に舌が潜り込んできて、舌が絡ませられる。顎を掴まれているせいで口が閉じられない。追い出そうと舌を突き出すと、ちゅうと吸われた。

「んぁぁ」

 身体から完全に力が抜けた所で車から出され、家の前まで連れてこられた。

 生まれて初めてのお姫様だっこもこの状況だと危機感しか感じられない。

 玄関前で立つように降ろされても、躊躇っていると、晴人さんが耳に息を吹き込むように囁いてきた。

「今ここでしたいの? 流石に身体に負担がかかってしまうからおすすめしないんだけど」

 などと恐ろしいことを囁かれてはどうする事も出来ず、ポシェットの中から鍵を引っ張り出す。
 そうして否応無く迎え入れる事になった単身者用のワンルーム。

 廊下を通り抜ければすぐに見える部屋は、晴人さんの家の寝室と同じくらいの大きさだが、生活の全てを担う場所だ。
 ベッドとクローゼット、ローテーブル位しか置けない狭い空間にはそれなりに生活感が伺えた。
 ベッドには今朝脱いだ部屋着が打ち捨てるように置かれているし、ローテーブルには、今朝ここで化粧を施して出て行ったままの形跡が残っている。
 だが、そんな事に羞恥心を感じていられる状況では無い。
 掛け布団がふるい落すように捲られて、ベッドに腰掛けるようにされた。

 唇を晴人さんのそれで塞がれながら、抵抗しようと肩を押しても、ビクともしない。
 細身の割に力が強いのか、単に自分の身体に力が入らない為か。
 急に上半身が楽になって慌てて意識をそちらに向けると、背中のファスナーがお尻の方まで全て下げられて、ドレスが緩められてしまっていた。

 ドレス用に作られた肩紐の無い下着も、背中のホックを外されて抜き取られてしまって、露わになりそうな胸元を隠そうとした両手は晴人さんに押さえられてしまい、進退窮まった私は覚悟を決めた。

「っつぅ……」

 弾かれるように晴人さんが離れて、その口元を押さえた。
 私が噛み付いたのだ。

 流石に血は出ていないようで、こんな状況だというのに少しほっとしてしまう。善良に生きているつもりの私は正当防衛でも人を傷つけるのは怖い。
 そんな内心の怯えを隠して強く晴人さんを睨みつける。

「やめて。私は番になるなんて同意してないし、するつもりも無い」

 晴人さんは私の言葉に軽く驚いた様子を見せた。

「思い出しちゃいましたか。やっぱり耐性があるのかな」
「やっぱりってどういうこと?」

 せっかく晴人さんが離れたのに、両手は肩の横で固定されたまま動かない。また糸に絡め取られてしまったのだろう。

 前回より頭がはっきりしているのは怒りによるものもあるけれど、恐らくチューハイなどの弱い酒しか摂取していないせいだろうか。

「これ! 外しなさいよ」

 睨みつけても晴人さんは穏やかに笑っているだけだ。ならばと足を踏ん張って立ち上がろうとしたが、それも出来ない。

 暴れた所為で中途半端に脱がされたドレスがずり落ちそうになったので慌てて背筋を伸ばしてドレスを肩に引っかけなおした。
 ドレスは肩の所で辛うじて引っかかっているだけで、乳房を覆うのは心許ない絹の感触だけだ。そんな状態で上半身を逸らして晴人さんを見上げている状況は、まるで自ら身を捧げているようで羞恥心を煽る。

「瑠璃さんのその姿凄くそそりますよ」

 感慨深げな晴人さんの、清涼感さえある穏やかな低い声がぞわりと響いた。






 

 


  
 
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