雨晴れアジサイボーイ&ガール

ハリエンジュ

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雨晴れアジサイボーイ&ガール

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 私はずっと、先輩に傘を差したかった。
 だって雨だけじゃ、愛も何も充分には育たないから。


◆雨晴れアジサイボーイ&ガール


 雨が、降っていた。
 じめじめとした梅雨特有の空気は勿論人に好まれにくく、教室のあちこちでは怠そうな声やこの天気への不満が上がっていく。
 一方で私の心は空模様とは裏腹にうきうきと浮き立つようで。
 お気に入りのパステルカラーの折り畳み傘の存在を鞄の中に確認し、私はいの一番に教室を軽やかな足取りで飛び出して行った。
 目指すは一学年上、二年生の教室――私の愛しの想い人・平坂ひらさか春也はるや先輩のクラスだ。
 私、朝霧あさぎり陽菜ひなは春也先輩にそれはそれは熱烈に片想いしていた。
 きっかけなんて大したことじゃない。部活が同じなわけでも、委員会が同じなわけでもない。
 接点がほぼ皆無に等しい春也先輩に私が恋をしたのは、ほんの些細なことだった。人によっては、その程度のことで恋に落ちるなんて、と呆れられてしまうかもしれない。
 これだけ引っ張っておいて何だか申し訳ないけど、これは単に一目惚れだった。
 私の高校入学間もない春。たまたま廊下をすれ違った、会話すら交わしていない出会いの日。
 どこか憂いを帯びている筈なのに、切ないくらいの綺麗さ、と言うよりかっこよさが隠し切れていない横顔にうっかり見惚れて、自分の中に芽生えた想いを、つまりは初恋を自覚してからはあとはもう単純な私は突っ走って押せ押せになるだけだった。
 雨粒が窓を叩く音に耳を傾けて、ぽつぽつころころとしたその音に不思議と癒されながら、春也先輩の教室を訪れ、ちょうど帰り支度をしていた春也先輩に私は折り畳み傘をちらつかせながら笑顔で声をかけた。

「春也せーんぱいっ! 一緒に帰りましょー!」

 私のその声に、ぴくりと春也先輩が動きを止め、心底嫌そうに顔を上げて私の目を見つめる。
 その瞳に宿るのは、出会ってから一度も変わらない、拒絶を目に見える形に仕立て上げたような嫌悪感丸出しの感情だった。

「……またお前かよ。しつこいな。お前何なの、わざわざ俺なんかとじゃなくて仲良い奴らと帰れよ……」

「私は春也先輩と一緒に帰りたいんですっ! 相合傘しましょうよー! だって春也先輩、雨の日絶対傘差さないじゃないですか。風邪ひいちゃいますよー?」

 そう。春也先輩には変わった癖がある。
 彼は、雨の日に傘を差さない。それがどんな土砂降りであろうと、平然と雨に濡れて帰路に就いてしまう。
 先輩が傘を差さない理由はわからない。聞いても教えてくれなかった。
 だけど、その姿はまるで春也先輩が何か自分に対する罰を受け入れているように見えてどこか悲しくなって、同時に恵みの雨を全身に浴びる春也先輩が草花のように美しく見えてきゅんとして、不思議な気分になった。
 そんな春也先輩の姿を見てしまうと、私は先輩を放っておけないし一緒に傘を差して帰りたくなる。
 例えそのせいで春也先輩に鬱陶しがられたとしても、私は全然平気だ。
 春也先輩は深く大きな溜息を吐き出すと、私とは全然目を合わせず教室を出て行こうとする。
 私はにこにこしながら、春也先輩の後を追いかけた。これはもう、私の日常になってしまっている。

「……ついてくんなよ」

「だって、先輩と一緒に居る時間が少しでも欲しいんです!」

「それ何回も聞いてる。耳にタコができるくらい。頼むから静かにしてくれ……お前と居ると周りの視線が鬱陶しいんだよ。それも俺に非があるみたいな空気でさ」

「? 春也先輩に非なんてあるわけないじゃないですか! 先輩は素敵な人ですよ! 大好きです!」

「……ばっかじゃないの」

「う。確かに成績はいまいちですけど……」

「……そういうことじゃない」

 足早にさっさと帰ろうとする先輩についていき、昇降口で撒かれそうになっても先輩に抱きつかんばかりの勢いで駆け寄り、結局春也先輩と帰り道を一緒に歩く。
 私は折り畳み傘を差したけど、先輩は今日も傘を差さないまま。理由はやっぱり、今日もわからない。
 無理矢理並んで歩くと、嫌でも私たちの身長差が浮き彫りになる。身長差と言うより、逆身長差。
 私は185cmという女子にしてはあまりにも高すぎる身長だけど、春也先輩は153cmという男子にしては少し低い身長だ。
 そのことを私は気にしたことはなかったけど、ふと私達の身長差が32cmということを思い出す。
 32……サニー。晴れ。
 そこまである意味ちっぽけなことを考えた頃、私の視界に雨に打たれるアジサイの花が映る。
 滴る雨粒に覆われ、アジサイは美しく咲いていて、懸命にその存在を主張していて。
 気がついた時には、私の声帯は勝手に言葉を紡いでいた。

「春也先輩。私、自分のこと結構好きなんです」

「……ナルシスト発言? 真面目に引くんだけど」

「えー、そういうんじゃないですよお! ……んん? 捉え方を変えればそうなの、かも?」

「……テキトーすぎ」

 呆れたように、春也先輩がまた溜息をつく。
 その隙に私は春也先輩に傘を押し付け、くるりとその場で踊るように回って、雨に思いっ切り打たれながら笑う。
 春也先輩は、私の傘を手にしたまま面食らったような顔をしている。

「……何してんの」

「雨に打たれてます!」

「見ればわかるよ。理由を、聞いてる」

「春也先輩の気持ちを、知りたかったんです!」

 私は雨に打たれたまま、春也先輩に笑いかける。
 雨で徐々にずぶ濡れになっていく感覚は不思議と嫌いじゃなかった。

「春也先輩。私、背が高いじゃないですか」

「ムカつくほどにね」

「でも、私はそんな自分が嫌いじゃないんです。コンプレックスどころか、長所なんじゃないかなって」

 雲で覆われ隠れた空を仰ぎ、手を伸ばし、もっともっとと雨を求める。

「だって、大きくのびのび育った向日葵とか見ると、なんかワクワクするじゃないですか! 私、向日葵になりたいんです!」

「……頭おかしくなった? 元から?」

「頭は悪いですよー! こないだの小テストなんて悲惨でしたし!」

「……明るく言うことじゃないだろ、それ」

 眉を顰める春也先輩。
 でも、私は変わらず雨を浴びながら、冷たい水が心地よくてまた笑う。

「私の名前って、陽菜だから。太陽みたいな名前だから。向日葵って雨が苦手で、太陽の光を浴びた方がすくすく育つんですって! だから私、向日葵みたいにどんな時も青空の下で笑って、自分をすくすく育てたいんです! それでこの身長になれたと思ったら、嬉しいことしかないですよ!」

「……今、雨浴びてるじゃん」

「はいっ! でも私、別に向日葵そのものじゃありませんから! 雨でも育つから、もう無敵です! 雨に打たれる春也先輩とも一緒に居られますし!」

「バカ」

「はい、バカです!」

 私の言葉に、春也先輩は頭が痛そうに表情を歪める。

「しかもしかも、向日葵の花言葉って『私は貴方だけを見つめる』ですよ! 私、春也先輩だけ見つめてるからピッタリじゃないですか!」

 雨空の下でくるりと一回転してから、少し屈んで、私よりずっと背の低い春也先輩の両手を握る。
 春也先輩に傘を押し付けてるわけだから私は傘の柄の部分まで握ったけど、それで良いと思えた。むしろ、それが良かった。

「私、春也先輩はアジサイみたいだなって思うんです」

「……は?」

「だって春也先輩綺麗だし、いつも雨に打たれてるし! 私、思うんです。春也先輩が雨の日に傘を差さないのって、自分に自分で水をあげてるからじゃないのかなーって」

 私の解釈に、春也先輩がぽかんとする。そういう珍しい表情も、素敵だと思えた。

「私、春也先輩の太陽になりたいです。春也先輩の向日葵になりたいです。雨ばかりだと花にも良くないので、先輩をこれからも照らしていけたらって思います! だって私、春也先輩のこと大好きですから!」

 そう言うと、そう私が笑うと。
 春也先輩は、ぽかんとと言うより、呆然とした顔をした。
 ほぼ初めて見る表情。そんな表情も、先輩は綺麗だった。





 ずっと俺は自分が、嫌いだった。
 自分に陽の光を浴びる権利も、雨を避ける権利も無いと思っていた。
 雨をめいっぱい浴びるのは、自分なりの償いのつもりだった。恵まれるつもりなんてなかった。神様か何かが俺に与える罰を、受け入れたいと思った。それだけだった。
 だって俺は、望まれない子どもだったから。
 父と母にはそれぞれ、お互いのほかに特別な存在が居た。
 だけど母が俺を身ごもって、世間体の為に結婚することになってしまったのだと、家に滅多に帰って来ない父の代わりに酔った母親が笑いながら教えてくれた。
 両親からすれば、俺は当然邪魔者だろう。自分たちの本当の恋路を閉ざした原因なのだから。
 俺の身長が年齢の割に低いのは、幼少期の栄養不足による発育不良のせいだ。
 ろくに栄養を与えられなかったということは、俺は育つことを望まれていなかった、生きることを望まれていなかった。
 成長して自我が育つにつれて、俺は思うようになった。
 俺は、生まれてきちゃいけない存在なのだと。生まれてきたことそのものが、俺の罪なのだと。
 それを自覚してから、俺は雨の日に傘を差さなくなった。
 自分に対する罰のつもりだった。雨にこの罪を洗い流してほしかった。
 だけど、本当は、きっと。
 花が水を求めるように、俺は生きる為の糧を注いでほしかったんじゃないだろうか。
 この女は、朝霧陽菜は出会って以来いつも俺の思考も決意も何もかも乱す。
 満たされちゃいけない俺を満たそうとするこの女が、俺の知らない陽の光のようなものを注ごうとするこの女が。
 ムカついて、鬱陶しくて、迷惑で。
 ――でも、俺と違ってすくすく育ったこいつが分け与えるように愛を俺に注ぎ続けたことが、無条件で俺の隣で生を謳歌するこいつが。
 俺には少し眩しくて、無理やり俺を生かそうとしてくるのもまたムカついて――でも、たまにそんな時間が落ち着く時もあるのが、ますます腹立たしかった。





「……朝霧」

「はいっ! なんですか、春也先輩!」

 春也先輩に名前を呼ばれて、私はうきうきと返事をした。それはもう尻尾を振る勢いで。

「……アジサイの花言葉って、何? お前、知ってる?」

 アジサイの、花言葉。えっと、確か。

「知ってますよー! 色によって違ってた気もしますけど、『移り気』とかだった気がします!」

「……それ、あんまり良い花言葉じゃなくない?」

「え? 何でですか?」

「は?」

 私は先輩の片手に手を添え、ぱちんと折り畳み傘を開く。
 傘がばっと開いたタイミングで、私は言った。

「移り気って、色々変わっていくことも意味するじゃないですか! それは前向きな変化かもしれないし、その果てに希望みたいなものが待ってたら、わくわくしちゃいますよ!」

 そう、例えば雨の後の虹のように。
 色々移り変わった先でハッピーエンドが待っているのなら、何も怖くない。
 そして私は、春也先輩をハッピーエンドに連れて行きたい。だって、大好きだから。

「……お前ってほんと、バカ」

 今日何度目かわからない溜息を吐かれ、私は逆に笑顔を返す。
 それから折り畳み傘を広げ、春也先輩に差し出した。

「せーんぱいっ。ほら、相合傘して帰りましょ! 先輩に風邪引いてほしくないですし!」

 私の言葉に、春也先輩はまた溜息を吐き。
 だけど、いつもと違って肩を私に寄せ、傘の中に収まってくれて。

「……えへへ、春也先輩、だーいすきですっ!」

「うざい」

「じゃあ、うざくなくなるよう頑張りますね!」

「既に改善の兆しが見えない」

 そうして私と春也先輩は初めて相合傘をして歩き出す。
 一歩縮まった距離もまた移り気の一環だと思えば、春也先輩への大好きが溢れそうだった。
 もうちょっと、雨が降っていて欲しいと思った。先輩と、くっついていたいから。

「っ、おい朝霧!! 傘の傾きおかしい!! 普通に傘から頭とか肩にどさって雨零れ落ちてくるんだけど!?」

「ぎゃあ先輩! すみません! リーチの差を考慮してませんでした!! えーっと……あれ、この身長差だと、どういう持ち方すれば丁度よく雨防げるんだろ……?」

「……もう二度と、朝霧と相合傘なんてしない」

「ええーっ!!」

 前言撤回。
 雨、早く止んで欲しいな。
 欲を言えば、その後には綺麗な虹が待っていてほしい。
 雨も晴れも、どんな天気の美しさも春也先輩と全身で浴びて堪能して、幸せになりたい。
 一緒に愛をすくすく育てたいから。
 こんな何気ない日々の中で、私は今日も春也先輩に愛を伝えていこう。
 私は春也先輩が好き。私は私が好き。自分が嫌いだったら、こんな風に春也先輩にアタックなんてできていない。だって春也先輩の幸せを一番に願ってるから。
 どうせ濡れるなら、と私は傘を無意味に差したまま春也先輩の手を引いて雨の中走り出す。
 冷たい水滴が心地いい。春也先輩もいつも、たまにこういうことを思っていたのかな。
 後ろから春也先輩の文句の声が聞こえたけれど、手を振りほどかれなかったのが、嬉しくて嬉しくて仕方なかった。
 明日はお互い風邪を引いてしまうかもしれないけど、今くらいは天の恵みに幸せをもらおう。
 私は春也先輩に上手く傘は差せなかったけど。
 それ以上に、春也先輩を寒さから守れるように、繋いだ手に力を込める。
 温かいお互いの体温だけ雨で冷えた世界から切り離されているようで。
 春也先輩を照らして温めて、私は生きていきたい。
 きっとどんな天気でも幸せになってしまうだろうから、明日の天気すらも楽しみで。
 愛しい空に、ありがとうと叫びたくなったけど、その前に春也先輩に『大好き』と言ったら、春也先輩にはふい、と顔を逸らされて。
 少しずつ弱まる雨に、晴れが近付く気配を感じて、私は私たちの32cmの、晴れを意味する身長差が愛しくなる。
 移り変わる世界に、今日もたっぷりの感謝と愛を。隣に居てくれる春也先輩には、それ以上のラブを。
 梅雨の時期だと言うのに、先輩に恋する私の心は今日も、晴れ晴れと澄み渡るように明るいまんまだった。



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