つぐむく。~中二病と不思議ちゃん~

ハリエンジュ

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第一話『お友達から始めましょう』

その6 よびかける

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★つぐむく。~中二病と不思議ちゃん~ 第一話『お友達から始めましょう』その6 よびかける

 意識したら、そこでもうおしまいだった。
 授業中も休み時間も視線を感じた、物凄く視線を感じた。
 隣の席の南雲から。
 以前から、こんな風に俺は南雲に観察されていたのだろうか。
 だとしたら、凄まじく恥ずかしいし自分の鈍さが嫌になる。
 でも、気付いたからと言って俺にはどうすることも出来なかった。
 目を合わせるのは緊張するから出来ない、話しかけるのもやっぱり緊張するから出来ない。
 ないない尽くしで、俺は南雲と朝のやり取りからほぼ一切の接触なく一日を終えようとしていた。
 でも、南雲はそれを許さなかった。
 鞄を肩に掛けて教室を出ようとしている俺の目の前に、南雲が立ち塞がっている。
 眼鏡の奥の瞳が、悲しげに揺れている。
 そんな表情を見ると、何だか胸が激しく痛んだ。

「……迷惑でしたか?」

「……は?」

 南雲が、ふと呟いた。
 懸命に、身長差のある俺を見上げながら。

「椋と友達には、なりたくありませんでしたか?」

 ひゅっと俺は思わず息を呑んだ。
 そうだ。
 俺は知らず知らずのうちに、南雲の厚意を拒絶してしまったに等しいのだ、今日一連の行動で。
 そんなことない。
 そんな筈がない。
 そう叫びたい気持ちでいっぱいだったが、俺は情けなく固まってしまう。

「迷惑なら、やめるのです。椋、もう神室くんに話し掛けたりしません」

 ――嫌だ。
 また、胸がずきりと痛む。
 そんなの嫌だ、やっと友達ができたんだ。
 俺は南雲が大切で、女友達の牟田にすら嫉妬する程に大切で。
 気付いたら、俺は震えた声を発していた。

「……友達に、なってやるって言っただろ」

「……え?」

 ここから先は、止まっちゃいけない。
 俺の中の俺が、はっきりとそう告げている。
 後はもう、不思議といつものような迷いや躊躇いはなかった。

「俺は、お前を迷惑だなんて思ってない。お前が友達になってほしいって言うんなら、それに応えてやるっつってんだよ」

 未だに高圧的な言い回しをしてしまうのが、馬鹿な俺らしいけど。
 でも。

「俺だって、南雲と――椋と、友達になりたい」

 思い出したんだ、お前のノートに書かれていた文字列を。
 名前で呼び合いたいって、そう書いてくれてたよな。
 だから呼び掛けた、ありったけの勇気を振り絞って。
 南雲が、椋が、はっと息を呑む。
 けど、その表情は見る見るうちに微笑に変わって。

「……ありがとうなのです、鶫くん」

 鶫。
 家族以外の人間にそう呼ばれるのはいつ振りだろうか。
 女の子のようで正直あまり好きではなかった名前が、この時ばかりは無性に愛おしく思える。そうやって、喜びを噛み締めていた時。

「へいへい、仲直りは終わったかね? お二人さん!」

 ばんっと背中を何者かに叩かれた。
 驚いて振り返ると、牟田がにやにやと立っていて。
 その後ろでは、志久が申し訳なさそうな顔をしていた。
 牟田は俺と椋を、吟味するように、舐め回すに見つめてくる。
 只ならぬ雰囲気に少し後退りする俺に、牟田は言った。

「ふむ、正直意外な組み合わせだったが……こうして見るとアリだな。カプ名は……そうだ、『つぐむく』にしよう!」

 かぷめい?
 牟田の言葉の意味は、良くわからなかったけど。
 つぐむく。
 その単語の響き自体は、妙に可愛らしくて。
 ――まあ、悪くはないな、と思ってしまう自分が居た。
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